第44話

 バチンッと良い音が室内に響くと、葉月は飛び起きて目を覚ます。


 「な、なんですか今の!!?雷珠さんの仕業ですね!!」


 「起きないのが悪いんだよ。ご主人を早く離してやれ。苦しそうだぞ。」


 腕の中に収められた俺のことを雷珠に言われて認識したのか、葉月は抱き締めていた力を緩めて、俺は葉月の抱き締めから解放された。


 「ハジメ様、ごめんなさい。大丈夫ですか?」


 「こほッこほッ……うん、大丈夫。」


 葉月が段々と力を込めて抱き締められた段階で、俺は生体エネルギーを使用した身体能力の強化を行なっていたお陰で、葉月が雷珠にお尻を叩かれて飛び起きた時にも怪我をする事はなかった。


 「葉月も起きたからな。これで初日の出を見に行けるな!ほら、着替えるぞ。」


 雷珠に急かされる様に、俺は早起きして事前に雷珠が準備していた衣服に着替えていく。


 用意された衣服に着替え終わる頃にはパジャマを着ていた葉月はいつもの巫女服の様な衣装に着替えていた。


 「2人のそれって便利だよね。俺も服を生体エネルギーで構築出来れば良いのにな。」


 着ていたパジャマを片付けている葉月を見ながらそう言うと、生体エネルギーで衣服や戦闘装束を構築する事が可能な雷珠と葉月が顔を合わせてから苦笑いする。


 「便利は便利ですがそこまで重要な技術ではないですよ。取得難易度も高いですし。」


 「そうだぞ、ご主人。オレもこの技術を母様に教えられたのは、戦闘中に衣服が破損して裸にならない様にする為だしな!」


 そう言われると、女性が裸を見られない様にする為の技術な様に聞こえてくる。他にも利点はあるそうだが、きちんとした衣服を着込む方が防寒にもなるので、構築した衣服よりも普通の衣服の方が良いそうだ。


 「それに生体エネルギーを消費して防寒対策をしているから寒くないだけですよ。」


 「そうだな。衣服としての性能は戦闘用の物ではない限り、衣服の性能は悪いからな。」


 質感や布地としては厚くても、裸の上に薄い衣を纏う程度の防寒能力しかないそうで、冬場は特に寒く、生体エネルギーの身体強化を行なわないと寒くていけないと言う。


 「着替える必要がなくて便利だけど、それ相応のデメリットもあるんだな。」


 防寒具を着ようと思ったが、雷珠や葉月と同じ様にしようと、俺も生体エネルギーを身体能力の強化に使用して防寒対策を取る。


 俺と雷珠と葉月の3人が出掛ける用意が終わる頃に、雷珠が使用して畳んでいた掛け布団の中からクロノワールが出て来た。


 「にゃー!」


 「クロ、おはよう。」


 軽快な足取りでやって来たクロノワールを抱き上げると、先ほどまで布団の中に入って寝ていたからか、クロノワールの身体はポカポカしていて温かい。


 「もうご主人の家族はみんな起きてるぞ。だからご主人も葉月も行くぞ。」


 「そうなの?なら、急がないとね。」


 「階段を降りる際には慌てたら危ないですよ、ハジメ様。」


 階段を降りてリビングに向かうと、そこには外に出る準備を終えている両親と姉の姿があった。


 「おはよう。」


 朝の挨拶をみんなにすれば挨拶を返されてから早速初詣に出発する事になる。


 「じゃあクロ、お留守番頼んだよ。」


 「にゃん!!」


 流石にクロノワールは初詣に連れて行けないからと、クロノワールには家でお留守番を任せてハジメたちは玄関を出ると、玄関の外で初日の出を見ることが出来た。


 初日の出を眺めてから家族(雷珠と葉月も)全員で車に乗った。


 そうして車で神社に向かう。そんな車の外を見ていると正月だからか、着物を着ている人も見受けられる。


 30分ほど車で移動して、車は近くの神社へとたどり着いた。


 「みんな降りるぞ。」


 駐車場に車が到着すると、車からみんなで降りて行く。


 「結構、人が居るね。」


 周りをキョロキョロと見回すと朝の早い時間帯なのにも関わらず、神社の周りには人が多く居た。

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