第21話 第一回計画会議
「とういう訳で! 第一回天音っちをVtuberにしよう計画会議~! どんどんぱふぱふー」
無駄に明るい千代の声で開催が宣言された会議なのだが。
「なんで私の部屋!?」
「……ごめん、帰ろうか」
「あ、違うよ! 三島君は大丈夫だよ。勝手に連れてこられちゃっただけだし」
肩身が狭そうに、三島君が小さくなって私の部屋で座っている。なんだか緊張しているような感じだ。
クラスの女子の家に無理矢理連れてこられたら、当たり前の反応だと思う。
床に敷かれたカーペットの上に、小さいテーブルを三人で囲んで座っている状態なのだが、三島君は居心地が悪そうだ。
「三島君困ってるよ。もう、ちーちゃんが強引に頼むから」
「そう?」
「それに、ちーちゃんの家でもよかったんじゃない?」
「ダメだよー。私の家はお兄ちゃんと弟いてうるさいから! 落ち着いて話せるような状況じゃないよ。それに比べると天音っちの家は最高の環境だよ!」
「それは、そうかもしれないけど……。だったら喫茶店とか、どこか……。でも、話す内容が内容だし、あんまり人に聞かれたくはない、よね」
そう考えるとベストな選択な気もしてくる。
巻き込んでいる三島君の家に女子二人で押しかけるのも悪い気がするし。今日は父も仕事で家にいない。落ち着いて話せる環境であることは確かだ。
母は私が千代に続き今度は男の子を家に連れてきたことに驚いていたけど、父には言わないと微笑みながら言っていた。絶対誤解してる。後で誤解は解いておこう。別に二人きりでもないし、千代もいるんだから、話せばわかってくれる。多分。
そもそも、学校では落ち着いて話せないからということで別のところで話そうという話になったんだった。
それで選ばれたのが私の部屋というのが納得いかないけど、消去法で考えると他に良さそうな場所が無いから仕方ない。
「ごめんね、三島君」
「いや、別に」
私が声を掛けると三島君が更に縮こまってしまった。心なしか顔も赤い。よっぽど緊張しているに違いない。
なんか、本当に申し訳ない。千代は三島君が好きだと思うんだけど、なんでこんなにひどい仕打ちをするんだろう。
もしかして、ツンデレを目指している、とか?
アニメとかではよくあるけど、現実にやるのはどうなんだろう?
「ほらほら、相談しようよ、相談。あ、お菓子は持ってきたよ~。お邪魔するんだから、それくらいはね」
と、千代はテーブルの上にいそいそとお菓子を並べている。
「……ありがとう。あ、それ、私が好きなやつ」
「でしょでしょー、見掛けたから買ってきちゃった」
「ごめん。俺、何も持ってきてない」
「三島君は大丈夫だよ。むしろ来てくれただけでありがたい、というか」
三島君、肩身が狭くなりすぎて、どんどん小さくなって、そのうち見えなくなるんじゃないだろうか、とか謎な心配をしてしまう。
千代もこういうところでフォローすればいいのに。そういうところは気付かないらしい。
むしろ、なんかちょっと嬉しそうに私たちのやりとりを見ている。なんで?
まさか、声を聞いているだけで嬉しいとか、そんな領域に達しているんだろうか。少女マンガでよくある状態だけど、そんな心境なんだろうか。
その割には、早速ポテチを頬張りながら三島君に話し掛けようとしている。
「三島、動画作れるって言ってたよね」
「ああ。この前も言ったけど。つーか、なんで俺? 他にもパソコン部のやついるだろ?」
「ん? あー、んー。それは、三島が信頼できそうだな~と、思ったというか。口、堅そうだし。クラスでそういう話してなかった? 動画作ってみたいとか」
「作ってみたいというか、作ったことあるけど」
「マジ!? やっぱり私の目に間違いは無かった! 声掛けてよかった~」
千代、詳しく知らないで声掛けてたんだ……。ちょっとあきれる。
一応、あの後本当に動画とか作れるかどうかとかは聞いてはいたけど。
でも、確かに三島君はそんなに派手なタイプではないし、口が堅そうなのはなんとなくわかる。信頼できそうな顔もしてる。いい人そうというか。
「けど、さすがにVtuberは作ったことないからな?」
「でも、わざわざここまで来てるくらいだし、自信ないわけじゃないんでしょ?」
「それは……」
否定しないところを見ると、本当に作れちゃうんだろうか。
「うん、まあ。出来なくはないと思う」
「おお!」
「すごい」
千代はパチパチと拍手している。
私も思わず素直にすごいと思ったことを口に出してしまった。
「いや、一応調べてみたんだけど、簡単なやつなら普通に出来そうだから。機材もそこまで本格的じゃなくても、普通に録音できるやつとかあれば大丈夫そうだし。ソフトも無料のでよければなんとかなりそうだし」
さらっと三島君は言う。
「けど、どんなVtuberにするんだ? 確かに作ろうと思えば作れるけど、そこ聞いてなかったから」
「あ」
千代が間抜けな声を上げる。
うん、だよね。
「全然考えてなかった~」
三島君ががっくりと肩を落とす。
が、千代はそれを見ても負けずに言ったのだった。
「だから、それを考える会議でしょ!」
そうだったのか!
本当に進むのかな、この会議。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます