第8話 【はじめてのダンジョン探索・1】
昨日、登録を終え家に帰宅した俺はそこから【アイテムボックス】の中身を整理して使えそうな装備品を見つけていた。
流石に勇者時代にガッツリ使ってた鎧は、性能がいい分こっちの世界だと目立ちそうだった。
だから俺は趣味で集めてた装備の中から、こっちの世界でも目立たなさそうな装備を選んだ。
「どうかな? この装備、目立ちにくい割に性能は良いんだけど」
「見る人に寄ればその性能の良さに気付きそうだけど、パッと見は分からないけど、普通の服みたいでちょっと違和感は感じるわね」
俺が選んだ装備は、向こうの世界でこっちの世界の服を再現しようとして作った装備。
主な材料は飛竜の革で、向こうの世界で有名な職人に一ヵ月かけて作ってもらった物。
性能としては物理魔法攻撃に強く、破損しても俺の魔力を常に与えているので修復も可能。
更に汚れすらも時間が経てば取れるという優れ物だ。
「正直、蓮君は装備よりも本人が強いから普通の服を着ててもダンジョンとか大丈夫そうだけどね」
「うんうん。再会した初日、私達が苦労してたあの魔物をその辺に落ちてた木の棒で倒しちゃったしね」
「あれ本当に驚いたよね。私達、そこそこ良い装備着てたのに木の棒を持った蓮君以下だったもん」
クロ姉達は、俺と再会した時の事を想い出しながらそんな事を言った。
その言葉に俺は「偶々だよ」と返し、本日攻略予定のダンジョンに到着した。
場所はマンションを出て車で一時間程の所で、ダンジョンの推定ランクは〝C〟ランクだと伝えられた。
「Cランクダンジョンって事は、俺がギリギリ入れる所か」
俺の現在の探索者ランクは〝Dランク〟で、クロ姉達と全員〝Cランク〟探索者。
そしてここに来る前に協会で仮パーティー登録をした俺は、姉さん達が居るおかげで一つ上のランクまでのダンジョンに入る事が出来る。
「正直な所、最初は難しくない所に行こうか迷ったけど、蓮君の強さならあんまり変わらなさそうだったからここに決めたの」
「うんうん。後はここ、攻略したら報酬が貰えるからそれも今日の狙いの一つでもあるわね」
「へ~、ダンジョンを攻略したら報酬が貰えるんだ。いくらくらい貰えるの?」
「Cランクのダンジョンで既に何人か攻略失敗してるから、最低でも100万以上は貰えるわね」
クロ姉のその言葉を聞いた俺は「100万も!?」と驚いた。
4人で割っても一人25万は貰える。
瞬時にその計算をした俺は、やる気に満ち溢れ「絶対に攻略する」と意気込んだ。
「蓮君、意気込むのは良いけど蓮君ならこの程度のお金ならこれから先沢山稼げると思うから、あんまり無茶はしないでね」
そんな俺を見てクロ姉は心配してそう言葉を掛け、それから少ししてダンジョンの場所に到着した。
既に発見されてから時間が経っており、ダンジョンの入口前には協会が用意した警備員達が守っている。
「あっ、お久しぶりです! 今日はこちらのダンジョンに行くんですか?」
警備員の一人、若い女性はクロ姉達と目が合うと少し興奮気味にそう声を掛けて来た。
「うん。ちょっと幼馴染の子と一緒に回ろうと思って来たの、手続きは負えてるから入ってもいいかしら?」
「……幼馴染の子? もしかして昨日の探索者登録で凄い記録を出した方ですか!?」
警備員の女性は、クロ姉の言葉を聞くとそう驚いた顔をした。
あれ、もしかして俺の登録の話で出回ってるのか?
「凛ちゃん? その話、里香ちゃんから聞いたと思うけど言い振らした駄目って言われなかった?」
「ッ! ご、ごめんなさい……」
クロ姉は警備員の女性に怒るように言うと、女性はシュンッと大人しくなった。
「蓮君、ごめんなさい。昨日の件、この子には話が言ってるみたいね。それで紹介が遅れたけど、この子は昨日の受付を担当した里香ちゃんの妹の凛ちゃん。凛ちゃんは蓮君の事は知ってるから紹介は大丈夫よね?」
「はい。その、秘密事なのに喋ってしまってすみません……昨日、お姉ちゃんが凄い登録者が来たって話を聞いて私も会ってみたいなって思って……」
「そこまで思いつめなくても大丈夫ですよ。誰にだって失敗はありますし、それに今は周りには誰も居なかったのでセーフですよ」
思いつめてる凛と紹介された女性に俺がそう言うと、少しだけ落ち着いてくれた。
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