第54話

 「君たち!怪異と戦っている生徒はまだ残ってるね!!」


 「1人残っています。」


 「そうか、君たちも早く下山したまえ!」


 頭部がピカピカの剃髪している半袖の討滅士が去るのを見送りながら、生徒たちが集まっている場所を目指して降りていく。


 「あの人すごい人だったね。私もあれくらい強かったらよかったのに……。」


 「修行をいっぱい頑張ったんだろ。それにあの人、30歳くらいだろ?俺たちも真面目に修行すればあれくらい強くなれるさ。」


 どうやら妖狐の式神をボロボロにされたのは牧田に取って思いの外に精神的に来ている様だ。


 そして軽く走りながら移動していた結果、ようやく同級生それも同じクラスの生徒たちの一団が視界に入る。


 「俺は先生たちのところに向かうから、牧田はクラスメイトたちのところに行きなよ。友達も心配してるだろ?」


 「うん、そうする。ありがとう、上代くん。」


 牧田がクラスメイトたちの元へと向かうなか、俺は教師たちが集まっている場所に向かう。


 「先生、いいですか?」


 「ん?上代か!上はどうなった!!」


 「討滅士の人とすれ違ったので多分大丈夫です。」


 「そ、そうか……。」


 集まっていた教師たちは安堵していると誰でも分かるくらいに安堵している様だった。


 でも、確実に時田が無事だという保証はないし、あの場所には時田以外にも1人教師も居る肩から、俺としては教師の方が心配だ。


 それから幾つかの質問を教師たちにされて答えていると、山頂付近から感じていた討滅士の生体エネルギーが収まっている事から、ようやく女の怪異のせいで起こった騒動は終わったと思われる。


 そうして10分経ったくらいだろうか。時田、教師、討滅士の3人が下山して来た。


 時田が無傷な事から小鬼の式神が女の怪異が倒される最後まで時田を守って戦っていたのだろう。


 そして、下山した時田の表情から怒られた様だが、たぶん討滅士の人に褒められたのだろうか、満足そうな表情をしている。


 何があったのかは分からないが、これで同級生全員で帰ることは出来る様だ。


 戻って来た時田を出迎える様に多くの同級生たちが時田に対してお礼やどんな怪異だったのかなどとヒーローを迎え入れるかの様な状態になるなか、時田は教師たちの元に呼ばれて向かった。


 そして、俺はクラスメイトたちの集まりへと向かう途中で時田とすれ違った瞬間に時田に絡まれるかと思ったが、時田は鼻で笑うだけで絡んで来ない事に面倒がなかったと安堵する。


 クラスメイトが集まる場所に戻り、そこから班行動をするので俺が所属する班が集まる場所を探すと、すぐに見つかった。


 「あっ、上代くん!先生たちに説明終わったの?」


 「終わったよ。今は時田が話しているんじゃないか?」


 「そうなんだ。上代くんも無事でよかったよ。」


 「俺は何もしてないからな。あの怪異も式神をどうにかするのに集中していて、野次馬に残っていた生徒を狙わなかったし。それにしても時田が俺のことをどう言うのか問題だよなぁ。」


 「ん?それはどういう事かな?上代くん。」


 クラスメイトで同じ班の男子生徒と話していると、同じく同じ班で友達の女子生徒と話していた牧田が聞いて来る。


 「野次馬してた生徒と牧田に残った先生の方に怪異が向かって来た時のために待機していたからな。それだと何もしてない様に見えるだろ?だから、時田はその事を大袈裟に言って何もしなかった事を大々的に言うと思うんだよな。」


 そして俺が時田が言うのではないかと思われる事を伝えると、同じ班だけでなく周りのクラスメイトたちも「あーあり得る」と言う様な表情をしていた。


 それくらい俺と時田の仲が悪いことは有名だし、1週間に一度は必ずと言って良いくらい時田が俺に絡むのはほとんどの同級生は知っているだろうからだ。

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