第5話
瞑想の体勢に入って身体に意識を向けるが、やはり体内の生体エネルギーを見つける事は出来ない。
生体エネルギーが身体から抜け出る感覚を思い出せば、生体エネルギーを見つけられるのかも知れないが、小鬼を召喚すれば膝の上で横なっているクロがまた襲いに向かう気がする。
かと言ってクロを部屋の外に出そうとしてもそれは難しい。それはクロの身体能力が高いからだ。
そうこうしている内に時間は過ぎて行き、ドタドタと音が部屋の外からして来た。
「ハジメ!あんた本当に討滅師の才能があったの!!お母さんが言ってたわよ!!」
部屋のドアを勢いよく開けて入って来たのは姉の
大きな声を出して入って来たせいで、膝の上でゴロゴロと喉を鳴らしていたクロは驚いて廊下へと走り抜けて何処かへと行ってしまう。
「うん、そうだよ、姉さん。検査して才能があったって。」
「それなら式神を貰ったんでしょ!見せてよ!!」
「いいよ、でもドア閉めて。クロが式神を狙ってるんだ。」
そう言うとすぐに姉さんはドアをすぐに閉めると、早く召喚しろと俺の側に寄ってくる。
俺はデバイスを操作して改めて小鬼を召喚する。その時に生体エネルギーを見つける為に身体の中を意識して。
そうして身体から生体エネルギーが抜けてデバイスに流れ込み、デバイスから緑色の生体エネルギーの靄が放出されて一ヶ所に集まると、小鬼が召喚される。
「ねぇ、どこに居るの?」
「ここだよ。でもさ、姉さんは見えないよね?」
「うるさいわね!見れるかも知れないじゃない!!」
口答えするなと、姉さんに頭をペシリと叩かれる。
言う通りに召喚したのにと思いながらも、俺はさっきの身体から生体エネルギーが抜け出た感覚を思い出して瞑想を開始した。
「ハジメ?怒っちゃった?ごめんって。」
「ちょっと揺らさないで。瞑想中なんだから!」
頭を叩かれてからすぐに瞑想を始めた為、その事に怒ったと勘違いた姉さんに肩を揺すられてしまう。
生体エネルギーが抜かれてすぐだったから分かるかと思ったが、中断したのが瞑想を始めてすぐだったから結局は分からなかった。
それからなんで瞑想していたかなどの話を教えて、姉さんはさっき読んだ本を読み始める。
「こんなんで本当に出来るの?」
「分かんない。瞑想だってそんなにやってないし。」
この本に書いてある事を胡散臭く感じてるのか、姉さんは半信半疑で聞いて来るが、そんな事やり始めたばかりの俺に分かるわけがない。
「私もちょっとやってみようかな?」
「やるなら僕の部屋から出てってよ。」
「いいじゃない!」
ムッとした顔で言われるが、存在感のある姉さんが近くに居ると集中する事が出来ないから出て行って欲しい。
少しの問答があったが仕方ないと言う顔をして姉さんが部屋の外に出て行くと、瞑想を開始しようとした時、机の上で佇んでいる小鬼に意識が行った。
「あっ!」
忘れていたと声を出すと、小鬼に生体エネルギーをどうすれば感じられるのかを聞こうと思う。
「あのさ、生体エネルギーってどうすれば分かるの?」
小鬼に聞くと、小鬼は平坦な声で話し始めた。
「生体エネルギーを感じる事です。今から生体エネルギーが分かる様、私がご主人様に生体エネルギーを送ります。手を出してください。」
小鬼に言われた通りに机の上に手のひらを広げて置くと、その上に小鬼が座り、小鬼の身体から俺の身体へと生体エネルギーだと思わられる何かが送られる。
これが小鬼の生体エネルギーなのだと分かると、俺は目を閉じて瞑想を始めた。
こうやって直接送り込まれて生体エネルギーを知る事が出来ると、この送り込まれた生体エネルギーと似ている物が俺の身体にもないかと探して行く。
そうして身体に小鬼が送った生体エネルギーを流し込まれた事により、小鬼の送った生体エネルギーとは別の生体エネルギーだと思われる物を発見した。
「これかな?」
感じ取った生体エネルギーをより深く感じ取ろうとする。すると、より深く生体エネルギーを感じ取り、生体エネルギーがどう言う風に身体の中を動いているのかも分かる様になった。
生体エネルギーが分かる様になった俺は目を開くと、手のひらの小鬼がぐったりとした姿でいるのが目に入る。
「ど、どうしたんだ!?」
「身体を構成している生体エネルギーが枯渇し始めています。私に生体エネルギーを送る。又はデバイスに戻してください。」
ぐったりしていても平坦な口調で小鬼は話していた。契約に依る縛りでこうまでなると契約の設定を見直す必要があるのではないかと思ってしまう。
「わ、分かった!でも、生体エネルギーを送る方法は分からないし。デバイスに戻すね!」
デバイスを操作して小鬼を送還すると、小鬼は生体エネルギーを霧散させてデバイスに帰って来る。
デバイスを確認すると、先ほどの生体エネルギーの譲渡にその前の召喚でクロから受けた攻撃もあって、小鬼は疲労状態になっているとデバイスに表示されていた。
「お疲れさま。さてと、続きをするかな。」
先ほど感じ取れた生体エネルギーを再び感じ取れるのか、俺は心を落ち着かせて目を閉じて瞑想を行なっていく。
そうすると、他者の生体エネルギーが流れていた先ほどよりは感じにくいが、それでも確かに自身の生体エネルギーを感じ取れている。
このまま生体エネルギーを良く感じ取れる様に、身体に流れる生体エネルギーの流れを感じ取って、自身の身体の生体エネルギーを感じる。
そうして生体エネルギーの流れを感じていると、流れが滞っている場所や流れ方がゆっくりな場所に早く流れている場所など色々あった。
この流れを一定に流れる様にするのが身体の健康に良いと本には書かれていた。そう考えると俺の身体は悪いところがあるのだろうか?
そう思い不安になって途中で読むのを止めた本を読み進めて行くと、どうやら身体や精神的な疲れでも流れる生体エネルギーに不調があるそうだ。
少し安心したが、それでも生体エネルギーの流れが滞っていたり、流れが一定でないのは身体に悪いそうなので、生体エネルギーを操作する様に意識して瞑想を行なった。
「感じ取れる様にはなったけど、操作するのは難しいな。」
俺は生体エネルギーの操作を行なっていたが、生体エネルギーを動かせた気はしなかった。
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