第51話
そうして時田が叫んだことで男子生徒に張り付いていた女の怪異は時田の方を不自然な動きで首を回して見つめた。
「見えテる?見エてル!!私の事ヲ見つケた!!」
しがみ付いて張り付いていた男子生徒から離れると、女の怪異は身体をカクカクと動かしながら時田の方へと向かって行く。
「うわ!来んじゃねぇ!!!」
自身に向かって来る女の怪異に時田は叫ぶとデバイスを取り出しながら逃げ始めた。
そんな時田の姿を見て、周りの生徒たちも怪異が、それも人に危害を加える怪異が現れたんだとパニックになり始める。
周りから「きゃああ!!!」と言う悲鳴や「何処だ!!何処に居るんだよー!!!」などと怒号が聞こえるなか、この周りに居る教師である大人たちも突然の怪異に怯えながらも生徒たちを落ち着かせるように言っていた。
そして、女の怪異は時田を追い掛ける為に周りの生徒を押し除けながら進む為、押された生徒が転倒したりして被害が出始めるが、そのお陰で怪異を見る事が出来ない者たちでも何処に怪異が居るのか分かり、時田の周りから悲鳴を上げて生徒たちは離れて行く。
「お前ら!!」
時田を囮にするかの様に離れて行く生徒たちを見て時田が叫ぶなか、女の怪異はどんどんと時田との距離を詰める。
「ちっ、来い!!小鬼!!!」
時田はデバイスの操作を終えて1メートル40センチサイズの小鬼の式神を召喚した。
その小鬼の指揮の姿を見た俺は、時田の奴も鍛えてはいるんだなと思っていると、時田に向かって接近して来た女の怪異に小鬼の式神は向かって行く。
「ねぇ、上代くん。時田の小鬼で勝てると思う?」
「分からない。強さ的には同じくらいだと思うけど、同じくらいならどう戦うかで決まるだろうから。」
他の生徒たちと共に避難している牧田に話しかけられて答えていると、周りの生徒たちから時田に加勢しに行かないのかと言われ始める。
それを聞いて余計なことをと思っていると、隣の牧田が興奮した様な表情をして声を出す。
「そうだよ!!私たちが協力すれば、あの怪異にだって勝てるはずだよ!!上代くんも協力して!!一緒に戦おうよ!!!」
「いや、逃げられる状況なら逃げた方が良い。あの怪異の今の狙いは時田だ。今の内に戦えない人は逃げない駄目だ。それにここは有名な場所だから討滅士だってすぐに駆け付けてくれる。」
そう言った俺に対して周りの特に時田の取り巻きは「臆病者!!」「何で時田さんを助けないんだ!!」「お前だって見えてるだろ!!!」「僕に討滅士になる力があれば!!あんな奴に負けないのに!!何でお前みたいな奴が持っているんだ!!」などと声を出して非難してくる。
俺を非難して来る生徒たちは時田と比較的親しい者や討滅士になりたいのになれない生徒が大半だ。
この状況は俺が雷珠を召喚すれば簡単に収まる状況だが、だからと言って雷珠を召喚しても構わない状況なのか分からない。
「もういい!!私だけでも行くからね!!!来て!キツネちゃん!!」
デバイスを操作した牧田が妖狐だろう式神を召喚する。
「キツネちゃん!あの怪異を倒して!!」
「コン!」
牧田が召喚した妖狐の式神は小鬼の式神と戦っている女の怪異へと向かって行く。
お互いを殴り合うかの様に戦っている小鬼の式神と女の怪異との戦いに、牧田の妖狐の式神が参戦した。
「キツネちゃん!やっちゃえー!!!」
「コーン!!!」
妖狐の式神が女の怪異に襲い掛かると、女の怪異の首を狙って噛み付き攻撃を行なった。
それに気付いた女の怪異が妖狐の式神を叩き落とそうとするが、時田の小鬼の式神が殴って来たせいで妖狐の式神の迎撃に失敗する。
だが、女の怪異は幸運に恵まれた。小鬼の式神が行なった攻撃が直撃したせいで吹き飛ばされたからだ。
そのお陰で妖狐の式神の噛み付きを回避する事が出来るのだった。
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