第7話 ユウコと二人の夜
隣子とは元々、買い物に行く予定を立てていた。
大した用事でもないけれど、ユウコちゃんにとっては楽しめるかなと思って連れてきたけど、駅前は人が多いな……。
人込みで話すわけにもいかず、手だけ握って一緒に歩く。
隣で歩くユウコちゃんは、ウキウキと楽しそう。
私はいつも、隣子としかつるんでないからな。
なんだか新鮮な気分。
目的の買い物を済ませると、ユウコちゃんと街をふらふらと歩いた。
何を見ても、ユウコちゃんは新鮮な反応をしていて、見ていて飽きなかった。
一通りウインドウショッピングを楽しんだので、私たちは駅前を後にした。
人が少なくなってきたので、私はユウコちゃんから手を放した。
隣にいたユウコちゃんは、私の少し後ろをついてくる。
私の家は、学校の方。
私と同じ道をついて来るっていうことは、ユウコちゃんは学校にでも住んでいるのかな?
いつも通りの、ただの帰り道なのに。
なんだか空が綺麗に見えた。
今日は、なんだか楽しかった。
ユウコちゃんも終始楽しそうだったし。
楽しそうなユウコちゃんを見て、ふと思う。
こんなに楽しそうだったってことは、ユウコちゃんはいつも一人で寂しいのかもしれないな。
誰にも存在を知られないで。
ずっと一人で学校にいて。
そう思うと、何だか可哀想に思えてきた。
「……あのさ、今からで良ければ、私の家に来る?」
ユウコちゃんは驚いた顔をしたが、ゆっくりと頷いた。
「ありがとう!」
私はユウコちゃんの手を握って家へと向かった。
◇
「ユウコちゃんが、初めて家に連れてきた子なんだよ。隣子でさえまだ連れてきたこと無いし」
私は部屋着に着替えて、メイクを落としながら、そう言った。
自分の部屋で歌を歌ったり、電話することも多いから独り言を言うのも普通のこと。
親も無干渉だからね。
私の言葉に、ユウコちゃんはそわそわしていた。
ユウコちゃんを家に連れ込んでみたものの。
どうしようかな。
ゲームとか、物に触れて遊ぶようなものは、きっとできないんだよね。
「映画でも見る?」
私がそう言うと、ユウコちゃんはうんうんと頷いていた。
初めての彼女を家に連れ込んだみたいな気分。
なんだか不思議な気分。
◇
……結局、映画は三作品も見てしまった。
続き物で、ユウコちゃんが見たいというから。
もう夜の23時を過ぎていた。
幽霊とはいえ、こんな時間に女の子を追い返すなんて私はできないな。
試しに聞いてみるか。
「ユウコちゃん、今日泊っていく?」
ユウコちゃんは、いつも通りの驚いた顔を見せた。
その後がいつもと違ってた。
ユウコちゃんの頬を、雫が流れるのが見えた。
「あれ? 泣いてるの?」
ふるふると首を横に振るユウコちゃん。
……そうだよね。ユウコちゃんは、ずっと一人だったんだよね。
誰かとこんな風にして過ごすのが、楽しかったんだよね。
私は、ユウコちゃんを抱きしめた。
触れることが出来て、良かったって思うよ。
抱きしめると、ユウコちゃんの体が震えているのが分かった。
体温は感じることが出来ないけれども、ユウコちゃんの気持ちに触れられた気がした。
「ユウコちゃん、今日はとっても楽しかったよ」
私はそう言って、一つしかないベッドに私とユウコちゃんは倒れこむと、抱き合いながら眠ったのだった。
◇
朝目が覚めると、部屋には私一人だけしかいなかった。
確か、ユウコちゃんと寝てたと思うんだけれど。
……まさか、成仏しちゃったのかな。
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