第49話
背後から感じる荒々しい生体エネルギーの放出に面倒くさい事が起こる予感を感じながら、俺は時田に絡まれない様に他の班員たちを追い越して先頭に立って山道を登る。
そんな俺の姿を見て班員たちは背後を確認すると、「ひぃっ!」などと鬼の形相をして睨み付ける時田の顔を見たのか悲鳴が聞こえた。
他の班員たちを俺と時田の間に壁として活用すれば、俺に向かって来ないだろうという企みは見事に成功する。
時田と牧田の言い争いの仲裁を無理矢理させられた罰だ、という気持ちもあったが、成功したら成功したでまた面倒な事になってしまった。
何故なら時田の鬼の形相を見てしまい悲鳴を上げた女子生徒の姿を見て、牧田がこちらを睨み付けながら生体エネルギーを撒き散らしている時田を認識したからだ。
睨み付けている時田が原因で友達が怯えていると認識した牧田は、時田ほど荒々しくないがその身に生体エネルギーを纏う様に放出を始める。
「アンタ、何なのよ!!いい加減にしなさいよ!!!」
「お前には関係ねぇだろ!!俺が用があるのは上代だよ!!そこ退けってんだよ!!」
両者共に怒鳴り声を上げながら叫びまくるせいで、静かな山の中では時田と牧田の声が響き渡る。
何で俺はこんな連中と一緒に居ないと行けないのだろうと、俺は遠くの方を眺めながら思っていると、先行していた教師の1人がこちらに向かって来ているのが見えた。
「お前たち!!何してるんだ!!!」
こちらまでやって来た教師(隣のクラスの担任の先生)は時田と牧田の間に入り仲裁する。
これでようやくこの煩わしい騒ぎが終わると安堵していると、時田が俺のせいだと教師に告げた。
「そうなのか?上代。」
「俺は何もしてませんよ。」
「そうです!上代くんは何もしていません!!時田が私に絡んで来たんです!!」
牧田の反論もあり、俺以外にも簡単な聞き取りを行なう事で、時田の言い掛かりだとすぐに分かるが、時田は目を血走らせて、俺の事を睨み付けていた。
その姿を見て、何故コイツはここまで俺に絡んで敵視してくるのか理解出来ない。
ここまで頭の可笑しい人間は前世の記憶の中にもない。もしかしたら、時田は瘴気を身体に取り込んでいるせいでここまで可笑しな人間になっているのではないかと疑ってしまう。
流石に瘴気が体内ではなく、身体の表面近くにあるのなら分かるが、今の俺では体内の奥底に瘴気があるのなら気付かないだろうし、それにこれは時田の生来の性格の可能性もある為、俺は時田は人間ではなく可笑しな生き物なのではないかと思うのだった。
そうこうしている内に時田の説教をするからと、俺の班と時田の班(時田以外の班員)は先に進む様に言われて移動を開始する。
時田が居なくなると、時田と同じ班の班員たちは俺たちの班の班員たちに時田を止められずにごめんと誤って来た。
それを聞いて、その謝罪を俺の班の班員たちは受け入れるが、はっきり言って時田が時田の班の班員たちの話を聞いて止めるかというと止めないだろう。
だからこそ簡単に謝罪を受けても受け入れられる。そうして時田が居なくなった時田班の者たちも一緒に行動して山道を移動して行き、昼前には高尾山の頂上付近までたどり着くのだった。
山頂から見える景色を眺めながら過ごしていると、続々と他クラスの生徒たちが山頂付近の広場に集まり始め、教師たちが集合する様に呼びかけ始める。
それを聞いて、もうそろそろお昼時だから昼食の時間だろうかと思いながら、俺の班の班員同士で集まっている場所に移動した。
そして案の定、教師の1人が話し始めると、これから昼食を食べる時間にすると言う。
時間や食事を取る場所など指定して話していくが、最後に時田の名前は出さないが、時田の事だろうと分かる話をしてから昼食の時間になった。
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