第2話
「市役所まであと少しよ。ハジメちゃん、追い付かれそう?」
「ううん!まだ離れてるよ!!でも、近付いてる!!」
足の関節も変な風に曲がっていると言うのに、何故あんなにも機敏な動きで車を追えるのだろうか?疑問が湧いて来るが、それ以上にあれに捕まれば唯では済まないと俺の感覚が言っている。
「そう、ハジメちゃん。これを持っていなさい。少しは効果があるはずよ。」
そう言ってお母さんが渡して来たのは護符だった。この護符は前に交通事故にならない様に車に置いておくと言っていた物のはずだ。
あの怪異にこの護符の効果は発揮するのかは分からないが、気休めに持っているだけでも何か違う。気がする。
そして、そうこうしているうちに、市役所が見えて来た。車が市役所の駐車場に入ったタイミングで車の後方に怪異が迫っていた。
「うわぁあ!!!!」
「すぐ近くに居るのね!!あっ!もう大丈夫よ、ハジメちゃん。」
「えっ?」
俺が叫んだ時には慌てていたお母さんだったが、何かを発見した様でお母さんは安心させる様に言った。
それに疑問が湧くが、それよりも怪異の腕が車に接触しそうになっている事に気が気でない。
「あっ!」
車に接触しようとしていた怪異が突如現れた女性が持つ槍に串刺しにされた。
「ギャアアアアアア!!!!!!!!」
だが、怪異は標的を女性に変えて手を伸ばそうとするが、女性が持っていた槍の穂先が光り輝くと怪異は断末魔を上げて消滅する。
「お母さん、アイツ倒されたみたい。」
「市役所の護衛をしている討滅師の方が助けてくれたのよ。はぁ、でもハジメちゃんは討滅師の才能があるみたいね。お母さん、討滅師の人にお話があるから少し待っててね。」
「うん。分かった。」
車を空いている場所に止めると、お母さんは先ほど怪異を倒した討滅師の女性の元へと向かって行く。
「それにしても、あんなのが居るのかあ。それに討滅師の才能があるのなら、あんな怪異と戦う事になるのかな。はぁ、嫌になる。」
怪異が見えると言う事は最低限の力があるから見えるのだと思う。そう考えると、今後は怪異を見つけてもスルーする技術を身に付けないと危険だ。
そんな事を出来るのか不安に感じるが、それでも生きて行くには一生付き合って行く事になる技術だろう。
そんな事を考えていると、車の窓がコンコンと叩かれる。見ると、それはお母さんだった。
「ハジメちゃん、お話終わったから降りてらっしゃい。」
頷くと、俺は車のドアを開けて外に出る。
「藤堂さんにお礼を言いなさい。助けてくれたんだから。」
「うん、助けてくれてありがとう!」
藤堂さんと言う討滅師の女性にお礼を言う。この人のポケットから顔を出している動物はなんなのか気になるが、聞くのは不味いのだろうか?
「それが私の仕事だからね。気にしないで。それでハジメくんだったかな。これは見える?」
そう言って藤堂討滅師がポケットから取り出したのは、先ほど気になっていた15センチくらいの狐の様な生き物だった。
「うん、見えるよ。細長い狐みたいなの。」
「やっぱり見えるのね。桃子さん。ハジメくんは討滅師の才能がありますね。」
「やっぱりそうでしたか。」
不安そうな眼差しで見つめられる。やっぱり親からすれば将来どころか、今も危険になった様な怪異に関わる才能はあって欲しくはなかったのだろう。
「検査の時に怪異に襲われた件を伝えてください。」
「分かりました。必ず伝えます。本当にありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
お母さんが頭を下げるのに合わせて、俺もお礼と同時に頭を下げる。
そして後始末をすると言う藤堂討滅師と別れると、俺はお母さんに手を引かれて市役所に向かった。
お母さんの隣でお母さんが市役所の職員と話している間に、暇だから周囲を見ていると同い年の子供たちが視界に入る。
あの子たちは俺と同じで今日が誕生日なのかな。5人居る子供と親の姿がある中、その子供たちは自身が討滅師になれたらなどの話を親に話しているのが聞こえて来た。
あの子たちは討滅師の才能があったら、今後の人生は命が幾つあっても足りない様な人生になるって気が付いてないんだろうな。
そうこうしていると、市役所の職員からパンフレットを受け取った母の後を付いて行き、空いている椅子に座る。
「順番が来るまでの間、これでも呼んでいましょうか。」
「うん。」
そうして一緒に討滅師の事が子供でも分かるパンフレットをお母さんと読んでいく。
討滅師は怪異と戦う仕事で、他にも討滅師の才能がある者は戦う討滅師の人の助けになる物を作ったり、一般人でも使用可能な物を作ってると、デフォルメされた絵で書かれていた。
それを見て、これも本当なのだろうが血生臭い事は書かれていなかった。やはり子供に見せる為の物だから人が死ぬなどの事は書けないのだろう。
パンフレットを読み終わり順番を待っていると、先に検査を終えた子供が戻って来た。
その子供は討滅師の才能がなかった事で泣き叫んでいるが、その親は子供に討滅師の才能がなくて安堵している顔をしていた。
それからも順番を待っていると、嬉しそうにしている子供と悲壮感漂う親の親子や子供も親も討滅師の才能があった事を喜ぶ親子など様々な様子を見せている。
そんな中、次は俺の検査をする番になる。
怪異が見れた事から討滅師の才能がある事は分かるがつい、不安を感じて握っていた母の手に力が入ってしまうと、すると母の方からも握り返して来た。
そうして手を繋ぎながら検査を行なう部屋へと入った。部屋には白衣を着た女性と他に数人の人が検査室には居た。
「おはようございます。検査をするのは
「はい。」
「うん、それならこの機械の穴に腕を入れてくれるかな?」
血圧計の様な物を指差して白衣を着た女性が言う。
これで何が調べられるのかと思いながら、俺は言われた通りに腕を入れた、
「少し締め付けられるけど我慢してね。起動させて。」
「起動させます。」
検査の補助をしている職員の一人に白衣の女性は指示を飛ばすと、俺が腕を入れていた検査機が動き出し、穴に通していた腕が締め付けられる。
それから一分くらい経っただろうか、検査機からピーと言う音が鳴った。
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