第3話 ユウコとお弁当

 世界史の授業が終わって、みんなは眠りから覚めた。

 まるで、お墓からゾンビが這い出るみたいに、机から顔を上げ始める。


 各々が、ちょっとうめき声をあげながら。


 一方で、ユウコちゃんはとっても元気。

 ちょうど私の方を向いていたのか、目があった気がした。


 私からは、ユウコちゃんの目元が髪に隠れて見えないけれど。

 腕を体の前に持ってきて、ファイティングポーズみたいにしている。

 元気をアピールしているようだった。


 どっちが死人だかわからないね。

 なんだかおかしな話だよね。


 隣子りんこも、永い眠りから目が覚めたようだった。


「うううー……。終わったー……」


 いつもの光景だけれども、やっぱりおかしいな。

 隣子がなかなか起きなかったから、もう昼休みの時間になっている。


 みんな、お昼ご飯を食べる準備をしていた。

 ユウコちゃんも、鞄からお弁当を取り出して、準備している。


 ユウコちゃんは、いつも一人で食べてて、ちょっと可哀想なんだよね。

 朝の挨拶以外では、ユウコちゃんには話しかけづらい。

 そういう時は、隣子に話しかける時に一緒に話しちゃう。


「ね、ご飯一緒に食べよ!」


 ‌ユウコちゃんは、自分の方を指して、私? ‌っていうジェスチャーをしている。


 うんうんと、私は頷いて答えてあげる。

 そうすると、ユウコちゃんは分かりやすく嬉しそうな顔をした。



 ユウコちゃんは嬉しそうに机をくっつけてくる。

 机も、『霊体』だから他の人からは見えないけれども。

 私は二人へ向かって聞く。


「ねぇねぇ、今日のご飯なーに?」


 隣子は、けだるげにコンビニで買ったであろう食材パンを見せてくる。


「これこれ」

「そういうのばっかり食べると、逆に太るんだからね」


 寝起きの隣子は、反応も薄い。


「そうなの? マジか。今度から控えよう」


 私はというと、コンビニのお弁当。

 人のことは言えないな。


 ユウコちゃんも、一生懸命私に向かってお昼ご飯をアピールしてきていた。

 薄いピンク色の可愛らしいお弁当箱。

 小さめのお弁当箱で、二段重ねになっている。


 一段が、掌に収まっちゃうくらい。

 中身はというと、一段目が白米。

 綺麗なお米が輝いていた。


 二段目は、自分で作ったのか、卵焼きとウインナー。

 あと、ブロッコリーとトマト。

 メインにハンバーグが見えた。

 それらが、彩り良く盛り付けられていた。


「せっかくだから、分け合って食べようか」

「まじ? 私分けるの無いけど、もらっていいの?」


「どうぞどうぞ」


 隣子が私のお弁当からおかずを持っていったので、その部分が少し空いた。

 そうすると、ユウコちゃんは嬉しそうに、私のお弁当の空いた部分に自分のおかずを入れてきた。

 すごくニコニコしてる。


「助け合いってことで良いのかな?」


 私がそう言うと、ユウコちゃんはうんうんと強く頷いていた。可愛い。


見得子みえこ、ほんと助かるよ! ありがとう!」

「私も助かったよ、ありがとう」


 ユウコちゃんは、頬を赤らめていた。

 私の玉子焼きを隣子にあげて、代わりにユウコちゃんの玉子焼きをもらった形になった。


「えっ? 助かったってどういう事? 私がもらった玉子焼きって、見得子の嫌いなおかずだったの?」

「ううん、逆だよ。私、大好きだよ玉子焼き」


 隣子は不思議がっていた。

 ユウコちゃんは、嬉しそうだった。

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