第3話 VTuberのあえか

『いやいやいやいや……』

私はなんとか乱入してきたもーねを追い出…………せずにもーねにくっつかれたまま風呂にいた。


※結構お風呂はでかいです。


『別にいいじゃん!』

『……と容疑者が供述しており……』

『誰が容疑者だ!!』

『あのね?私一応羞恥心はありますし、裸族という訳でもないからそういう耐性もないのよ』

『だから?』

こりゃだめだ……。

しかし、さすがにここまでお湯に漬かっているのに追い出す訳にもいかず……。

渋々もーねとお風呂に入ったのだった。


「いや〜いい湯だったねぇ…」

『……そうだね』

いくら推しと言えども、流石に一緒にお風呂は、推しと一緒にお風呂に入っているという感動よりも気まずさが勝つ。


……そういえば最近もーねに対して、推しとして接するというより友達として接するようになってきたかもしれない。推しは推しなんだけど……最初の頃はここまでフランクではなかった気がする。

……覚えてないけど。



『今回は新作ゲームをやっていくぞ!』


今やっているのは3日に1回はしている、英語配信である。やはり日本語だけだと新規の人達が困ってしまうという事例が起きている。

というのも、


もーね=外国系VTuber


であり、そのもーねと仲が良く、コラボをする際にもーねの視聴者が来るわけなのだが、もちろんもーねの視聴者の6割を外国人が占める。もちろん日本人も多いが、やはり割合で見れば外国人の方が断然多い。そのおかげで、外国人からもRTなどが起きる。もちろん私が英語をしゃべれるからでもあるが。

外国人のフォロワーは基本的には外国人だ。

外国人がRTなどをすることにより、その外国人のフォロワーの外国人が私のことを知って配信に来るのだ。毎回の配信で外国人の新規さんがやってくる。その度に私が流暢な英語を話すとびっくりするのだが……。

だから、私自身の紅枝達も外国人がもーねほどではないがいるのだ。

というわけなので、新規の人や外国人の〈紅枝〉のために英語での配信を度々しているのだ。


『今回していくゲームはこちら!』

私がマウスをカチッとクリックすると、画面が切り替わる。

『わたしとあなた です!』


わたしとあなた……今とてつもない人気が出ているゲームだ。これは、一人称の主人公(女の子)と三人称の視点をもつ主人公(男の子)を上手く交互に操作しながら謎を解いていくゲームだ。謎を解くための20種類以上のアイテムがあるが、一人称で使うのと三人称で使い方が変わるのだ。三人称だから、一人称だからできる使い方がある……というゲームだ。


→がんばー

→これってSKの新作か!

→『ワクワクですね』


『これってSKの新作……そうだよ!』

リアクションをする前に、どのコメントに対してリアクションするのか読まないといけないため、意外と配信者はよく喋る。

おかげでやりすぎると喉が枯れる。

(喉枯れ 現在5回)


『……どうやってここやりゃいいんだ……?』


→あのアイテムだよあのアイテム

→『そうだよあのアイテムだよ』

→いや〜こんなのも分からないかぁ〜


『こいつら……‪ムゥッ…』

たまに紅枝達が煽ってくるのがウザすぎる……。


『あと少し……みんな!これどうしたらいいと思う?』


→そこは無理だって

→『クリア出来たら切腹』

→『無理だろ』


『切腹って言ったな???』


→『紅枝全員で切腹』

→『乗ったぁ!!』

→『俺も』

→『俺も俺も』


といった感じで紅枝がさじを投げることもしばしば。しかし、私がクリアすると……。


→『ま!クリア出来て当然だよな!』

→『いや〜クリア出来てよかったねぇ……』

→ま、クリアすることなんてわかってたし

→クリア出来ん方がおかしいでしょ


『おい』


といった感じで視聴者達が手のひらを一瞬で返してくるのだ。


『切腹するって言ったよなぁ!?』


→『切腹するとは言ってない』

→そうそう。するとは言ってないよね

→俺もするとは言ってないし、乗るとしか言ってないから……。


こいつら……っ……。


深夜1時

『ということでね。進捗7%まで行ったし、4時間ぐらいやってるので今日はここまで!みんなおやすみ〜。おつあえでした〜』


→おつあえ〜

→『おつあえ』

→『おつあえ〜』

→おつあえー


Tips

英語圏の人たちは英語でOtuaeと書いている。


『はぁ……まさかのもーねが泊まりとはねぇ…』(ミュートし忘れ)


→ええええ???

→やっぱりできてやがるのか…(意味深)

→おめでとうおめでとう!!!!


『あ…ァァァァ!?!!?』

やばいやらかした……。ミュートし忘れた…。

『はいはいはいはいみんなおつあえ!』

私は急いで配信を終えた。焦りすぎて、EDを流し忘れた。


それからコメント欄をチラ見すると、みんなしてお祝いのメッセージを書いていた。

全然そんなのじゃないのに。もーねのスキンシップが激しいのも元々そういうスタンスで、同じ事務所の子にも絡んでたし、外国人というのもあるのだろう。


「もーねが自分のこと好きとか……んなわけないし」


そして、もーねのことを恋愛的に見れるかって言ったら……………分からない。今まで推しとしか見てなかったから。……無理に抑え込んでるだけかもしれないけどな。


「さてと…………小説書くか…」

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