【覇王の料理番】ただの料理好き女子高生が異世界召喚転移をさせられたので家族を捜し出してのんびりスローライフを楽しもうとしたら、冷酷無慈悲なくせに甘党なイケメン皇帝の専属料理人に任命されちゃいました!
第1話 美貌の持ち主で冷酷で怖い炎帝フリード様は、実は甘党お子ちゃま舌だったのです
第1話 美貌の持ち主で冷酷で怖い炎帝フリード様は、実は甘党お子ちゃま舌だったのです
私は突然、爆発事故に巻き込まれた。
耳を覆わなければならないほどの大きな爆音が何度かして建物の天井は落ち、私達の頭の上には瓦礫が崩れてきた。
死ぬ――っ!
やだ、死にたくない!
お母さんとお姉ちゃんが一緒だったのに、気づけば私一人で見知らぬ森の中にいる。
私、さっきまで人がたくさんいて賑やかなショッピングモールにいたのに!
今は鬱蒼としたジャングルみたいなとこにいる。
人の喧騒はなく、獣や鳥の声や川のせせらぎらしきものだけが聴こえる大自然。
目を覚ますと、そこは異世界だったの。
だって、信じられないような光景が眼前に広がっているんだもん。
上空にはドラゴンが何匹も飛び回って、咆哮をあげていた。
そして――。
「お前が
女三人って、きっと私とお母さんとお姉ちゃんのことだよね!?
んっ、セイロンって誰?
「はっ? はあ……」
私はイケメンを見上げた。
この人! イケメンだ。かなりの格好良さだ。
「立てるか?」
「すいません。立てそうにありません。こ、腰が抜けたみたい」
私の周りには、おびただしい数の魔物が斬られ倒れて死んでいる。
「あ、あなたが全部殺したのよね?」
私に手を差し伸ばしているこの端正な顔立ちの人は、さっき物凄い速さで魔物たちを次々と刀というか鎌みたいな剣? で倒していった。
「殺した? まあ、退治したが、それが? やらなきゃお前は今頃あいつらの飯になっていただろうなあ」
「そ、そうですよねっ。私、魔物に食べられちゃうところだったんだ……。あのっ、助けてくれてありがとうございます」
「礼には及ばん。魔物退治は俺の仕事の一つだからな」
私は夢のような世界に来てしまった。
だってここ、ラノベとかアニメとかで見たことある魔物がうようよいるのだ。
私はこれが現実かと疑ったけど、この人が助けてくれる前に、緑色の小さめゴブリンに噛みつかれたのがめっちゃ痛かったから、ぜったいに夢じゃない!
噛まれたとこから、血がだらりだらりと流れていく。
魔物は人間を襲う。
襲わないのもいるのかな。
だけど、なんかちょっと可哀相な気もした。
「魔物を憐れむのか? これから白魔法を扱う僧侶に手向けの魔法を施されれば、魔物の体は跡形もなく消滅する。魂は天に昇るだろう。なあに、あとで呼ぶさ。情けはかけるな、危険な魔物は滅せねば力の弱い人間がどんどん殺されるんだぞ? ……お前、それより傷の手当をしてやるから、あの馬に乗れ。俺のテントに一緒に来い」
「あの……」
「口ごたえは許さんぞ。俺は炎帝フリードだ。……
「だっ、だって!」
私は怪訝な顔をしたフリード様に助けられ、愛馬に乗せられた。
「ごめんなさいっ! ……実はあの……、失礼ながらあなたがお子ちゃま舌だって。甘党で子供が好む料理好きって、肩に書いてあるんだものっ!」
「お前っ! どうして俺の秘密を……!」
なんか私の手が淡く光っていて、フリード様の「弱み」が見えてしまったのだ。
「……料理人の一級鑑定スキルだな」
「鑑定スキル? なんですか? ソレ」
「お前のやってんのは高度な魔法だ。高等料理人限定のな。こっちに来る時に女神様にでも魔法力を貰ったか?」
……やっぱ、異世界だ。
私には縁のないファンタジーな出来事だって思っていたのに。
でもその実は巷ではこの並行世界への移動旅行が流行っていて、実際に異世界召喚や異世界転生に遭った人がいたって噂になってたっけ。
まったく違う世界に行って帰って来てる人がいるから、騒ぎになっていた。
古くは、神隠しに浦島◯郎や竹取◯語だって、異世界を行き来した話だって学校で習ったしね。
どんなきっかけや仕掛けで異世界旅行が出来るかだなんて、あっちの私の世界の住人には魔法が使えないから分かりっこない。
それに、戻れるかどうかの保証なんてないんだ。
私は馬の上、フリード様の前に座らされている。
振り仰ぐと、精悍ですっごい美貌の彼に見惚れた。
「なんだ? 俺の顔に何かついているか?」
「あり得ないぐらい格好いいから目にやきつけとこうかと思って」
「あっ。えっ、あっ? ……はあっ!? お前、斬られたいのか?」
照れてる……。
なんか可愛い人だなあ。
この人が怖がられてるだなんて、何故だろう?
私には追加で鑑定が見えた。
【――
【追記〜フリードは孤独、独りぼっち。寂しがりや〜】
え――っ。
最後の「孤独」とかって……。
料理人鑑定スキルって、こんなことも見えちゃうの?
なんか恐ろしいな。
……隠せないじゃん。人間誰しも見せたくない事、あるよね。
「ごめん。フリード様。余計な鑑定が見えてしまいました。私は誰にも話しません」
「……お前は正直な奴だな。不思議だ。出会ったばかりだというのに、お前とは初めて会った気がしないのは何故だ? 心を覗かれ、秘密を知られても腹が立たない。……お前の名前を聞いていなかったな。なんという?」
「
「ヤヨイか。面白い名だな」
「面白いって」
まあ、そうか。
異世界の人たちは名前も外国の人たちみたいにキラキラしてそうだもん。
フリード様は私の肩にそっと触れた。
「
「ちょっ、ちょっと待って! フリード様も何かしらの鑑定スキルをお持ちで!?」
「ププッ……。【
「なんつー、破廉恥なスキルを持ってんですかっ! ひどいっ、恋愛観が分かるの?」
「恋愛観というより、人と為りと言うやつかな。俺はね、寝首を掻かれるわけにはいかないのでな。自分にとって悪か善か、害を成すか否かが鑑定スキルで見えると言っておこうか? だがこれは誰にしも対して使えるわけじゃない。相手が防御の強力な者には効果は無し! それに人の心は変わる。変遷はやはり接して感ずるべきだろう? だから鵜呑みに出来ず万能ではないと俺は注意して使うがな」
「それって! 私、……私が隙だらけってことですか?」
「まあ、そうとも取れるが。俺はお前を憎めない相手だと捉えた。つまりは信頼に足る人物、としとく」
鑑定スキルの鑑定結果に、偽りは出来ないのかな?
この人には私のこと知られすぎたくない。
――私だって、女子だもん。
隠したい感情とかだってあるのに。
「弥生、怪我は痛むか?」
「あっ、うん。はい」
フリード様は、数秒思案顔だった。
「俺がさっき止血したが、結構血が流れて弥生の体から失われている。貧血になって倒れでもしたら大変だし、何日も気を失われては厄介だ。急ぐぞ、しっかり俺の腕に掴まっていろ」
「はっ、はははいっ!」
馬はスピードを上げて駆け出した。
私はちょっとぽ〜っとなっていた。
だって、フリード様って格好いいのよね。風に揺れた金の髪がさらさらで切れ長の漆黒の瞳が凛々しい。
あれ? くらくらするのはフリード様がイケメン過ぎるせいじゃないらしい……。
ヤバい、貧血かも!?
私の目の前が真っ暗になってきたー。
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