ヒッツ・ガイストの場合①
『スキル【限界打破】を使用。
スキル【棺】のレベルの限界突破に成功しました。
スキル【棺】はスキル
サブスキルが解放されます。
サブスキル【
「ありがとよ」ヒッツは言う。「さて早速――
――スキル【廟】使用」
現れたのは、直方体ではない――ドーム型だ。ヒッツが手を動かすと、それに合わせてドームは縦に伸びたり横に伸びたり、尖ったり球に近づいたりと形を変えていった。
「おー、箱型に囚われなくていいのか」
ヒッツは言って、スキルを解除する。
「じゃあお次は――
――スキル【精靈の導き】使用」
ヒッツの言葉で、現れたのは――小さな光。
昼の太陽の下ではよく視認できないが、蛍のようにヒッツの周りを飛んでいる光がいる。
「オレも霊系スキルを手に入れられるとはなあ」彼は言いながら光に手を伸ばす。光は少し警戒しているようだったがやがてその指に止まった。
「霊系?」
ゲンは繰り返す。
「リーダーも持ってるだろ、【獵神の加護】――今は【
それなら同系のスキルをゲンは知っている。【劍神の加護】。彼の元友人にして元所属パーティのリーダー。彼が劍神と話しているところは見たことがない。リョーにしても本当は喋っていないのかも知れないが。「そういえば、二番目はフウさんじゃないんですね」
「オレは嫌いってこと?」
「いや、そういう訳じゃなくて――こういうのはアタッカー優先じゃないかと思って」
ヒッツのような
だから基本的にはやられる前にやる、というのが定石で、つまりレベル上げはアタッカー優先が主流なのだ。それに背くというのがまあ悪い訳ではないが、効率的とは言えない。何よりダブルアタッカーのこのパーティこそ『
「あー、あいつは最後でいいんだよ。それに経験値持ち越しで実質レベルは次の限界に達してるだろうし」
「持ち越し?」
ゲンは首を傾げる。
「……ゲンって【限界突破】ホルダーなのにこういうこと全然知らないな」
ヒッツは真似して首を傾げながら言う。「レベルの限界が来ても、経験値はレベルに関係なく蓄積されるんだ。だからフウにスキルを使ったら、貯まっていた経験値が加算されて、すぐ次の限界――レベル120になると思う」
ゲンは首を戻す。「それは――どうして、そんなにがんばってるんですか」
「これ以上は本人に訊くんだね」
ヒッツは質問をそこでせき止める。
ゲンは未消化ながらも「分かりました」と答える。「そういえば本当に突然なんですけど何歳ですか」
「二十四。フウが一個下で――ああ、リーダーの年齢を聞いたのか。思ったより若いだろ」
「若いというか、向こうのが年下でした」
「そうなんだ」
*
その日の夜。
一行は会館の分館である宿舎棟にて主に寝泊まりしている。二室借りていて部屋割りは片方にリョー、もう片方に他三名。
満月が南中する時間を過ぎた頃、フウは独りで部屋を出ていった。
ヒッツに聞いた話をずっと考えていたゲンは、眠らないでいると彼の外出に気がつく。ヒッツがいびきをかいて熟睡しているのを確認して、後を追うことにした。
フウは。
月が照らす丘で、独り、剣を振っていた。
剣だけではない。槍を。斧を。杖を。弓を。双剣を。薙刀を。あらゆる武器を振るっていた。
「フ――」
ゲンは声をかけようとする――と、後ろから誰かに肩を掴まれた。彼は振り向く。
「――リョーさん」
彼女は何も言わず首を振った。
「リーダーの言う通りだ」
ヒッツも後ろから現れた。「本人に訊けとは言ったけど、今は駄目だ。大切な時間だから」
「……はい」
ゲンは返事して、二人と共にその場を後にした。フウは古い仲間たちに感謝しながら、剣を振るい続ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます