雪降る夜の贈り物
@ramia294
世界の温暖化が進み。
夏は、どんなに暑くとも、
夏は、どんなに長くとも、
この国には、
冬が、必ず訪れます。
冬の贈り物。
それは、
あの、
白く、
冷たい、
雪。
雪降る街を駆け抜ける。
今夜の私は、ひとり夜行バスに。
あの人の住む、
あの街へ、
あと少し、あと少し、あと少し……。
あの人との、
出会いは、二年前。
高校生の私。
友人とのお買い物。
冬休みの街。
賑やかなあの地下街。
その冬、初めての雪に、
はしゃぐ、あの街。
大きな、大きな、クリスマスツリー。
キラキラ光る飾り付け。
ピカピカ光る小さな電球、
友人との、
待ち合わせの広場。
出会ったのは、あの人。
キラキラのツリーに見とれる私。
地下街のその場所。
その場所だけ、天井は無く、
夜空まで、遮るものはなく。
星の世界への吹き抜け。
恋人たちに、
いつも優しく。
星の光、降る
待ち合わせのあの場所。
この季節だけの、
クリスマスツリー。
その日は、クリスマス寒波、
舞い降りるのは、
白い、
あれは妖精の羽ばたき?
それとも、天空のパラシュート部隊?
それは、雪。
その冬
初めての
贈り物。
見とれる私。
冷たい風に、
私の鼻が、ムズムズ。
クシュン!
思わずクシャミ。
お隣でも、豪快な破裂音。
ハックション!
思わず見つめあい、
笑顔溢れる、
ふたりの初めての出会い。
初めて見る彼なのに、
何故かドキドキと、高鳴るこの胸。
今でもハッキリと覚えています。
頬染めた私。
どちらが赤い?
リンゴさんと、競争。
でも、私は、知っています、
競争には、もう一人。
あの人も参加していました。
運命の女神さま。
ずいぶん遅れましたが、
私にも、
恋、
訪れましたか?
運命の女神さま。
ずいぶん不器用な私の、
恋、
叶うのでしょうか?
「冷たい風ですね」
頷く私。
雪なのに、
冷たい風吹く季節なのに、
私の頬は、熱くなり、
心臓は、ドキドキ。
身体は、ポカポカ。
二人を間に、白い雪、
ひとひら、ふたひら。
あなたは、もしや天空のパラシュート部隊さんですか?
それとも、魔法使い?
または、季節を迷う春の妖精?
私だけを温暖化にする、
あなたの視線。
待ち合わせのあなた。
お相手は?
お友だち?
それとも、恋人かしら?
私の初めての恋。
早くもピンチ。
お互いの待ち合わせのお相手、
遅れる中、
ポツリポツリと話し出す私たち。
それから、間もなく、
わたしの待ち合わせの
お相手が、
到着。
あなたのお相手を確かめられないまま、
ふたりに、別々の時間が訪れました。
私の初めての恋。
恋とは、
地上に触れた雪かしら?
淡く消えて……。
年末は、あわただしく過ぎて、
オモチの美味しいお正月。
お腹いっぱいの
重い身体で、ご近所の神社へ
初詣。
再び雪が、
ひとひら、ふたひら。
私のお鼻も再び、
ムズムズ。
クシュン!
小さなクシャミが、再び。
そして、豪快な破裂音も再び。
あれ?
このクシャミは?
思わず振り向く私。
見つけるあの笑顔。
「あれ?偶然だね」
ここは、神さまのお住い。
偶然でなく、運命です。
あなたの言葉を心の中で、否定する私。
淡く消えたと思った恋。
再び、私の胸の中、ひとひら、ふたひら。
積り始めました。
きっと街を白く染める
雪。
きっと私を染める
あなた。
私の胸の中、
降り積もるあなたへの思い。
溶けない根雪へ。
急な斜面を
雪だまが転がる様に、
今年の時間が急ぎ足。
冬休みが、過ぎて、
学校で、再び耳にする、友だちの笑い声。
再びお鼻もムズムズ。
クシュン!
そして、
再び、
破裂音。
破裂音?
ハックション!
あれ?
振り向く私。
あの人の笑顔を発見。
同じ高校の先輩だったあの人。
始まる……
ふたりの恋物語。
あの人と歩く、帰り道。
今年の冷たい風は、
ふたりを避けて、
いるのかしら?
温かい私の頬と繋いだ手
と手。
私の温暖化。
あなたも参加?
永遠に続けと願う
私の幸せな高校生活。
それでもあなたは、受験生。
動物の好きなあなた。
都会の大学へ、
獣医さんになるために、
旅立って行きました。
ふたり一緒の時間は、終わり
私は、再び、
ひとりに。
寂しくて、
会いたくて、
温もりを感じたくて、
涙の日々を送る私に、
あの人と同じ大学を夢見る私。
私の成績は……。
とてもあの人と、同じ大学には、
行けそうもありません。
しかし、恋の力は、
おバカさんにこそ、
味方します。
あの人に、会いたい。
それだけで、私の心は、勉強へ。
純真な私の、
不純な動機。
あなたに遅れる事、一年。
頑張った私。
バスが滑り込むあなたの住む街。
ドアが開き、
懐かしい姿と季節を迷う雪。
白い、
あれは妖精の羽ばたき?
それとも、天空のパラシュート部隊?
今年の春、
あなたと同じ大学に、無事合格。
バスを降りる私は、
ひとりきりのパラシュート部隊。
あなたの胸へ
着地成功。
おわり💓
雪降る夜の贈り物 @ramia294
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます