第39話

 噂話の怪異、顔のない男の騒動があってからしばらく経つが、顔のない男は再び俺の前に現れる事はなく12月の後半に入り、小学校は冬休みで休みになっているが、俺は忙しく過ごしていた。


 冬休みの序盤に全ての冬休みの宿題を終わらせたが、宿題が終わってからは毎日ずっと修行尽くめの毎日だった。


 「纏っている霊力にムラが出来ていますよ!そこです!!」


 「痛ッ!」


 常に一定以上の霊力を纏い続ける修行を行ないながら、纏っている霊力にムラが出来ると、そのムラがある霊力のところを丁度霊力を突破する程度の威力で葉月に竹刀でベシッと叩かれる。


 「ほら、またムラがあります!」


 「痛ッ!痛ッ!!」


 叩かれて痛みを感じると、また纏っている霊力にムラが出来てしまい、そこを葉月に叩かれてしまう。


 「ハジメ様、攻撃を受けても常に霊力を纏っていれば、相手からの追撃やこちらからの反撃でも役に立ちます。」


 「うん、分かってる。必須技術なんでしょ?」


 「ええ、これが出来ないのなら、怪異と戦って欲しくはないですからね。頑張ってください。ほら、またムラがあります!」


 「うっ!」


 俺がそんな修行を行なっている間に、雷珠とクロノワールが何をしているのかと言うと、雷珠が相手になって模擬戦を行なっていた。


 葉月に教わった術を使って巨大化したクロノワールが妖力を纏って、雷珠に攻撃を仕掛けるがクロノワールの攻撃は雷珠には当たらない。


 「そこ!」


 「うにゃ!?」


 攻撃の際に隙が出来ると、その隙を狙って雷珠がクロノワールへと攻撃を仕掛け、クロノワールにダメージがそれほどない威力で攻撃を当てる。


 「クロ助、また隙が出来てるぞ!」


 「うにゃん!!」


 攻撃を受けて隙が出来たタイミングで雷珠がクロノワールに攻撃を行なうが、クロノワールは雷珠の攻撃を妖力を命中する場所に集めて防ぐ。


 「防がれたか。」


 「にゃにゃん!!」


 雷珠からの攻撃を防いだクロノワールは、反撃に猫パンチを連打するが、それを雷珠は受け流した。


 雷珠とクロノワールが行なっている模擬戦が視界に入るなかで、また霊力が揺らいでムラが出来てしまい、俺は葉月に霊力が薄くなった場所を叩かれてしまう。


 「今日はここまでですね。午後は買い物に行くのですよね?」


 「うん。お母さんがケーキを買うから選んで良いんだって。クロは連れて行けないけど、葉月も一緒に行くよね?」


 「はい。ハジメ様の護衛と荷物持ちをしようと思います。」


 「雷珠たちにも模擬戦を終わる様に言わないとね。」


 俺はまだ模擬戦を行なっている雷珠とクロノワールに模擬戦を終わる様に言うと、模擬戦が終わった雷珠とクロノワールを連れて、全員で修行に使っている空間保存壺の中から外に出て行く。


 そうして外に出たら、お風呂場に直行して修行で汚れた身体を洗いに向かった。


 生体エネルギーで作られた衣服を脱ぎ捨てた雷珠と葉月の2人の裸体を見て、何度も一緒に入っているが慣れないなと思いながらシャワーを浴びて湯船に浸かる。


 「ちょっと狭いな。」


 「ハジメ様と同じくらいの大きさなんですけどね。」


 「大勢で入れる大きさの浴槽じゃないからな。」


 子供サイズに変わった雷珠と葉月の2人にピッタリと身体をくっ付けながら、俺たちは身体を温めていく。


 「にゃ〜。」


 「変な顔してるな。クロ助。」


 「気持ちが良いのでしょうね。」


 普通の猫なら水の中に入るのを嫌がるが、そこは怪異になったからなのか、それともクロノワールの性格なのかは分からないが、気持ち良さそうにクロノワールは頭を浴槽の縁に乗せていた。


 「雷珠、クロが沈まない様にだけ注意しておいて。」


 「おう、分かったぜ。」


 そうして3人と1匹で湯船に浸かって身体を温めると、俺たちはお風呂を上がって出掛けるまでの間、それぞれのんびりと過ごして行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る