世界一の女子サッカー選手になれ――えっ球技? いやいやサッカーといえば……スーパーとかで買い物袋に商品を詰め込む人のコトに決まってるでしょうがァァァ!
第16話 決勝戦の直前――だが、栄海奈子に異変が――!?
第16話 決勝戦の直前――だが、栄海奈子に異変が――!?
『―――オーオー……オオ……オー……』
決勝戦を前に、観客たちの声が控え室にまで響いてくる、そんな中――本番を待つ一人のサッカー選手(袋詰めする方の)
晃一がサングラス越しに奈子を見つめ、声をかける……が、しかし。
「奈子、昨日はよく眠れたか? 本番の……
「……………………」
「ん? 奈子、どうした……緊張しているのか? 奈子?」
「…………むう」
無視しているのかと思うほど返事をしなかった奈子が、ゆっくりと顔を上げ、晃一の顔を黙って見つめる、と。
「………………」
「? 奈子、どうした……俺の顔に、何かついているか? サングラスのことじゃないぞ。ははは――」
「………………」
晃一の軽口に、何かしらツッコむどころか反応もせず、ようやく見せた奈子の行動は。
「…………はぁ~~~~~~…………」
「!? 奈子、どうした、随分と盛大なため息を……はっ!? まさか――」
ここで、サッカー界(袋詰めする方)の名コーチたる男、木郷晃一は察し――その心中で、奈子の異変を推測した――!
(これは恐らく選手にありがちな、大一番を前にして陥る極度の緊張状態――無理もない、いくら《未来のサッカーの女王》たる奈子とはいえ、まだ選手としては日が浅いのだ。にも
「……この変な人を、どう思ってるかなんて……う~~~ん……」
奈子が何か呟いているのには気付かなかったようだが、さすが彼女をサッカー界(袋詰めする方)に引き込み、今サッカー大会にいきなり放り込んだ張本人。
木郷晃一は奈子の異変をいち早く理解し――コーチとしての本領を
「奈子! ヘイッ《未来のサッカーの女王》栄海奈子! しっかりしろ、もう決勝戦は目の前だ! 緊張しているのか? 不安なのか? 安心しろ! キミのコーチである俺が付いているぞ、今日もしっかりと試合を見届けてみせる! それ頑張れ奈子! ファイトだ奈子! どうしたどうしたヘイヘーイ! 元気だして行くぞ――」
「考え事してるので、黙っててください」
「はい、わかりました」
一瞬で激励を封じられる晃一。さもあらん、《サッカーの女王》の覇気の恐ろしさたるや、味方(だと思う、多分)のコーチでさえも、軽々しく防げるものではない。
だが、そうこうしている間に――ついに会場側から、決勝戦出場者を招き入れるためのアナウンスが響いてきた。
『オー、オー……お待たせしました。決勝戦出場者、栄海奈子選手、霧崎氷雨選手、ご入場お願いします。……オー、オー♪』
「…………ん? あ、呼ばれたみたいですね……よいしょ、っと」
「! 待て、奈子……そのまま試合に入っては、キミは――!」
「……あ、はい。じゃ、行ってきます……う~~~~ん……?」
晃一の呼びかけにも、ほとんど上の空で、奈子は何か考え事をしながら――そのまま控え室を出て、決勝戦の舞台へ赴いてしまう。
そんな教え子の背を見送りながら、コーチたる者の頬に
「っ。……まずい、やはり今日の奈子は、何かおかしい……この一晩で、一体何があったというのだ? わからん、全く全然これっぽっちもわからん……が、しかし」
深刻そうに呟きながら、晃一はサングラスを外し、ギラリと眼光を鋭くし――
「このままでは、奈子は――――敗北してしまうかもしれん―――」
そう呟き、そして――――
サングラスは、かけ直した。
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