第10話 【はじめてのダンジョン探索・3】

 初の魔物は異世界で見慣れた〝ハイ・ゴブリン〟だった。

 それも一体だけではなく、大体7、8体程の数が居り全員が武器と盾を装備していた。

 クロ姉達は魔物が現れると、これまでの様な和やかな雰囲気から一気に戦闘モードに切り替えていた。


「姉さん達は手を出さなくていいよ。自分の力、ちょっと確認したいから待ってて」


 俺は既に戦闘態勢に入ってる姉さん達にそう声を掛け、一人で前に出てハイ・ゴブリンと向かい合った。

 ハイ・ゴブリンは一人だけ前に出て来た俺に対して下品んな笑みを浮かべた。


「口臭いぞ、笑うな」


「……グギャャャ!」


 そんなゴブリンに対し、俺は本当に思ってる事を伝えると魔物達は言葉は分からなくても馬鹿にされた事を感じ取り怒り出した。

 怒り状態となったハイ・ゴブリン達は、武器を「ダンッダンッ」と地面に叩きつけ、俺に向かって走り出した。

 まず最初の一匹目は、自分よりも長い槍を手に持ち凄い勢いで何度も槍で攻撃を仕掛けて来た。


「この程度か、異世界のゴブリンよりも弱いな」


 目の前にいるゴブリン達に似た生物は、異世界にも存在していた。

 そいつらも確かに弱い個体は居たが、どんなに弱くても目の前のゴブリン達みたにい直ぐに怒りに任せて攻撃等はしてこなかった。

 あいつらは魔王の支配下に置かれていて、人類との戦いをしていく中で学習していく奴等はかなり手強かった。


「統制されてないゴブリンなんて、どんなに集まろうと弱いだろ」


 俺は一匹一匹、確実に仕留めて行き3分も掛らず、襲い掛かって来たハイ・ゴブリン達を全て倒しきった。


「流石、元勇者って所ね。試験の時以上に動きが様になってたわね」


「カッコよかったよ。蓮君」


「ハイ・ゴブリンをあんな簡単に倒すって、蓮君は凄いわ」


 クロ姉達は戦いが終わると、そう俺に労いの言葉を掛けてくれた。


「クロ姉達やめてよ。こんなゴブリン程度でそんなに褒めないで、逆に恥ずかしいよ……」


「蓮君、認識のズレがあるから言っておくけどあのレベルのゴブリンがあんなに集まってたら、普通のパーティーはかなり苦戦してるんだよ」


「そうだよ。私達でも蓮君みたいに楽には勝てないと思うからね」


「そもそも上位種は普通の個体よりも強くて、ゴブリンだろうとそれは変わらないだよ」


 俺の言葉に対し、クロ姉達はそう言葉を返してきた。

 そんなにいう程なのかな? 正直、動きも遅くて連携もほぼとれてない奴等だったけど。


「蓮君、統制がとれてなくて簡単だった。みたいな顔をしてるけど、あのレベルの攻撃をしてくるゴブリンが統制されていたら、このダンジョンのランクは〝C〟じゃなくてB以上になるわよ」


「そんなに? こっちの世界との認識、大分俺の中でズレてるのかも……帰ったら、魔物の強さについてクロ姉達教えて」


「うん。その方が良いかもしれないわね。そうじゃないと、これから先蓮君がもし一人でダンジョンに行った際、今みたいに分からずに探索者を煽ってしまう事になるしね」


 クロ姉がそう言うと、ミズ姉とアカ姉は強く頷き、帰ったら勉強会をする事が決まった。

 その後、ダンジョンの中を進んでいくと先程と同じ様にハイ・ゴブリン達が現れた襲い掛かって来た。

 しかし、既にあいつらの動きの観察を終えていた俺は、あいつらが戦闘準備を始めてる間に。

 魔法等は使わず、純粋な身体能力と戦闘技術でゴブリン達を倒して行った。


「蓮君一人でダンジョンの最深部まで来ちゃったわね」


「私達、雑談要員みたいだったわね。ここまで一度しか武器を抜いてないわ……」


「蓮君が強い事は分かってた事だけど、改めて自分達との差を実感したね」


 クロ姉達はそう言いながら、少し落ち込んでいた。

 道中、俺だけ戦うのもあれだからとクロ姉達にも一度だけ魔物達と戦って貰った。

 しかし、運悪くその中に魔法が使える魔物が混じっていて、かなり苦戦をしてしまった。

 その結果、何とか倒せはしたが自分達の実力不足を感じ、それからは俺の後方支援として動く事にした。

 まあ、後方支援とは言ったが特に俺が困る戦いは無く、姉さん達と俺と話す事以外は特にする事は無かった。


「実力不足についてだけど、姉さん達と最初に再会した時とさっきの戦いである程度、治した方が良い所とか見つかったから帰ったらそれ教えるよ」


「「「……えっ?」」」


 クロ姉達は俺の言葉に少しの間を空けて、驚いた顔をしてそんな反応をした。


「たった二回で私達の直したらいい部分が分かったの?」


「うん。というか、そもそもの話だけど戦闘に関して姉さん達って独学だよね?」


「まあ、そうね。世界が変わって戦いを教えてる人とかも居たけど、私達は独学でここまで来たわね」


「多分、誰かに教わっててもあんまり変わってないだろうけど、姉さん達はちゃんとした戦闘技術を学んだらもっと強くなると思うよ」


 その言葉にミズ姉は「蓮君が私達に戦闘技術を教えてくれるの?」と聞いて来た。


「うん。というか、俺が教えたいんだよね。姉さん達、かなり素質は良いと思うんだ。どうかな?」


「是非、蓮君に戦闘技術を習いたいわ」


「私も!」


「勿論、私もお願いするわ」


 クロ姉達は俺の言葉に対しそう返し、帰宅したら姉さん達からは魔物について教えて貰い、姉さん達には戦闘技術を教える事が決まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る