第12話 既視感
「………………」
視線の感じる方向には、
「い、いちごさん?」
無言でこちらを見ているいちごさんがいた。
「え?いちごちゃん?」
その私の視線を追って、もーねも気がついたようだ。
「あ、あのいちごさん」
「何どうしたの?」
「あの……少し後ろ向いてくれない?」
「別にいいけど」
いちごさんが後ろを向く。すると、先程まで気色が悪いほど感じていた感覚が消えた。そして、
「あのもういいですよ」
そう私が言うと、いちごさんがこちらの方を見る。
「……っ‼︎」
するとどうだろうか。また気色が悪い視線を感じるようになった。
「………………」
流石に偶然だと信じたい。流石に偶然だよね?そうだよな?
何度も何度も自分に問いかけ、何度も自分に言い聞かせた。
流石にね?流石にだよな……。
認めたくなかった。というか信じたくなかった。
この視線がどう言ったものなのか、心当たりがあったからだ。
「あっ、あえかちゃん」
私はビクッと体が震えてしまった。
そこにいたのは、
「胡桃さん:
だった。
「って、みかんといちごじゃない」
「ああ……そういえば胡桃さんの同期でしたね」
私は胡桃さんに事情を説明した。
「なるほどね……あんたの巻き込まれ体質はすごいもんね。巻き込んだ側が言うのもなんだけど」
「本当にそうなんだよな……一難去ってまた一難とは言うけど、早すぎなんだよな」
「本当に災難ね……」
と言うような他愛もない話をして、
「私もついていっていい?」
と胡桃さんが提案してきた。
「まぁ、別にいいけど……」
と私は一言でOKした。理由は単純。財布と言えばあとはわかるな?
みんなで移動している最中のこと。
「ねぇねぇあえちゃん」
「ん?どうしたのもーね」
もーねがコソッと話しかけてきた。
「胡桃ちゃんがきたときに一瞬体が震えたように感じたけど…………どうしたの?」
「いや………さっきの視線の既視感に心当たりがあってさ」
「心当たり?」
「胡桃さんがはなさんに嫉妬させるために私と協力して演技してた時があったじゃん?」
「あぁ………それね」
もーねが握り拳を作っている。なぜだ!?
「その時、胡桃さんが迫真の演技をしてたんだけど、私を襲った時の視線と同じだったんだよ」
「…………殺す(ボソッ」
「え?なんて?」
「なんでもないよ」
もーねがニコッと笑う。なぜか目は笑っているのだが笑っておらず、死んでいた。
「それで…………胡桃さんのことを考えてたから、ちょっとね?」
「なるほど」
「信じたくないんだけどね………」
流石にね?
もーねのおふざけで私はお腹いっぱいなのに………。
もーねが毎日おふざけスキンシップが激しすぎてこちとら動悸を抑えるのに苦労しているのに…………もう1人なんてことになったら…………。
私たち2人がこそこそと話をしていると、
「どうしたの?」
後ろにはいちごさんがいた。
「…………っっ…..み、みかんさんは?」
「なんかまたコインが飛んできて、あそこでぐったりしてる」
「えぇ……………」1
「で?なんの話してたの?」
その妖艶な笑みを浮かべるいちごさんの目は、先ほどのもーねと同じく目は笑っておらず、死んでいた。
「えっと…………」
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