#2【vstreamer準備中】きっかけは突然

ふぁぁ眠い。

すこぶる眠い。

このファミレスのコーヒーは

旨味をかき消して苦みを足したような味

がするので私はこの店は絶対選ばない。


選んだやつがいるってことだ。

そしてこの苦虫コーヒー店を選んだやつは

もう呼び出し時間を42分も過ぎている。


「ごめーん☆待ったー?」

なんだその謝る気が毛頭ないつのだひろ

みたいな登場は。


「待ち過ぎて尻が横に割れた」

「救急車よぶ?」


この言葉の節々に何故かキラキラした

記号がついてしまう女は白石ユキ。


私達は大学からの知り合いだ。

というか友達と呼ぶ間柄なのかもしれない。

なんせ私がプライベートの時間に会う人物

ランキング堂々の2位だからだ。


ちなみに1位はコンビニの店員なので

実質の1位だ。


「明恵ちゃんせんせーどうなの最近」

下の名前で呼ばないでくれと100年前から

言っているにも関わらずこいつはやめない。


私は明るくも恵まれてもいない。

そもそも名前なんてもんは親が自分に

無いものを望んで付ける。


んで奇しくも親に似てしまうから

名前と反対の人間が製造されるわけだ。


「毎日がソロコンサートだよ」

「何それおもしろーい☆」


ここがリングだったらよかったのに。

「ユキはなんか決まったのか?」


このキラキラ三十路は声優だ。

と言ってもたまにローカルの謎ラジオの

謎キャラの声優を単発で担当する

レベルだが。


「んーまあ変わり無しかなあー明恵はなんか相変わらず人生つまんなそうだねw」

「ごめん正面に座ってるけど何とかして後頭部ぶん殴っていい?」

キャハハとお世辞の極みみたいな笑い声を

上げてユキが続ける。


「明恵はさー人前で話すの好きだったじゃん?だからせんせーになったんでしょ?声かわいいし、なんか配信とかしてみたらいいじゃん。」


言ってる意味が全部わからなかった。

いや前半はわかる。

確かに私は人前で話すのが好きだった。


だがそれは聞く気がある人の前で

作文などを読むことしか経験したことの

無かった私の時代だ。


勉強を学校でする気など毛頭ない

ガキの前で話すのがこんなに難しくて

つまらないものだとは思わなかった。


「あんだよ配信って。」

「明恵gootubeとか見ないの?」

そりゃ大手動画配信サイトのことは知っている。

だがわたしはたまに寝る前にコラコラさんが

誰かを炎上させた動画を見るくらいだ。


「いま流行っててさーそこでリアルタイムで

要は生放送するのよ。アニメの皮を被ってね?カメラと連動してそのアニメが動くようにして」

ごめん全然言ってる意味がわからない。

リアルタイムで生放送ってそんな素人の

トークショー見る意味がわからない。


「それは視聴者がコメントをするんだけど、そのリアルタイムでコミュニケーションが取れるのがおもしろいんだよー」


あーなるほど。

アニメキャラキャバクラか。

そういえばなんかニュースで

アニメキャバ嬢がえらく稼いだって

ニュースを見た気がする。


なんだったか金が投げれるんだったような。

そんな楽しい人を喜ばせられるやつは

リアルでも充実したかわいいやつに

決まってるだろう。


金を投げるやつは何考えてるのか理解に苦しむ。

その金はお前が汗水垂らして稼いだ金だろうに。

そいつはその金でゴム買ってんぞ。


「今更そんなんやるわけないじゃん。それに生徒にバレたらそれこそ死ねる。」

「ハハ大丈夫だよそんな見てもらえるワケないからあ☆」


てめぇ。

まあそうか私なんかがそんなことやっても

見てもらえるわけないか。


授業さえ聞かせることが

できないんだから。


...


...


ヴーヴー

家に入った瞬間またスマホが

あざ笑うかのように唸った。


✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢

今日はありがとー🎉❤️


事務所の人に話したら

機材一式余ってるやつ

あるみたいだから送るね💨


あとパソコン買っといてー

グラボってのが入った

30万くらいのやつ!


モデルは私が描くよ

いま勉強中だから😤

✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢



おいラインて1行くらいで

キャッチボールするんじゃないのか

話終わってんじゃねぇか。




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