第47話

 小学3年生の5月中旬、今日は学校の行事で3年生全クラスは高尾山に来ていた。


 電車移動で高尾山まで来たが、何事もなく無事に高尾山口駅にたどり着くと、ここからは班分けして高尾山の山道を登る事になる。


 俺の班には同じクラスの討滅師の才能がある女子生徒の牧田と言う女子生徒や同じクラスの男子2人と女子1人の合計5人で、これから高尾山を登り始める予定だ。


 ちなみに3年生のクラスでは、あの時田とクラスが離れており、これにはかなり鬱陶しかったので内心でかなり喜んだ。


 霊場の1つである高尾山では、高尾山全体に薄っすらと星体エネルギーが地面の下から放出されている様に感じる。


 それも星体エネルギーに瘴気が混じっていない事から、この山にいるだけでも身体に取って良い効果を発揮していそうだ。


 「(これだけの清浄な星体エネルギーなら人を襲う危険な怪異が生まれるのは少なそうだな。)」


 それでも山の中だから、人喰いを行なう様な怪異が潜んでいても可笑しくはないが、これだけ名所になっている観光地なら、そんな危険な怪異がいる可能性はかなり低いだろうが。


 「(これがお守りの代わりになってくれると良いけどな。)」


 手首に巻いた白い石玉の数珠を摩りながら昨日のことを思い出す。



 「ハジメ様、明日私は行けないのでこれをお持ちください。」


 「これは?」


 葉月に手渡されたのは真っ白な数珠だった。


 「それは異界の核を加工して製作した浄化石の数珠です。ハジメ様の生体エネルギーや霊力を注げば浄化の力と守護防壁が使えます。いざとなったら、守護防壁を使用して雷珠さんを召喚すれば良いでしょう。雷珠さんも明日はハジメ様の護衛を頑張ってください。」


 「おう!任せとけ!まあ、行く場所は高尾山だからな。それほど危険はないだろうぜ。」


 この手のひらにある数珠がそんな効果のある物なのだと見ながら、実際に使った場合を確かめたい。


 「これって回数制限があったりしないよね?」


 「ありませんよ。何度でも使用可能です。その守護浄化の数珠は。」


 「それなら今から少し使って確かめてみるよ。」


 「そうしてください。初めて実戦で使用するよりは良いですからね。」


 手首に通した守護浄化の数珠に向かってまずは生体エネルギーを送り、浄化の力を確かめる。


 すると、守護浄化の数珠の数珠から浄化の光が放たれると、この浄化の光は操作可能な様だ。


 次に守護浄化の数珠の守護防壁を使用すると、俺の前方に浄化の力も含まれた防壁が現れる。


 色々と試した結果、この守護防壁は俺の前方だけじゃなくても前後左右上下の何処にでも作り出す事が出来るみたいだ。


 他にも生体エネルギーだけじゃなく、霊力でもこの守護浄化の数珠に送って確かめていくと、どうやら生体エネルギーよりも守護防壁の防御力が高いが、生体エネルギーの方が浄化の力は強いと分かった。


 「これありがとう、葉月。」


 「いえ、ハジメ様の安全には変えられませんからね。明日は気を付けてくださいよ。あそこは天狗も出るんですから。」


 「そこまでヤバい天狗は居ないと思うぞ、葉月。」


 「それでもですよ、雷珠さん。注意しておいて損はないんですからね。」


 「俺も気を付けるよ。自然の中だと怪異は多いしね。」



 昨日のことを思い出しながら手首の守護浄化の数珠を触っていると、先頭組の班が高尾山の登山口へと俺が昨日のことを思い出している間に登り始めていた。


 俺の行動する班の2つ前では別クラスの時田の班が居る上に、時田の奴はチラチラとこちらの班の同じく討滅師の才能がある牧田を見ている。


 去年は俺と時田と牧田の3人の討滅師の才能がある生徒が集まっていたが、今年は時田だけは別クラスになり、時田は牧田に好意がある様なそぶりをしていたことを思い出す。


 これが何か今回の登山で影響がなければと思いながら、時田の班が登山を開始した事で、次の次が俺たちの班が登山口から高尾山を登る番になる。

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