第52話
あー、あれは惜しかったな。時田の小鬼の式神と牧田の妖狐の式神が連携する事が出来ていれば、あれで妖狐の式神が致命打を女の怪異に与えられただろうに。
まあ、まだ1回失敗しただけだからな。何度か繰り返せば式神たちを指揮しなくても勝てそうだな。
時田と牧田の式神だけでも倒せそうだし、俺は周りの警戒と避難する事だけを考えていれば良いか。
「いけ!そこよ!!」
「小鬼!!早く倒せぇえ!!!」
それにしても時田も牧田も具体的な指示を出さないで応援や怒鳴るだけだもんな。倒せる能力が式神たちにあっても倒せない可能性も考えておくべきか。
それに牧田も式神を出したから女の怪異に自身を見ることが出来ることをバレているだろうからな。狙われているだろうけど、本人はその事に気づいているのか、そこは疑問だな。
なりふり構わなくなったら、人間でも不条理な行動を取るんだから、あの女の怪異も自身が消滅するのも構わずに時田や牧田を攻撃する可能性もあるだろうから。
もう既に女の怪異と式神たちの周りはテーブルや椅子が破壊されていたり、何処かに吹き飛ばされていたりしており、何もなくなった広場で激しく女の怪異と式神たちが戦闘を行なっている。
そんな戦闘が続いている間に半分以上の生徒たちが避難する事が出来ているが、まだ逃げずにどうなるのか気になる見えない生徒たちが野次馬としているせいで、避難組に付いて行ってる教師以外にもまだこの場に残っている教師もいる。
必死に早く避難する様に言っているが、野次馬している生徒たちは時田と牧田が勝つと思っているのか、動こうとしていない。
それでも避難しないことを怒られてこの場から離れる生徒も居ることから効果はあるのだろう。
俺は女の怪異がこちらに向かって来た時の為にデバイスを操作して雷珠を召喚する準備を終わらせていると、上空の方から視線を感じ取った。
なんだと気になって上空を見上げそうになるのを我慢して警戒する。
ここは高尾山の中でも山頂付近な為、これより上から視線を感じるのは可笑しいからだ。
女の怪異の様な人に危害を加えて来そうな雰囲気を視線からは感じないが、それは今のところは感じないだけだ。
この視線を送って来ている持ち主が敵意を持って行動する可能性も考えて動かないといけない。
厄介ごとが増えたと思いながら出来れば周りの野次馬をしている生徒たちには早く避難して欲しいと思っていると、女の怪異の右腕に噛み付いていた妖狐の式神が地面に叩き付けられた隣から悲鳴に似た声で妖狐の式神の名前を呼ぶ牧田の声が聞こえてきた。
「しっかりして!!キツネちゃん!!!早く!早くそこから逃げてぇ!!!」
牧田が叫ぶが妖狐の式神は打ちどころが悪かったのかすぐに動き出す気配はなく、まだ倒されてはいないが危険だろう。
時田の小鬼の式神が牧田の妖狐の式神を気にしている様子はない。このままだと女の怪異と小鬼の式神との戦いに巻き込まれてやられる可能性が高い。
「牧田。デバイスに式神を戻せ。そうすれば巻き込まれたりしない。」
「そ、そっか。分かったよ、すぐにキツネちゃんを戻す!!」
デバイスを操作して妖狐の式神を戻そうとする牧田が、妖狐の式神をデバイスに戻すまでの間に女の怪異や時田の小鬼の式神に倒されない様に俺の方でも注意する。
だが、牧田の妖狐の式神がデバイスに戻るまでの間、女の怪異は妖狐の式神を狙わず、また女の怪異と小鬼の式神の戦いにも巻き込まれる事はなかった。
そして俺と牧田のやり取りを聞いていた何人かの生徒たちが、牧田の式神がやられた事を知り、残りは時田の式神しか戦っていないと分かると、ようやく自分たちは危険な場所に居ることを理解したのか教師の言う事を聞き始める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます