二代目佐々木小次郎
柳生朝大日本帝国は柳生以外の全ての勢力に侵略戦争を仕掛け続けている。柳生皇帝である燕はこの世全ての知的生命体を柳生にするつもりである。だが、柳生の感染力にも限度がある。
無尽蔵に湧き出る燕の血液も全てを柳生に汚染するには時間がかかる。
西暦で換算すれば最短でも二千二百年頃までかかる。
兄上が自然に息を吹き返す方が早い。
俺は兄上が非柳生の人々の希望、救世主だという噂を流布した。柳生の脅威に怯える人々は縋るものを必要としていた。染みるように俺の噂は人々に広まった。いずれ蘇る兄上は確実に柳生と敵対する。そのとき人々から協力を得られやすいように。兄上が今度こそ幸せになれるように。
帝都にある俺の私邸に人を招く。柳生真祖を見張るものは居ないが、念には念を入れ、深夜に来てもらった。俺の
「彼が私の兄弟子である二代目佐々木小次郎です」
今の総理大臣として表向きの政治を任せている
大日本帝国における総理大臣の権限は少ない。柳生にとって些事である内政を任されている。柳生にとって軍事行動以外は些事であり、燕の一存で内閣での決定もひっくり返るので咎雛を含む閣僚たちは苦労している。
咎雛は佐々木小次郎の弟子であり、燕から直接柳生に感染した上級柳生剣士だ。日本では禁止されている薬物を南米から輸入しているため、非柳生圏にも顔が広い。今回の謀に必要な人材にも心当たりがあるだろうと思い、手を組んだ。
「二代目佐々木小次郎だ。依頼については総理から伺っている」
ペストマスクを被ったグレーのジャケットの男が二代目佐々木小次郎を名乗る。身長は百八十を超えるほどに見えるが、その背に背負われた大太刀は身長よりも長い。
あの佐々木小次郎を斬り殺し、二代目を襲名した非柳生の男か。この男ならば任せられるかもしれない。
「手筈通り俺を殺してミスカトニック大学まで運んでくれ」
俺は自動的に剣を抜く。俺の剣は自動の剣。俺の意志に寄らず、間合いに入ったものを全て切り捨てる。
「承知した」
兄上の為に俺ができることは、死ぬことしか見つからなかった。
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