第6話
結局生体エネルギーを自力で動かせる事はなかったが、俺はデバイスを操作して子鬼へと生体エネルギーを流して元気になって貰う。
「はぁはぁふぅーこれで良し!」
デバイスを確認すると子鬼の疲労状態は回復していた。生体エネルギーを流し込まれた事で回復したのだろう。
疲労から回復した子鬼を改めて召喚すると、子鬼に今更になって質問する。
「あのさ、名前はあるの?」
「あります。ですが、ご主人様が付けてください。名前は怪異の存在を変え縛る事が可能です。」
元々の名前はあるけど新しく付ける必要があるのか。名前を付けるセンスなんて俺にはないからな。
「元の名前を教えてくれる?」
「推奨しません。新しく名前を付けてください。」
子鬼は平坦な声で返答する。
「なんで教えてくれないの?」
「力を取り戻す可能性があるからです。力を取り戻した私が縛りを取り除く可能性があるからです。」
「そうなんだ。」
式神契約の設定の縛りを取り除いて来るからって事か。それなら元の名前を付けるのは危ないな。うーん、それとも設定を見直せば良いのか?設定を変えるのは止められたけど。
デバイス操作を行なって式神契約の設定を見直す。そうして設定を弄り、契約者や人間に攻撃禁止や物の破壊などを命令がない限り禁止し、更に契約者や周りの者たちを誘導しないなどは変更せず、その他の生体エネルギーの融通や食事などの項目を弄る。
「これで良いかな。重要な項目の設定を強化出来たし。じゃあ改めて契約更新!!」
子鬼との式神契約を更新する。デバイスから現れた契約陣が子鬼との契約を初めてした時と同じ様に子鬼の身体を契約陣が包んで行った。
そして再契約が終わると、今まで動かずに聞いた事を話すだけだった子鬼が動き出した。
「ようやく身体を動かせる様になったぜ。感謝するぜ。ご主人。」
「うん、それはよかった。それでこれからも俺の式神として居てくれるか?」
「ああ、条件があるがな。まだ本来の姿にもなれてねぇ。」
条件か、難しい条件じゃないと良いんだけど。それに本来の姿ってどんな姿なんだろう。
「それで条件ってなに?出来る事なら良いんだけど……。」
「難しくはねぇ。ご主人は才能があるからな。とにかく強くなれ!!それだけだ!あっ、飯と酒も頼むぞ。捕まって縛られてから飯も酒も食べて飲んでないからな!」
それなら出来そうだ。俺が討滅士になる事はほど決定事項の様なものだ。それなら強くならないと死んでしまう。だから、子鬼との条件も守れそうだ。
「強くなるのは大丈夫だ。あとご飯も良いけど、お酒は分からないかな。お母さんに聞いてみるよ。」
「おう、頼んだ。」
上代家では誰もお酒を飲む人が居ないから子鬼専用として買わないといけなくなるだろう。けど、それで仲間になってくれるのなら安い物なんだと思う。
「それで名前を聞いて良いか?その為に色々設定を変えたんだし。」
「ああ、オレの名前だな。オレの名前は
「うん、よろしくね。雷珠。」
それから俺は雷珠と交流していく。そして雷珠が式神になった経緯を聞いた。
鬼の異界で雷珠は生まれて育ち、鬼として強くなる為に修行をしていたそうだ。そして鬼の異界に討滅士が現れ、色々な鬼たちと契約を結び始める。
その契約の内容は子供たちの護衛兼必要な技術を教える役割だった。快く契約を結んだ鬼は少なかったらしく、雷珠も快く契約をした訳ではなかったと言っている。
そんな雷珠が契約する事になったのは雷珠がその討滅士に喧嘩を売り、その際に負けたら契約を受けると約束した結果、雷珠は負けてしまい、俺の式神になったそうだ。
「負けたからなんだ。」
「ああ、そいつは強かったよ。まああれ以上あの異界に居ても強くなれなかったから、これも良い機会だとは思ったけどな!」
式神になった方が契約者から生体エネルギーを送られる影響もあって強くなりやすいらしい。
怪異が強くなるには他者の生体エネルギーが必要な様で、その為、式神になりたいと願う低級の怪異もいるのだと言う。
「そう言えばあの野郎は何処に居るんだ?」
「あの野郎?誰の事だ?」
「居ただろ!黒猫の事だよ!オレを殴り飛ばしやがって!本来のオレなら簡単にねじ伏せられる怪異なのによ!!」
クロの事を言っているのか。でもクロはメスだから野郎ではない。それと聞き捨てならない事も雷珠言っていた。クロは怪異なのか?姉さんが子供の時に拾った子猫のはずなんだけど。
「クロの事か。でも、クロは怪異じゃないと思うぞ。クロは子猫の頃から飼われている飼い猫だぞ?」
「ん?気付いてないのか?アイツは猫から怪異に変化したんだろうよ。ご主人が生体エネルギーを渡したから。」
「生体エネルギーを?」
まさかクロが怪異になった原因は俺なのか?覚えはないけど。
「元々才能があったんだろ。怪異になる才能が。それが開花したのはご主人から生体エネルギーを貰ったからだろ。アイツはご主人の身体にくっ付いてる事が多くなかったか?」
「確かにくっ付いてる事が多いな。」
お母さんたちも言っていたけど、俺が赤ちゃんの時からいつも側にはクロが居たらしい。そうやってくっ付いている時に生体エネルギーをクロに渡していたのだろうか?
「それも討滅士の才能が影響したのかもな。可能性としては自身の味方になる存在を強化する為にか?」
「そう言う事もあるのか?」
討滅士の事は知らない為、そう言う事は普通の事なのかどうかも分からない。
「分からん。」
「分からないのかよ。じゃあ、なんでクロは雷珠を狙ったのかは分かるか?」
あれほど執拗にクロが狙っていた原因が分からない。それを雷珠なら分かるかも知れない。
「それは縄張りに式神だろうが怪異が入って来たからだろ。アイツがこの家のヌシだからな。この家に怪異の類いは寄り付かない。番犬ならぬ番猫だな!」
「クロの奴、そんな事をしてたんだ。そうだ!クロとも式神契約は出来るの?」
クロが外に脱走した時に野良の怪異だと勘違いされて討伐されたり、誰かの式神にされても困る。
「それりゃ出来るさ。でも、式神にしたら登録しないといけないぞ。」
「そうなの?雷珠は登録されてるのか?」
「もちろんされているさ。手続きをしたのはご主人の親御さんだろうけどな。まあ、式神にするのならまずは親御さんに話してからにするんだな。」
「それもそうだな。」
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