第13話 黄色いロックバードの群れに興奮するフリード様!

 黄色いバナナ色のロックバードの群れがフリード様の庭園の近くの森の上空に出現した!


 けたたましいロックバードのギイイャァーッギャアッっと鳴く声。そこらじゅうで爆音級の吠えるような耳をつんざく木霊が響き渡り大騒ぎだ。


 フリード様と私とケルベロスくんは、グリフォンのリーフォくんの背中に乗せてもらって大空を旋回中だった。


 晩御飯の食材を求めて。


「こりゃあ良い! 好都合だな」

「好都合って、まさかフリード様……」

「あれがロックバードだぜ。ロックバードの肉が美味いのは知ってるよな? 弥生、お前も料理して食べただろーが」


 うわっ、ロックバードってあんなでっかい鳥だったんだ。

 鑑定した時は【ロックバードは食用になる。極めて美味なり。ニワトリに近しい。】とか出てたから、てっきり鶏と同じサイズ感だと思ってた。

 やはり。侮れないな〜、異世界!


「弥生。 あいつらはな、何種類かいるんだが……。うむ、毛色を見るにはぐれのロックバードっぽいな。しかしあれが群れているとは珍しい……。それに必死で逃げ惑っている様子。捕食対象になってんのか? 何かに追われてるかもしれんから、弥生は厳重警戒しとけ」

「警戒……」

「俺がお前を守ってやる。だが、空中だから落ちないようにリーフォにしっかり掴まっとけ」

「はっ、はい」


 あんな小型飛行機みたいなでっかい鳥を捕食しようとする『何か』って、なに!?


 私、体ががたがた震えてきそう。


 フリード様はニイーッと笑った。

 もぉ〜、こっちの気も知らずにすっごい楽しそうに。


 フリード様、目線はロックバードの大群をしっかり見据えている。


「ケルベロス、闘気を解放しろ」

「りょうかいでしゅ、フリードさま。まほうへんげでち」


 まっ、魔法変化?

 私がいぶかしんでいると、ケルベロスくんがリーフォくんの背中から空に飛び出した。


「あっ、危ないっ!」


 ケルベロスくんが落っこちちゃうよっ!


 私が慌てて手を差し伸べた先には……!


「あっ、えっ?」


 ちっちゃくて白い毛並みのチワワだったはずのケルベロスくんは、私の世界の二階建ての家ぐらいはあるおっきな黒々とした犬に変身していた。


「ケルベロスくんが巨大化した……!」


 しかも頭が三つあって、黒い翼が生え空を飛んでいる。


「びっくりちまちたか? ヤヨイちゃん」

「うん、びっくりしたー」


 お話をしてくるのは真ん中の頭の子だ。

 両サイドのケルベロスくんは「わふっ、わふっ」と相槌を打っている。


「ふっふっふ。ぼく、すごいでしょ?」


 得意げなケルベロスくん。

 フリード様がそんな彼を見て微笑んだ。


「さあ! 飯のためにお前達、ひと働きしてもらおうか」


 言うなり今度はフリード様がリーフォくんの背から飛んだ。


「あっ」


 フリード様のくうに投げた体をケルベロスくんが素早く掬い上げて、そのままスピードをあげてロックバードの大群に突っ込んで行く〜。


 そこからは光の速さでフリード様が剣を振るたびに、ロックバードが倒れて地面に落っこちていく。

 フリード様は魔法と剣で、ロックバードを攻撃する。

 あたりにはフリード様の左手から火炎が空中に放たれ、雷撃がバリバリっと音をさせながら剣からほとばしっている。


「……す、すごい。フリード様」

「ご主人様、凄いでしょう! もう三十羽は倒したかなあ」


 ケルベロスくんも負けていない。フリード様を乗せつつ鋭い爪で、戦おうと群がってくるロックバード達をやっつけて払い落とす。

 あんな大きい鳥を二人(正確には一人と一匹? 三匹?)で反撃の隙も与えずどんどん狩っていくだなんて……。


 私は圧倒されて、それから炎帝フリード様に見惚れていた。

 フリード様ったら、あんまりにも楽しそうです……。

 ニカアッと笑って剣を振るうフリード様は余裕で。私の視線を感じたのか、こちらを見て、ウインクをした。


「弥生ー! このロックバードで俺達に美味いもん作ってくれよな」

「はっ、はい! 腕によりをかけて作りますっ」


 でもいくらなんでもこんなにたくさんのロックバードは一度に料理も出来ないし、食べきれないよね〜?

 ……なにより、私……! ロックバードを捌いたりは出来ませんっ!


 ああ、そうだ。ローレンツ料理長達の手を借りよう。

 ローレンツ料理長は斧を持っているぐらいだから豪快に下処理をしてくれそうだし、狩りやその場での野獣の料理もお手の物だって言ってたよね?


 ロックバードのお肉で、何を作ろう……?

 鶏肉に近いんだから、唐揚げ? 竜田揚げ? クリスピーフライ? あとは、親子丼とか良いかも……。

 フリード様好みの味にしたいから、子供も喜ぶ下味が利いてるかりかりじゅわーな竜田揚げにしようかな。



 グリフォンのリーフォくんの背中に揺られながら私がレシピをあれこれ思案していると、急に頭上が暗くなった。


「あれ? 天気が悪くなってきたのかな」

「弥生ちゃんっ!」


 リーフォくんの焦った声がした。

 おかしいなと思って振り仰ぐと、私達のはるか上空に太陽の光を遮りロックバードを口にくわえた……とんでもない生き物が現れていた――!!

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