第4話 【探索者登録・1】


 異世界から戻ってきた翌日、両親に挟まれて寝ていた俺はちょっとだけ体の痛さを感じつつ目が覚めた。

 二人共目元が少し腫れてる。

 俺が寝た後も二人で泣いてたのかもしれないな……。


「父さん達には心配かけたし、今日は朝の運動は控えておくか」


 異世界で暮らしてた時、日課として朝に運動をすると決めていた。

 ただ今日は昨日戻って来たばかりで、俺が突然いなくなったらまた二人が心配するだろう。

 そう考えた俺は二人を起こさないように布団から這い出て、洗面所に行き顔を洗ったりしてリビングに戻って来た。


「あれ、父さん起きたの? もしかして起こしちゃった?」


「いや、いつも同じ時間帯に起きてけど今日は少し寝坊した位だよ。多分、蓮が戻って来た安心感から寝過ぎたみたいだね」


 それから父さんと他愛もない会話をしていると、まだ眠そうではあるが母さんも目が覚めたようだ。

 その後、寝ぼけてる母さんは洗面所に行き、父さんはキッチンで朝食を作り始めた。


「異世界はこの世界より文明的には進んでないみたいだと思ってるけど、そこら辺はどうだったんだ?」


「現代と比べたら文明レベルは低かったね。だから、向こうで覚えてる料理を再現したり、魔道具で電化製品に似た物を作ったりして王様達に何度もお礼を言われたね」


「ちゃんと異世界転移っぽい事してたんだな」


 父さんとは昔からライトノベル、アニメ等を一緒に見ていて異世界に関しても父さんは割と知っている方だと思う。

 だから俺が異世界から戻って来たという話をした時、小さな声だったが「異世界に召喚、いいな……」と呟いていた。


「あっ、そうだ。アイテムボックスの中身ってどうなってるんだろ」


 話をしてる内にふと思い出し、俺は【アイテムボックス】の中身がどうなってるのか昨日は確認をしていなかった。

 中身があれば色々と使えるな、そう思いながら確認すると異世界で手に入れた物が全てあった。


「異世界のアイテムをそのまま持って帰って来たのか!?」


「そうみたい。てっきり無くなってるのかと思ったけど、無くなってないみたい。旅の途中で色々と拾ったり貰ったり作ったりしてたから色々とあるけど、何か見たい物とかある?」


「そうだな……ドラゴンの死体とかはあるか?」


「あるけど、家の中だと色々と危ないと思うよ? 家具が壊れたりしたら母さん怒るよ」


 真っ先に〝ドラゴン〟と言った父さんに対して俺はそう言い、何か良い物は無いかと探していると丁度良い物を見つけた。


「この立派な角、もしかしてドラゴンの角!?」


「ちょっと違うね。これは竜人王と決闘した際に折れて貰った竜人の角だよ。ドラゴンとかのより小さいけど、強度や魔力の通りはドラゴンの角と遜色は無くていつか武器に変えようと思って持ってたんだ」


「竜人の角、凄いな……」


 父さんは羨ましそうに角を見つめており、そんな父さんを洗面所から戻って来た母さんが「何を見てるの?」と聞いて来た。


「異世界から持って帰って来た物を見せてるんだよ。母さんも何か見たい物とかある?」


「う~ん、私は蓮やお父さんみたいにそう言うのに詳しい無いからそう言われても……あっ、そうだわ。若返ったりする薬とかあるのかしら?」


「若返り薬はあったけど、俺は必要なかったから持ってないね」


「あったのね……」


 母さんは無いと分かると、あからさまに残念そうな顔をした。

 母さん昨日もそうだけど、何となく若さを求めてるな。

 息子の俺が言うのもあれだけど、母さんは同年代と比べたらそこまで老けてないし、なんなら若く見える方だとは思う。


「若返りとかでは無いけど、体力を増やす薬とかはあるよ」


「それってどんな薬なの?」


「過剰摂取すると危ないけど、適度に取れば限界値が上がって体力が増えて沢山動けるようになるね」


「そんな薬もあるのね。ちょっと興味があるから貰たいけど、蓮の分が無くなったりしないの?」


 母さんは俺の分が無くなるのが心配なのか、そんな事を聞いてくれた。


「勇者時代、知り合いに薬師の方が居て沢山貰ってるから分けても問題ないよ」


「……そ、それなら俺も貰っても良いかな? 体力が増えたら今より仕事が出来そうだし」


「うん。勿論良いよ」


 俺と母さんと話を聞いていた父さんも欲しいと言ったので、取り合えず父さん母さんに10本ずつ渡す事にした。

 使い方としては毎朝一本飲み適度な運動をする事、そうすれば全て飲み終わる頃には効果が出て来ると説明した。


「最低でも効果が表れるのは六日以上だから、忘れないように毎日飲んでちゃんと運動してね。そうじゃないと、ただ一時の間体力が増えるだけで意味が無いから」


「「は~い」」


 二人は俺の言葉に返事をした。

 その後、父さんが作ってくれた朝食を食べ、父さん達は早速俺が渡した薬を飲んでマンションにあるジムで運動をしてくると言って出て行った。


「二人共、昨日の事で疲れてる筈なのに子供の様にはしゃいでたな」


 父さん達を見送った俺は、家の中に残り【アイテムボックス】の整理をしているとチャイムが鳴った。

 【索敵】で確認すると、クロ姉達みたいで俺は【アイテムボックス】の整理をやめて玄関に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る