第6話 プロジェクトの狙い!?最初の犠牲者

 

 少女達の悲鳴が響く。


「こっ殺し合い!? そんな事できるわけないでしょう!?」

「いやー助けてママー!!」

「ふざけんな!」

「誰か助けて!!」

 

 叫び声、泣き声、怒声が響き、パニックが広がっていく。


『静かにしてください~最後の一人・吸血姫になると膨大な力を得る事ができます・人間など血の奴隷にして意のままに操る事ができると言われている……それこそがプロジェクトの狙い!』


「人間を……?」


『各国の主要人物を吸血姫が操れば……世界平和が訪れる』


 デスマスターは嬉しそうに語り続ける。

 

『我が国の思想の元であれば・戦争もおこらない・そして影の支配者として我が国はますます繁栄するでしょう・我が国民も安泰! まぁ吸血姫は我々が管理をする事になるので完璧な自由はないかもしれない……ですが』


 チッチッチッと指を振る。


『一人生き残った吸血姫には・莫大な報酬を与えましょう~~~』


「なんだって」


 真莉愛がピクリと反応する。


『我が国の最重要秘密兵器ですからね~! お姫様なわけです! 今の暮らしよりも豪華なお家! 豪華な食事! なんでも買えるよ~? 推しの動画配信者や芸能人と会う事だってできちゃうし・なんなら奴隷にして好きなだけ傍においてもいいし、ゲームのガチャも課金一千万円も夢じゃない! やったー! どうです魅力的でしょう~~』


「ふぅん……」


 真莉愛がニヤリと笑う。 

 お嬢様学校ではあるが全員が富豪なわけではない。

 優笑達も、ごくごく普通の一般家庭だ。


『ねーデス・ゲームやりたくなってきたでしょ・やっちゃえやっちゃえ~』


 ゲームマスターは、手を叩いて笑い出す。


「い、いやよ! 私はそんな事したくないわ! 冗談はやめてよぉ! もうやだ! 帰る!」


 静まり返ったなか、一人の女生徒が立ち上がって騒ぎ出すと、一気に伝染し皆が叫びだした。

 優楽も叫びだそうとするのを、優笑は慌てて口を手で押さえて止めた。



『うるさいですねぇ……はい! では見せしめの処刑! ズドーン!』



 ゲーム・マスターの声に合わせて壁から何か発射される。 

 最初に騒ぎ始めた女生徒がドン! と衝撃音と共に身体が吹っ飛んだ。


『我々の研究成果、スペシャルな銀の弾丸で~す』


 一瞬で静まり返る。

 パジャマ姿の女生徒の背中から血が吹き出したかと思うと、一気に灰が舞う。

 灰は一瞬で塵のように消えていき、穴の空いたパジャマだけが後ろにいた女生徒にバサッと落ちた。




 シーン……と静まり返る場内……。





『えっと、今のはぁ三年生の藤森真奈美さんでした~~ご臨終ですね、ハイさよなら』




「きゃあああああああ!!」


 また女生徒の叫びが、一気にあがった。


『もうもったいない事したくないからさ・お前ら静かにしろと言っているんだよぉ!』


 ゲームマスターの怒声が響いた。


 あの弾で撃たれたら……灰になって死んでしまう!?


 皆が自分の口を押さえ、涙を流し、震えながらゲームマスターを見る。

 優笑と優楽も震えながらパニックにならないように必死でお互いの背中を撫でた。

 

 怖い! 怖い! 怖い!!


 ブルブルと震える優笑。

 恐ろしい過去の記憶が蘇りそうで吐き気がする。

 

「優笑ちゃん……!」


「だ、大丈夫、大丈夫、優楽、大丈夫だからね」

 

 何も大丈夫ではないが、パニックにならないようになんとか深呼吸をした。

 すすり泣く声だけが場内に響いている。

 

『それでは・ちょっと提案がありまして~本来・吸血鬼っていうのは同族同士でテレパシーみたいなものが使えるようなんですよ~』

 

 何事もなかったように、ゲームマスターはまた話し出す。

 

『ゲーム進行にあたって、こっちからの指示をですね・あなた達に伝える通信役を一人選びたいと思います』

 

「通信役……それならデス・ゲームに参加しなくてもいいわけ!?」


『はい~通信役になっても雑魚吸血鬼ちゃんの貴女達はまだ力が足りないので・こちらで用意した増幅器を使用しますけどね』


「私にやらせてください!」

「私も私も!」

「一人なの!? お願い! 人数をもっと増やしてください!」

「通信役にしてください!」


 必死で手を挙げる女生徒達。


「優笑ちゃん……」


「優楽……ダメよ。なにか嫌な予感がするの」


「うん、私だって優笑ちゃんと離れるなんてイヤだもん」


 通信役を希望する女生徒のなかで罵り合いや自分をアピールするものが現れた。

 皆が助かるのに必死なのだ。


『ん~~~~んじゃあ・君でいいや・そこの真ん中の元気の良いロングヘアの子』


「やった! やったわぁあああ!」


 指名され泣いて喜ぶ女生徒。

 そこに扉が開いて、銃を持ち防護服と防毒マスクを着用し武装した兵士のような二人がストレッチャーと共にやってくる。


『はい・君は一年生の中原 里菜さんね・じゃあさっさと処理して』


「処理? きゃあ! 何するの!?」


 一人がナイフを取り出すと、女生徒を押さえつけ足の腱を切ったのだ。


「ぎゃあああああ!」


 すぐに目隠しと猿ぐつわを噛ませられ、彼女は運び出されていく。


 『テレパシー実験体に逃げられたら困っちゃうからね』

 

 実験体!?

 あんな対応をされるなんてと、皆が青ざめる。

 しばらくすると、ゲームマスターの背後に先程の女生徒がストレッチャーにバンドで縛り付けられた姿で現れた。

 目隠しをされ、猿轡ぐつわのまま、腕には点滴を何本も刺され頭に電極や色々なものを付けられた悲惨な姿で現れた。


「ひどい……あんな事するなんて」


「優楽、見ない方がいい……」


『テストするから・やってみて・はいテ・ス・ト~~~』


【いやぁあああああああ!! 助けてけええええ!!!】


 通信役の少女の叫び声が頭に響き渡り、皆が頭を押さえる。

 脳内に響く絶叫に、吐き気でえずく少女もいる。


『こらこら~テ・ス・ト。ポンコツだったら困っちゃうよ』


 ポカリとゲームマスターが電極のついた頭を拳で殴った。


【ああああああ、テストテストテストテストテストうあああああああああああああテストテストテストテストテストテストテストテストテストテストテストテスト助けてぇええええええええ】


「もう聞こえているわ、やめさせて!」


『はーい・もういいよぉ』


 絹枝の言葉で機械がオフになったようだ。

 皆がホッとした顔をする。


『それではデス・ゲームのルールを説明していきましょう』

 

 何を言っても、もうデス・ゲームは止まらない。


 

 【生存者:30名 死亡者:1名・藤森真奈美 通信係抜擢:1名・中原 里菜】

 

 

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