第2話 【帰還・2】

 それから俺は、一先ずこの公園から移動しようと公園の外に出た。


「住み慣れた街が廃墟になってるなんて……俺が異世界に行ってた5年間でこの世界に何がおきたんだ……」


 公園の外は思い出に残ってる街並みでは無かった。

 家は壊され、空気もどんよりとしている。

 変わり果てた街並みを見ながら歩いていると、前の方から戦闘音が聞こえて来た。

 人が戦ってるのかも知れないと考えた俺は、その場へと急いで向かった。


「クロハ姉、ミズキ、魔法の準備が出来たわ。下がって!」


「了解。ミズキ、下がるわよ! アカネ、お願い!」


 戦闘音がした所へと行くと、三人の女性がブラックウルフと戦闘をしている。

 前衛兼リーダーらしき黒髪長髪の女性は、もう一人の前衛である青髪短髪の女性に指示を出し。

 後方に下がり、魔法の準備をしていた赤髪の女性は二人が下がったと同時に魔法を放っていた。

 前衛二名、後衛一名の組み合わせみたいだ。


「いい連携だな……だけど、ブラックウルフにその程度の魔法は意味がないぞ」


 赤髪女性の魔法は、高い威力を持つ魔法では無い。

 現に魔法が直撃したブラックウルフは女性達を睨みながら、ジリジリと近づき寄っていた。

 そして攻撃出来る所まで寄って来たブラックウルフは、女性達に向かって飛びかかった。


「「「ッ!」」」


 このままだと危ない。

 そう判断した俺は、持っていた木の枝に【風魔法】を纏わせ槍投げの様にしてブラックウルフに向かって投げた。


「ギャウッ!」


 俺の投げた木の枝はブラックウルフの頭部を綺麗に突き破り、ブラックウルフは絶命した。

 ふぅ~、何とか間に合ったな。


「あの、大丈夫ですか?」


 ブラックウルフを退治した後、その場で固まっていた三人の女性の元に近づいた俺はそう声を掛けた。

 すると固まっていた女性達は「今のは何!?」と同時に叫び、俺に詰め寄って来た。


「えっと、枝に魔法を乗せて投げただけですよ。それより、怪我とかは大丈夫ですか?」


「それは大丈夫よ。大した怪我はしてないから、まあ死にそうにはなったけどね。貴方のおかげで助かったわ、ありがとう」


 三人の中で一番上の方らしき女性は代表してそう言うと、他の二人も同じようにお礼を口にした。

 その後、互いに自己紹介を行う流れになった


「まずは私ね。私はこのパーティーのリーダー兼前衛を務めてる一条 黒羽いちじょう くろはよ。よろしくね」


「私は主に前衛と索敵を担当してる一条 水樹いちじょう みずき。よろしくね~」


「さっきは良い所は見せられなかったけど、このパーティーで後衛を担当してる一条 朱音いちじょう あかねよ。まあ、見ての通り私達は三姉妹で活動してるパーティーになってるわ。よろしくね」


 三人からそう自己紹介を受けた俺は、同じように名前と軽く自分の出来る事を伝えた。

 しかし、一条黒羽、一条水樹、一条朱音か……なんか聞き覚えのある名前だな。


「……ねえ、もしかして間違ってたらごめんだけど貴方もしかしてお隣に住んでたレン君? 5年前に行方不明になった」


 聞き覚えのある名前だなと考えていると、クロハさんは突然驚いた様子でそんな事を聞いて来た。

 聞かれた俺は〝お隣〟という単語を聞き、そう言えば隣によく遊んでくれていた幼馴染の姉妹の事を想い出した。


「……もしかしてクロ姉にミズ姉にアカ姉!?」


「「「ッ!?」」」


 互いに思い出し、驚き固まるとクロ姉達は俺に抱き着いて来た。


「レン君、今までどこに行ってたのよ!」


「私達もそうだし、レン君のご両親も凄く探してたのよ!」


「レン君、無事だったのね!」


 クロ姉達から囲まれ抱き着かれた俺は、その場を離れられずそのまま三人に思うようにもみくちゃにされた。

 感動の再会だから俺も当然嬉しいんだけど、く、苦しい……。


「ごめんね。レン君、その再会できたことが嬉しくて……」


「いや、クロ姉達に悪気が無いのは分かってるよ。それより、クロ姉達随分雰囲気変わったね。昔はほんわか~的な感じだったけど、なんだか今は言い方はあれだけど戦士っぽいね」


「これでも探索者として活動してるから、そう見えるんだと思うわ。それよりレン君は今までどこに居たの? 突然消えて、物凄く探したのよ?」


 アカ姉からそう聞かれた俺は、自分が今まで異世界に居た事。

 そして、その異世界での役目を終えて戻って来たばかりだという事を伝えた。


「異世界に召喚、5年前だったら信じられないけど今だとその話も信じられるわね」


「逆に質問なんだけど、こっちはどうしてこんな事になってるの? 別の世界に飛ばされたのかと思ったけど、昔の記憶からここは元の世界だって断言できるから今も隠してるけど混乱してるんだよね」


「それは私が説明するわ」


 アカ姉と話していると、クロ姉からそう言われてこの世界の変化について教えて貰った。

 最初にこの世界に起きた異変は5年前で、突然世界の各地に未開の土地——通称〝ダンジョン〟が出現した。

 更にそれと同時に人類に〝ステータス〟が与えられ、自分達の能力を確認出来るようになったと説明された。


「ステータスってクロ姉達も見れるんだ。てっきり異世界帰りの俺だけかと思ってた」


「異変後に突然現れて見れるようになったのよ。当時はゲームみたいでちょっと嬉しかったけど、その後に起きた事で嬉しさも全て消えたわ」


 異変後、ダンジョンを攻略するか放置するのか議論がされていた。

 そんな時、最初期に出来たダンジョンが突如爆発し、中に居た魔物が外の世界に出てきてしまった。

 それにより世界各地で魔物によって、その土地を奪われてしまい人類の生活圏は狭まってしまったと教えられた。


「という事はここもそうなの?」


「ええ、3年前にここの近くのダンジョンの攻略が出来ずに爆発して今じゃこんな廃墟になってるの」


「そうなんだ。あれ? でも俺が戻って来た所の公演は綺麗だったよ?」


 神様と喋った後、この世界に戻って来た公園は特に廃墟っぽい感じは無かった。

 そう俺が言うと、クロ姉達は「えっ?」と驚いた顔をし、現場を見に行こうという事になり公園に向かった。

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