【ドラゴン覇王の料理番】ただの料理好きJKが異世界召喚転移をさせられたので家族を捜し出してのんびりスローライフを楽しもうとしたら冷酷無慈悲なくせに甘党なイケメン皇帝の専属料理人に任命されちゃいました!
第16話 フェアリー温泉!? 弥生、異世界お風呂事情を知る
第16話 フェアリー温泉!? 弥生、異世界お風呂事情を知る
私、弥生、優雅な異世界お風呂事情を知りました。
この地方の国々の覇王である炎帝フリード様ん
「弥生、風呂入って来いって言ったんだけど?」
「はっ? なんですか? フリード様」
「俺ん
「ああ、はあ。嬉しいんですけど……」
家といってもうちの家とは格段の差があるだろう。
お屋敷だよね……。
しかも面識のない人がたくさんいそう。お屋敷で働く従者の方々とかメイドさんとかいっぱいいるのでは……?
私、家が洋食亭で小さい頃からお手伝いまがいのことをしてたからすっごい人見知りってわけでもないけれど、それでも大勢の人がいる初めてのお家でお風呂を借りるだなんて気後れしちゃうな。
「あの一人でお屋敷に……?」
「はっ? 風呂、俺と一緒に入んの?」
「ふぇっ!? い、い、一緒になんか入るわけないでしょ〜!! フリード様と入るとかありえません」
フリード様の言葉が唐突すぎて、目が点になっているだろう私……。
「そうだ! ああ、着替えがありません」
「あるだろ、お前。嘘つくんじゃねえ。ミントとバジルに着替えが入った魔法の小瓶を貰っていただろ?」
「あー、ソウデシタソウデシタ」
はははっ、忘れてましたよ。
「野営基地で香湯や石鹸湯に浸した布で体を拭くだけじゃ、疲れも取れんだろーが。汚れは落ちてもな。……ああ、悪い。そうか、気が利かなかった。屋敷への案内がいるか。弥生、すまん。俺はお前が図太い神経な女だと思っていたが、わりと繊細なんだな」
「……まあ、私は図太いほうだとは思うんですが、いきなり知らない邸宅に入って勝手にお風呂を借りるとかする不躾さと勇気が出ないんですけど。私、これでもうら若き乙女ですし」
「ふははははっ、たしかに。じゃあ、弥生。俺に付いて来い。だが、
「御意ですじゃ」
三人で向かったフリード様の別荘は、どどーんと構えたすっごーい立派なお屋敷だった。
もう、うちの何十軒ぶんはあろうかというほどの大きさ。
映画なんかで見るヨーロッパの貴族のお屋敷って建築様式、白の柱を基調として建つ建物は舞踏会なんかを催すのに最適に見える。
「はあ〜、すごいお屋敷ですねえ。フリード様のお家って。これが別荘なんじゃ、いつもお住まいのお家はさぞや大きくて荘厳なんでしょうね」
「まあ、ここより広いは広いぞ。俺が住んでんのは古びていても城だかんな。一応表向きは皇帝なんでね」
「し、城ー! そっかあ、普段はお城にお住まいなんですよね。ここのお屋敷でも充分凄いのに。……私、野営基地のあのテントにいるフリード様しか知らないからなあ。……驚いちゃった」
「そのうち城にもお前を招くから付いて来い。なに、そんなに大層なことないから臆するな。ふふっ、びびんなよ弥生。お前らしくない」
「私らしいってなんですか? ……私だってびびることあるんですぅ」
「俺を前に震えず意見したり本音を言えるのは、お前に勇気も度胸もある証拠だ。弥生を俺は過小評価も過大評価もしてないと断言出来る。俺の人を見る目は確かだぞ?」
ちょっと弱気になっていると、フリード様のあたたかい手が私の頭を撫でてくれる。
「はい……」
私は目の前のフリード様の優しい笑みに、じんわりと胸の奥がしてくるのを感じた。
横にはアレッドおじいちゃんがいて、フリード様みたいに柔和な笑みを浮かべている。
「いい娘御ですなあ、ヤヨイは。のう、フリード様?
「おっ、アレッドじじいもそう思うか。だがな、弥生は俺の妻にはならんと言う」
「なれんませんよ、ただの高校生の私なんて。炎帝フリード様のつ、……妻だなて無理」
「俺は弥生が良い」
「どうしてそう不意に甘く攻めてくるんですか」
「そんなの決まってるだろ? 俺がお前に本気だからだ」
フリード様に案内されてお屋敷に入ってきたけれど、メイドさんとか従者の方々は一人もいない。
あらゆるところに灯りは灯っているし、掃除が行き届いてるって感じでとっても清潔感を感じる。
お屋敷の管理がきちんとされているのに、これで誰もいないのはどうして?
「んっ? いい香り……」
清浄な風が吹いてきて花のいい香りがしてきた。
「ここの屋敷の建物と温泉は魔法契約しているフェアリーが管理している。人はいない」
「フェアリー?」
「花の妖精だ」
フリード様が視線を向けた先から羽根の生えた女性達がやってくる。
年は老若さまざまで、でもとっても眩い白い光を纏っていた。
妖精って小さい背の丈かと思ったけれど、私とそう変わらない。
きっと変身できるか、妖精にも種族で大きさが変わったりとかあるんだろうか?
数人のフェアリーは私達の眼の前に来ると、いっせいに優雅にドレスを指でつまんで裾を少し上げ挨拶をする。
私は慌てて、お辞儀で返したよ〜。
「フリード様。その方、
「ああ。弥生だ。フェアリーは耳が早くて助かる。細かい説明はいらねえな」
真ん中にいた一番風格のあるフェアリーさんがにっこりと笑う。
「はじめまして。フリード様の紹介に預かりました弥生です。今日はお風呂をお借りします。よろしくお願いいたします」
「まあまあっ! なんて可愛らしいっ! これは飾りがいがありますわね〜、ミハエル」
「うふふーっ。ほんとほんとっ! フリード様が女性を連れていらっしゃるのがなにせ初めてですからね。気合が入りますわ」
「妖精の皆さんは、私が男装していても女だって分かるんですね」
「ええ、分かるものには分かりますよ。それにミントさんとバジルさんの魔法の痕跡は馴染が深いので見破るのも簡単です。……さあさあ、それよりお風呂に参りましょう、弥生様」
「はっ、はい」
フェアリーさん達から絶えず花の香りがしてきてて、私は穏やかでうっとりとした気持ちになる。うーん、いい匂い。自然なポプリっぽくて強い香りでもない。
「弥生様。このあたりでは個人個人の家に大きな浴槽を備えたお風呂は無いのですよ。フリード様のお屋敷や貴族の家にはありますけどね。だから、入れる時に入っておいた方が良いわよ〜」
「そうなんですね。浴槽って貴重なんだ」
「魔法鉱石を自在に操る魔法や水を湯に変える魔法を扱える魔法使いが浴槽を作ることもありますけど。けっこう大変なので、ドワーフ達が造った温泉施設とかに通ったりする人間も多いんですよ」
「ドワーフ? あの物作りが得意だっていう妖精ですか?」
「ええ。いたって頑固で優秀で生真面目、かつ怪力な妖精種族でいっぱんてきな小人ですわ」
ドワーフって! わあ、憧れるなあ。
私は料理が好きだから、いつか私に合ったキッチン道具も作ってもらいたい。
お鍋にフライパンに包丁に……、Made inドワーフってカッコよくない?
私はうきうきしてきた。
そんな私を見ている視線を感じると、フリード様がくすくすと美貌をほんのり染めて笑ってる。
「フリード様。弥生様を着飾ってもよろしくて?」
「だめだ。弥生は男装させる」
「では、最大限に。男装騎士でも
「弥生様のご入浴、私達がお世話します。しばしお待ちになってね、フリード様、アレッド様」
私はフェアリーさん達に手首を掴まれ背中をぐいぐい押されて、お風呂に連れて行かれました。
いったいぜんたい、フェアリー温泉の露天風呂ってどんなだろう?
これはもうっ、期待が膨らみます!
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