第4話 ユウコはカラオケ好き
お弁当を食べると、各々フリータイム。
私と
それがいつもの光景。
ユウコちゃんは、ニコニコと読書している。
幽霊も本を読むだね。
その時、隣子のスマホが鳴った。
「えぇ……。今日彼氏忙しいらしい。まじか暇になっちゃった」
隣子は、机に顔をつけてうなだれ始めた。
こうなると、隣子は明日までずっと機嫌悪いんだよね。
しょうがない。
「そうしたらさ、今日授業終わったらカラオケでも行こうよ」
隣子は机に顔を付けたままだったけれど、段々と口元が緩んできて、ガバッと顔を上げた。
「いいよー! 賛成!」
ユウコちゃんも、一生懸命うんうんと頷いていた。
これは別に、ユウコちゃんに話しかけたつもりでは無かったんだけれども。
ユウコちゃんの目元は髪に隠れて見えないから口元で表情は判断する。
ちょっと頬を赤らめていて、楽しそうに笑っていた。
楽しそうだから、一緒に連れていっても良いかもしれないか。
「隣子、ユウコちゃんも連れて行っていい?」
「誰だっけ、それ? 盛り上がるなら、誰でもウェルカムだよ!」
ユウコちゃんは、口を開けてびっくりしたようだった。
周りをきょろきょろして、自分に言ったのか?って伝えるかのように、自分自身を指さしている。
私は頷いて答えてあげる。
そうしたら、ユウコちゃんはとても嬉しそうだった。
カラオケの約束をしたところで、昼休み終了のチャイムが鳴った。
◇
授業が始まり、先生がつらつらと教科書を読み始める。
お弁当を食べた次の授業ってこともあって、やっぱり眠い。
隣の席を見ると、隣子も眠そうにしていた。
まあそうなるよね。
ユウコちゃんはちゃんと起きてるかな?
目線をずらして少し後ろの方を見ると、ユウコちゃんは分厚い本を見ていた。
国語の授業だから、辞書を引いてるのかな?
きっとそうなんだろうな。偉いなー。
幽霊だけれども、ユウコちゃんはやっぱり真面目なんだよね。
寝てるところ見たこと無いし。
何にでも一生懸命。
それにしても、でっかい辞書。
マジマジと見つめると、背表紙が目に入った。
『カラオケ歌本』
うーん、カラオケ?
なんだろう、カラオケの辞典みたいな?
他のみんなには見えないんだろうけれども、授業に関係ないことをするのは良くないよね。
そう思って、ユウコちゃんに向かって、消しゴムの切れ端を投げて注意する。
飛んで行った消しゴムの切れ端は、ユウコちゃんをすり抜けて教室の端へと落ちて行った。
そうですよね。分かってました。
ユウコちゃんは幽霊でした。
どうやって気付かせれば良いのかな。
声をかけるわけにもいかないし。
少し音を立てながら椅子を引いて、後ろに伸びをしてみる。
後ろの方へ向けて、小声で呼んでみる。
(ユウコちゃーん)
すっごい夢中になって読んでて、こっちに全然気づかない。
ユウコちゃんは授業中寝ることが無いと思ってたけれど、こういうところもあるんだね。
こちらに気づかないユウコちゃんの顔を覗き見ると、とっても楽しそうにカラオケ歌本を見ていた。
カラオケ行くのがそんなに楽しみなんだね、ユウコちゃん。
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