第5話 『スキー台』と『月が綺麗ですね』はセットで覚えろ

この話には、1期の重大なネタバレが含まれてます。

これは自分でもよく考えたわ…(自画自賛)と思うほどのものなので、見てない人は一度見てから、こちらを見るのをお勧めします。



これより下が本編です。







「ねぇ胡桃さん」

「何?」

「自分たちがさ。やったあの演技あるじゃん?」

「あー。私がはなを嫉妬させようとか言ってあえかを巻き込んだあれ?」

「そうそう」

「それがどうかしたの?」

「いやさ、あんなことをしたのに、何もなしなのは割に合わないんじゃないかなって思ってさ」

「えー、今更?」

「なんや今更って。睡眠薬とかいう体に悪い薬も飲んで、数時間監禁させられた挙句に、偽デートの費用が全部私負担ってどゆことなの」

「いや、応援するって言ったのあえかじゃん」

「うっ……」

「私がキューピッドになるんだーとか言って手伝ってくれたじゃん」

「そうなんだけど、なんかお礼がないと……と思ってさ」

「うーん。まぁ確かに、あえかは色々と頑張ってくれたもんね」

「うん」

「……じゃあ、何か欲しいものでもあるの?」

「いんや、ないよ」

「なんじゃそれ…」

「そうだなぁ……今週末出かけようぜ」

「えー……ちょっと週末は忙しい……」

「そっか……残念だなぁ…」

「いやぁ、ごめんねぇ…」

「じゃあ、はなさんと一緒に行ってくるか」

「え!?!??!?!?!?!?!?!?」

「いや、声でか……」

「そういえば、週末の用事全部キャンセルになってたわ〜」

「あ、そうなの?」

「うん。なぜだかキャンセルになってね〜」

「じゃあ、胡桃さんもいけるってこと?」

「うん!」


よし、計画通り……。


その頃、木もれ日では。



「先輩!胡桃ちゃんが週末の企画をキャンセルにするって言い出したんですけど⁉︎」

「え!?嘘でしょ!?」


大騒ぎになっていた。


後日、あえかは木もれ日が提案した、コラボ企画をするということでなんとか許されたのだった。



「で?どこに出かけるの?」

「ん〜……どうしよっか」

「えぇ………ノープランなの?」

「いや……ちょっとね……」

「ん?どうしたの?そんな歯切りの悪い言い方」

「じゃあ、ちょっと怒らないで聞いてくれる?」

「大丈夫」

「あのね……」


話すこと数分。


「はぁぁぁぁぁ!?!?!?」

「怒らないでって言ったじゃん」

「いやいやいや、あんた何考えてんのよ!」

「いやしょうがないじゃん。私は金をそんなに使いたくないんだよ!」

「いや、あんたスパチャたくさん貰ってるでしょ?」

「いや、ファンの人がくれたお金なんだからむやみやたらに使いまくろうとは思わないのよ」

「まぁ確かにそうだわ。私もスパチャのお金ってなんか遠慮しちゃうのよね」

「でしょ?」

「だからってあえかのプランはやばすぎ………できないことはないんだろうけど………」

「じゃあ、決まり〜」

「いやちょっと待て!?」

「んもう、はなさんはOKしてるんだからいいでしょ?」

「え」

「ほら。これが証拠」

私は胡桃さんにはなさんとメールのやり取りを見せる。


あ:胡桃さんとカフェ行くんすけど、はなさんも来ます?

は:え!?胡桃ちゃんと!?

あ:はい。ただ、問題が少しだけあって….

は;OK!いつでもいけるよ!

あ:え、あの問題……


ここで返信は途絶えている。


「…………」

胡桃さんはポカンとしている。

まぁ、私もそう思う。いやだってねぇ?

先程から結構メールを送っているのだが、既読すらつかない。

理由は単純だ。

多分、胡桃さんと出かけるって聞いたから、服選んだり色々としているんじゃないだろうか。

「さ、さすが私の彼女様だわ……」

「でも、一瞬で返信させる裏技があるよ」

「?」

「こうやって、胡桃さんから伝言を預かっています……っと」

「いや、まさか……」

そのまさか。送信してからものの数秒で既読がつき、返信が来た。


は:なんだって?


ほんとに胡桃信者が……いいことなんだけどね。

「よし。この問題にはなさんを巻き込むのは、はなさんに申し訳ないから、ちょっと天に召させてあげよう」

「どゆこと」

「ねぇ、胡桃さん」

「ん?」

「スキー台って10回言ってくれません?」


ピッ……:REC:


「スキー台?別にいいけど……スキー台スキー台スキー台スキー台スキー台スキー台スキー台スキー台スキー台スキー台……これがどうかしたの?」


ピッ……


「よし……最初のスキーと、伸ばしてるところと、最後の台を編集で消したら……」

「え?さっきの録ってたの?」

まだ胡桃さんは自分が何をして何をさせられたのかわかっていないみたいだ。

正直、自分も一年前、引っかかりかけた。もーねによってやられかけた…。

「これをはなさんに送信して…..」

すぐに既読がついた。

「何を送ったのよ」

「これ聞けばわかりますよ」


ポチ


「<<大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き>>」


「!?!?!?!?!??!?!?!?!?!?」

胡桃さんの顔色がみるみるうちに赤く紅くなってゆく。

「@@%&$##%&%$%$%$%!?!?」

胡桃さんが壊れた。言語がなんなのか、そもそも言葉なのかわからない、動物の鳴き声にも近い声を出している。

「まぁまぁ、聞いたのは自分とはなさんだけだしいいのでは?はなさんのこと好きなら全然大丈夫だよね?」

「……確かに」

どうやら納得してもらえたようだ。

「ねぇ、あえか」

「?」

「今夜は月が綺麗ですねって言ってみて」

「あの。小説を書いている自分にはそれは引っかかりませんよ?」

「今スマホないから。言うだけだから」

「え〜……じゃあ言う必要あります?」

「私のことハメたんだから、それくらいやってよ」

「はぁ……わかりましたよ」

私は深呼吸をして言葉を発す。

「今宵は月が綺麗ですね」


ピッ


ん?何やらイヤーな音が聞こえた気が…………。

私はおそるおそる胡桃さんの方を見ると……。

ポケットの中から、高性能録音機を取り出しているではないか。

まずい……非常にまずい……。

紅枝に知られたら、厄介が増える…..それだけは避けたい。

そこで私がとった行動は…………

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