こちら、未来聖地巡礼案内所。
傘木咲華
プロローグ
プロローグ
それは、中学一年生の春のこと。
二人の姉の影響でアニメオタクになった少女――
聖地巡礼とは、アニメ・漫画・ドラマ・映画・ゲーム・小説などの舞台や、著名人と縁のある場所、ファンにとって思い入れのある場所を『聖地』として巡ることだ。
だけど乃衣はまだ知らなかった。
感動したり、興奮したり、心が躍ったり。聖地になった場所を訪れるだけでたくさんの感情が駆け巡ることを。
その日、乃衣が家族に連れられてやってきたのは大好きな日常アニメの少女達が通う高校だった。
舞台になっているのは小学校の旧校舎。正門を潜り抜けて、校舎の手前には噴水があって、アニメで見るよりもダイナミックな印象があって、作中で何度も出てきた校長先生の銅像もあって……。
あっ、と思った時には胸が弾んでいた。
まるで自分が物語の中へと入ってしまったようで、乃衣はきょろきょろと挙動不審に辺りを見回してしまう。姉達には「まだ校舎の中に入ってないんだよ?」と笑われてしまって、ちょっとだけ恥ずかしい気持ちになってしまった。
でも、だって、仕方がないではないか。
聖地巡礼がこんなにも楽しいものだって、乃衣は初めて知ったのだから。
学校の中へと足を踏み入れると更なるわくわくが待っていた。
窓の作りが同じというだけでテンションが上がる廊下。特徴的なウサギとカメと置物が飾られた階段。教室の中には大きな黒板があって、アニメのファンによるメッセージやイラストが描き寄せられていた。
ただ感動するだけじゃなくて作品に対する愛もあって。
乃衣も自然と「これからもずっと大好きな作品です」というメッセージを書き加えていた。こういう時、自分にもっと画力があったらなと思う。だけどポンポンと頭を撫でてくれる姉の手があまりにも温かくて、乃衣はすっかり満足してしまった。
しかし、満足するのはまだ早い。聖地巡礼は何も学校だけではないのだ。
翌日、乃衣は家族とともに聖地を巡る。
通学路になった道を歩いてみたり、作中にでてきたハンバーガーショップで昼ご飯を食べたり、オープニングに出てきた駅の階段や橋、飛び石に行ってみたり……。
移動も多くて汗だくのはずなのに、好奇心がすべてを覆い尽くしてしまう。
あぁそうか、これが聖地巡礼なのかと乃衣は思った。
さも当然のように心が躍って、もっと聖地巡礼のことが知りたいと思ってしまう。
きっと。
――いや、絶対に。
乃衣は断言することができる。
のちに自分が『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます