第45話
神社の境内に続く階段をたくさんの人が居るので、迷わない様に左右から雷珠と葉月に手を繋がれながら、俺は階段を登って行く。
よくこんな朝早くから起きて初詣に来ている人が居るなと思っていると、ゆっくりだが混雑している周りが動き出す。
そして手順通りに初詣を行なって行き、手や口を杓子を使って洗い、賽銭箱の前まで来ると賽銭や二礼二拍一礼を行なってようやく長い人集りの列から離れることが出来た。
そうしてお守りの購入やおみくじを行なって車まで戻ると、これで初詣は終わって家に帰る。
「このお守りってどこまで効果あるの?」
このお守りは俺から見ても感じ取れる何かがあり、効果はあるのだろうが、その効果がどれほどのものなのかは分からない。
だからこそ、家族全員で購入したお守りを見ながら、俺は雷珠と葉月にお守りの効果がどれだけあるのかを聞いた。
「オレよりも葉月の方が詳しいだろ?葉月が答えなよ。」
「そうですね、分かりました。高いと言う訳ではないですがありますよ。効果時間を長くしている様なので、何もなければ最低でも半年は持ちます。」
「半年か。一年は持たないんだな。」
手の中のお守りを見ながら、そのお守りの効果がある時間は半年しかないのかと思ってしまうが、よくよく考えればこんな小さな大量に生産されてある物で最低半年も持つのなら凄いことなのかも知れない。
それからも車の中では、おみくじはどれほど意味があるのかや、他にも売られていた物はどうなのかなどの話をしている間に、車は自宅に到着する。
家に帰れば、玄関でクロノワールがお出迎えをしてくれた。
「にゃーん!」
「ただいま、クロ。手を洗わないと行けないから抱っこは少し待っててくれ。」
「にゃん!」
家族全員が手洗いうがいを済ませると、朝食のお節を家族(雷珠と葉月も含めて)みんなで食べていく。
ところどころでそのお節料理の説明をお品書きで確認しながら食べていると、クロノワールが何かを追い掛け回していた。
「クロ、どうしたんだ?」
「にゃー!」
クロノワールの視線の先には光の玉が浮遊していた。
あれはなんだと思っていると、それを知っていた雷珠と葉月が声を合わせて言う。
「おっ、年神様か!」「年神様ですね。」
「あれが神様なの?」
感じ取れる力は弱く、簡単に倒せてしまえそうなほどの存在感しかない光の玉を見ていると、雷珠と葉月が説明してくれる。
「あれは分霊の分霊の分霊の分霊くらいの力しかないからそう見えるんだよ、ご主人。」
「年神様を迎えられる様にしていれば、日本の場合は大抵の家に来てくれますからね。そうするとどうしても全ての家々に回れないので、ああやって分霊を各家に送っているのですよ。」
「へぇー、そうなんだ。」
また1つ賢くなったと思っていると、クロノワールはお尻をフリフリして年神様の分霊を狙っていた。
流石に罰当たりだからとクロノワールを抱き上げて連れて来ると、年神様の分霊は俺の周りを一周回ってから離れていく。
俺の周りを回って何がしたかったのだろうかと思っていると、葉月が教えてくれた。
「ハジメ様、あれはちょっとした小さな加護を授けてくれたんですよ。効力は少ないですし、それほど強い守りではないので一年持つか持たないかくらいですけどね。」
「そうなんだ。」
年神様が姉さんから順番にお父さん、お母さんの周りを一周回るのを見て、早速さっき何が起きたのかを俺は年神様を見れないみんなに伝える。
そんな事があったのかと、お父さんとお母さんは納得し、姉さんはどこに年神様が居るのだろうとキョロキョロと辺りを見回していた。
それから少しすると年神様はクルクルと家の中を移動してからシュンッと音も立てずに何処かへと消えてしまうのだった。
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