第19話 突然の告白!?
まだ心臓がドキドキしている。
さっきあったことのせいだ。
授業中だというのに、先生の言葉が意味のある言葉として全く入ってこない。
休み時間の終わりがけ。もうすぐ授業が始まる時間だと自分の席でスタンバイしていたら、どこかに行っていた藤沢が教室に帰ってきた。
俺の目には最初藤沢しか入っていなかった。誰か女子の後ろに隠れていて見にくいなとは思っていた。あいつがどいてくれたら藤沢の姿がよく見えるのに、と。
もちろん、じろじろ見たりしたら本人に気付かれてしまう。見ると言っても、横目でそっとだ。
けれど、何故かその願いは叶えられず、そいつはずんずんと近付いてきた。その後ろに隠れている藤沢もこっちに来る。
こっちの方に用事があるのか?
藤沢の席はこっちじゃないはずだ。
俺の方に来る用事なんて……。
いやいや、俺に用事があるはずがない。きっとこっちに何か用事があるに違いない。
だけど、近くで見られるだけで嬉しい。
そんなことを考えていると、
「三島」
誰かが俺の名前を呼んだ。俺は顔を上げる。
そこにいたのは、藤沢とよく一緒にいる吉田だ。いつも藤沢と一緒にいるので名前も覚えている。藤沢はいつも吉田のことをちーちゃんと呼んでいる。
「ちょっと話があるんだけど」
吉田が俺に何か言っているのだが、俺はその後ろにいる藤沢の方が気になってしまっていた。申し訳なさそうな顔をして、おろおろしている。そして、俺の顔をちらちらと見ていた。気にするなと言われても無理だ。
「ねえ、聞いてる?」
吉田がそう言ったとき、チャイムが鳴った。
「あ、やば、授業始まる。また後でね。あー、放課後でいいかな」
「ちょっと、ちーちゃん。そんな勝手に……」
「でも、そうしないと話進まないでしょ」
「えー」
「じゃあ、また後でね」
勝手に言い残して吉田は去って行った。
吉田の後ろにくっついていた藤沢がくるりと振り向く。目が合う。どきりとした。
藤沢が口を開く。
「いきなりごめんね」
それだけ言うと、藤沢も行ってしまった。
思わずその後ろ姿を追ってしまう。
なんだったのだろう、今のは。
後で、ということはまた話し掛けられるということだ。
また、藤沢も一緒なのか?
心臓がうるさい。藤沢の一言だけの声が、耳から離れない。
吉田と話している声が時々聞こえてくることはあるけれど、さっきのは俺に向かって話し掛けてくれた声だ。
正直、藤沢の声は可愛いと思う。もっと聞いていたと思う。もちろん、顔も可愛いけど。さっきの困っているような顔も可愛かった。
で、今は授業中なわけだが勉強なんか全く手に付かないというわけだ。
◇ ◇ ◇
「三島!」
放課後、本当に吉田が声を掛けてきた。
俺はもう、さっさと部室に行こうと逃げの体勢に入っていたところだった。授業中もまた話し掛けられるのではないかと、そわそわしていた。このままでは心臓が持たない。そんな訳で、とっとと逃げようとしていたのだ。
いつもなら同じパソコン部の原と一緒に部室に向かうところだが、今日は先に行くと伝えて足早に教室を出た。
それなのに捕まった。すでに教室を出て部室への廊下を歩いていたのに、わざわざ追ってきた。しかも見つからないようにわざわざ校舎の隅のあまり人が通らない方の階段を選んだのに、目ざとく見つけられた。
「おーい。さっき、放課後って言ってたよね」
俺の事情なんて全く考えていなさそうな、無神経そうな声で吉田が俺に話し掛けてくる。
しかも、その後ろにはさっきの休み時間と同じく藤沢がくっついている。藤沢はやっぱり申し訳なさそうな顔をしている。
藤沢が俺のことを見ているのは嬉しいのだが。
「待ってよ~」
問題は吉田だ。
なんなんだ、一体!?
「もう! ちーちゃん! 迷惑だよ、こんなの」
「えー、聞くだけだからいいよ」
吉田は藤沢と話ながら俺に近付いてくる。
いや、本当に迷惑だけど。藤沢が俺のこと気にしてくれてるのは嬉しいけど。
今はそれどころじゃない。
このまま部室まで女子二人が来てしまって見られでもしたら、他の部員に何を言われるかわからない。なにしろ、女っ気なんて全く無い男たちの集まりだから。
「何か用? これから部活あるんだけど」
仕方なく、俺は振り向いて答える。出来るだけ動揺は隠して冷静に、普段通りに。……普段通りに見えてるといいけど。
「おお、部活」
何故か、吉田はパッと顔を輝かせる。
「部活、真面目に行ってるんだね。よしよし。三島って、パソコン部だよね」
「そうだけど」
「なら、ちょっと聞きたいんだけど」
と、言ってから吉田は周りを見回す。それから、
「人は、いなさそうだね。こんな場所にいるなんて三島グッジョブ」
吉田はグッと親指を立てる。
本当になんなんだ?
人気の無いところがいいとか、意味がわからない。人気が無いところがいい……。
って、まさか告白!?
もしかして、藤沢が俺に!?
恥ずかしくて友達に付いてきてもらった、ってことか!?
話し掛けるのも恥ずかしくて、三島に頼んでる!?
自分で言えないから、仲のいい友達に言ってもらおうとしているとか……。
いきなり、そんな!?
心の中がパニックになる。
藤沢は吉田の後ろから恥ずかしそうに俺を見ている。
ちょっと待って、心の準備が!
吉田が再び口を開く。
「三島、Vtuber作れる?」
「は?」
が、吉田の口から出たのは俺の想像とは全く違う言葉だった。
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