第10話 回想2

 正直、二回目も同じ様な理由で殺害されてしまった後は『マジかーっ』って気分で、三枚目の扉にトライするかどうかかなり迷ったわね。死んでこの白い空間に戻ってきたら案内人はいなかったから、三枚目の扉を開けるしか先に進む選択肢はなかったんだけど。それにしてもなんなの、あの護衛の騎士は! 今思い返しても腹が立つ。


「彼はサイモン・ダウニング。マシュー王子の幼馴染で、体の弱い王子をずっと支えてきた人物だよ」


 今まで黙っていた案内人が教えてくれる。


「ちょっと! それがヒントだとか言わないでよ!?」

「これぐらいの情報は提供するさ。彼はゲームのパッケージにも描かれていただろう?」

「そうだっけ?」


 言われて思い出してみる……ゲームのパッケージに描かれていたのは全部で九人で、主人公であるエマと三人の王子、そして謎の悪そうな女性が大きく描かれている。その周りに小さく何人か描かれていて、一人はエマの幼馴染の騎士であるレオと……ああ、そう言えばその隣ぐらいにもう一人マッチョ系がいたか。言われてみればエマを殺害した騎士に似ている気もする。あと二人は女性だったけど、一人はレジナルド王子の母親であるアナスタシア王妃で……あっ! もう一人の女性もこっちの世界では見覚えがあるわ! アカデミーの制服を着ているし、印象が違っていて分からなかった。


「レジナルド王子の時は婚約まではちゃんとできたのになあ。マシュー王子の時は婚約すらできないとは」


 ストーリーを考えれば後はマシュー王子との仲を更に深めて婚約するだけだから、婚約したも同然と言えばそうなんだけど。それにしてもあの騎士に殺害される理由が全く分からない。エマは気づいてなかったが敵意を向けられていたのは事実だけど、殺されるほどのことではないとも思う。大体、なんで王子と王女が仲良くなったからって騎士に敵意を向けられないとだめなのか。ひょっとしてBL!? BLなの!?


 一つ言えるのは、どの扉の先でもエマは相手のことに夢中になり過ぎて周りが見えてなかったと言う事かしら。レジナルド王子の時は母親である王妃の気持ちを、そして今回は護衛の騎士の様子や気持ちを察していればもうちょっと違う未来があったのかも知れない。それは三枚目の扉でも言えることね。この世界は設定がゲームに似ているけれど、ゲームの様に簡単ではないと言うことだわ、今更だけど。


 しかし疑問も残る。理由はともあれ一国の王女を殺害すれば、その後大問題になって最悪戦争になることぐらい分かりそうなもんだけどな。エマを手に掛けた人たちはその身分や立場から考えてもそんなことは分かっていたはずなのに、そんなにエマの事が憎かったのだろうか。余りにも短絡的すぎる気もする。


「さあ、じゃあそろそろ最後の扉に……」

「ちょっと待って! まだ三枚目の扉について整理してないんだから」

「やれやれ、慎重だねえ」

「次失敗したら本当に終わりなんだからね!」


 ゲームのノリでトライしたいところだけど、リケジョとしての勘がそれを拒む。ここはちゃんと分析して次に活かさなければリケジョの名が廃るってものよ。さあ、三枚目の扉について整理していきましょうか。

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