第4話 また始まる予感

この時の自分は妙な胸騒ぎがしていた。そして頭痛も。

この胸騒ぎは初めてではなかった。もーねと初めて出会った時からだった。

もしかしたら….いやきっとそうだ。

心と……そしてなんども私を助けてくれたこの頭が言っているのだ。

何か……それも大きなことが起きると。


………この胸騒ぎがしたのは上の通り、もーねと出会ったあの日々の時。

その時は、もーねも、私も、死ぬ危険があった。

誰かが死んでもおかしくなかった。

2回も私は撃たれた。それも危ない場所に。

もーねにはトラウマになってもおかしくないものを見せてしまった。

誰だって、知り合いが血をドクドクと大量に流し、地に伏せていたらトラウマになるだろう?


この胸騒ぎと頭痛は次第に大きくなっていく。1回目の時もそうだった。

そのせいで、もーねには強い言い方をしているのかもしれない。

疲れと胸騒ぎと頭痛。考えることが多すぎて頭がパンクしそうだ…..するわけないけど。


前回は、頭が見せた正夢と言っても差し支えない夢があったから私は死ななかったし、みんなを助けることができた。ある意味、予知。未来を見てきたと言った方が正しいのかもしれない。

しかしそれはあくまで、自分が荒木颯太だった際の夢だ。それが逢崎あえかに置き換わっただけだったからなんとかなった。

時空というのは、よく修復力があると聞く。そのおかげで今まで夢にないことをしてもそこまで影響はなく夢通りだった。しかし、時空というのは修復力があるだけなのだ。

修復できないところまで壊れてしまえば、もう修復はできない。時空には意思などないのだ。

時間を戻したり、改変させたりするのはあくまでも生き物。

修復という性質しか持たない時空には、壊れた未来を直す手段はもうない。


本来であれば、荒木颯太であれ逢崎あえかであれ、もーねとはファンという線で分けられている関係性だった。

だから夢通りだった。しかし、その線引きは壊れてしまった…..壊してしまった。

もーねと友人。それは夢には絶対になく、それはもう気のせいなんて言える代物ではなかった。

例えば知り合いだったらよかったかもしれない。それだったら気のせいと言って修復できた。


もうここから先の未来は私にはわからない。

だからもーねが誘拐されても殺されそうになっても私はわからない。


この頭痛が。この胸騒ぎが、何かの間違いであると願いたかった。

けれどそれはできない。頭も心もわかっているのだ。これは間違いではないと。


どうか……どうか誰も傷つきませんように。

それだけをただただ祈っていた。



「….ただただ祈っていた….っと」

私は小説を書き上げて時計を見ると、お昼ごろから始めていたのに気がつけばもう夕暮れになっていた。

「考えすぎたか…..」

少々考えすぎて、時間があっという間に過ぎていたらしい。


昨日の夜はもーねが色々とやってきたので、寝ることができなかった。(もちろん毎日ほとんど寝てないけど)

そのせいで、朝方は寝ることに時間を費やしたため、執筆はお昼ごろからになったのだが……。

「そういえば、めちゃめちゃ大きいイベントに大量に呼ばれていたなぁ…..」

今までもそういうイベント参加者に選ばれたりしていたらしいのだが、あの時は忙しかったり、怪我というか重傷を負ってぶっ倒れたりしていたため、遠慮してくれていたらしい。それに関してはマジ感謝。

しかし、今は平穏な時間が訪れているので、そういうイベントの招待が大量に来ていた。

「………どうしようかな……」

そういうイベントには憧れるけど、自分が頭がいいのは本気を出した時だけだし、過度の乱用。もとい、非常時以外の使用はラノベ先生に警告されているし……。

まぁでも興味はあるから行ってこようかな。どうせ暇だし。絶対答えなきゃいけないわけじゃないし。

カタカタカタと、返信を書いていく。

「えっと……招待ありがとうございます……ぜひ参加したいです…っと」

送信してからものの数秒で返信が来た。流石に早過ぎてびびった……。


『お前らー。今日も<あなたとわたし>プレイしていくぞー』


→昨日はお楽しみでしたね

→『昨日はお楽しみだったようだね』

→『ゲームはいいから、昨日の夜について話してもらおうか』

→お楽しみだった?


というコメントが大量に投下された。

『はぁ?んなわけないだろ。てかそれ、宿の主人とか女将さんが言うセリフだから』


→もはや我々は宿主みたいなもんよ。

→『俺らの想像力を舐めるなよ?』


『いやいやいや……想像力を舐めるなって……どゆことや。意味不明なんだけど。いつから私の実家は紅枝の宿になったんだ』


それからも野次が飛ばされたが……。


『よし。みんなブロックするか』

という私の発言によって紅枝たちは一切の野次を飛ばさなくなった。

(なお、住所特定するよ?という発言はかえってご褒美になってしまい、さらにヒートアップするため二度としないことを決めた。なお俺の推しであり、友人の外国系Vtuberで実験した結果である)


操作の合間に私が

『そういえばさ』

と言うと、みんなが?をコメントした。


→?

→『?』

→どした?


「ちょっやばっ」

私がプレイに集中しているためにそれだけしか言わないためにみんなが不思議がっていた。(Vtuberあるある)


そしてひと段落するとまた話し始める。

『それでさ、さっきの続きなんだけどさ。Mytubeって動画とかの視聴率とかって見えるのよ。そこで男の人と女の人の視聴率とか登録者の割合とかも見れるんだけどさ』


→うん

→『そうだね』


『私のチャンネルの登録者と視聴者でさ、男の人と女の人の比率がさ、2:8ってどゆこと』


→え?

→『ん?』


衝撃の事実である。しかし、数値を見れば、男の人が19%、女の人が81%なのだ。

いつから私のチャンネルは百合チャンネルになったのだろうか。言っちゃなんだけど、女の私のチャンネルが男の人より女の人の方が需要あるってどゆことなの。


→『俺は男だけど』

→『私女だよ』

→俺は男だよ

→あたし女の子


「そっか……!日本語だと、くそジェンダー配慮ないけど、俺とか私、そうよねとかそうだ、とか男口調とか女口調とかである程度わかるじゃん?もちろん、私みたいな男口調の女の人とか全然いるけど。でも、英語だと<I>とか<my>しかないから……わからないんだ」

つい、日本語で喋ってしまった。


→確かに

→そうじゃん


『あと、コメントしてない人が結構いるけどその割合も女性が多いんだと思う』


→『なるほど』

→『喋ってもいいんだよ?みんな』


『ま、まぁ、とりあえずそれだけだから』

それから、ゲームを進めていったのだが、野次とみんなの驚愕のコメントにより、前回から2%までしか進まなかった….。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る