#33 太陽を纏った朝顔の花 その⑧

座り込んで体調が悪そうな紫月と、紫月に寄り添っている黄泉に近寄る白華。


林藤 白華

『大丈夫?』


朝顔 紫月

『うん。』


そう言いながらも紫月の顔色が悪いのは一目同然であった。


百合 黄泉

『御免なさい。 私のせいで・・・。』


朝顔 紫月

『大丈夫だよ。 助けてくれて有難う。』


黄泉に向かって微笑む紫月。

そんな2人のやり取りを、悲しそうな表情で眺める白華。


林藤 白華

『御免ね。 私が居ながら・・・。』


朝顔 紫月

『リンドウちゃんは、悪く無いよ!

入り込まれた私が悪い。』


百合 黄泉

『リンドウちゃんは、直ぐに駆け付けてくれたじゃない。』


林藤 白華

『ユリちゃんから連絡を貰った後、タクシーを呼ぼうと思って電話をしたんだけど、夕方だし混んでいて間に合いそうに無かったから、取り敢えず、タクシーを探しながら記された場所に向かっていたら、交番に連れて行った迷子ちゃんとお母さんに会って、「届けてくれたお礼に」って、直ぐそこまで連れて来てくれたんだ。』


百合 黄泉

『普段の行いのおかげね。』


体調が悪そうな紫月の顔を眺めた後、

白華は黄泉に向かって話し始めた。


林藤 白華

『今からタクシーを呼ぶから、アサガオちゃんを連れて帰ってもらえないかな?』


百合 黄泉

『リンドウちゃんは、乗らないの?』


その問いに対して、白華は刀を見せながら、

『これ、使っちゃったからね。』

『今からヨツバちゃんに連絡はするけど、ヨツバちゃんに任せっぱなしも悪いから、警察署に行って如月警部に直接報告して来るよ。』


朝顔 紫月

『でもこれ、どうしよう?』


紫月は白華に拳銃を差し出した。


林藤 白華

『私が返しておくよ。』


朝顔 紫月

『良いの? 有難う。』


紫月は白華に、拳銃を手渡した。

  

その後、7分程してタクシーが公園に到着し、紫月と黄泉はタクシーへと乗り込み紫月の家へと向かい、白華は徒歩で警察署へ向かったのであった。


------------


タクシーの後ろの乗客席に座る紫月と黄泉。

紫月は右側に座り少し俯き、

黄泉は左側に座り窓の向こうを眺めていた。


そんな中、黄泉が静かに口を開いた。


百合 黄泉

『余り無理しないでよ・・・。』


朝顔 紫月

『うん・・・。御免ね・・・。

また迷惑かけちゃった・・・。』


百合 黄泉

『迷惑だなんで思っていないわ。

私は好き勝手やっているだけだから・・・。』


朝顔 紫月

『うん・・・。有難う・・・。』


------------


その頃、紫月が早退し、

黄泉が紫月を連れて帰ったと言う事が、

緑莉からの連絡により葵達にも告げられていた。


綾女 葵

『アサガオちゃんは、大丈夫なのかしら?』


四葉 緑莉(電話)

『リンドウちゃんから聞いた話しだと、タクシーが到着した頃には、大分体調は良さそうだったみたい。』


綾女 葵

『そう。悪化しなければ良いんだけど・・・。』


四葉 緑莉(電話)

『明日は、アサガオちゃん有給休暇でここには来ないから、午前中にアサガオちゃんに連絡を入れて体調を確認してから、またリーダーにも連絡するね。』


綾女 葵

『分かったわ。有難う。それじゃあ、またね。』


四葉 緑莉(電話)

『うん。リーダー達も気を付けてね!』


綾女 葵

『有難う。』


話しが終わりスマホの通話を切る葵。

葵の会話を聞いていた橙羽と朱珠が、葵に近寄って来た。


神原 朱珠

『アサガオちゃん何かあったん?』


綾女 葵

『えゝ。でも体調は、大分良くなっているみたい。』


日廻 橙羽

『また、悪霊が出たの?』


橙羽は不安そうな表情で葵に質問を問い掛けた。


綾女 葵

『昨日と同じ様な霊体に出逢ったみたい。

やはり事故や事件に巻き込まれた魂は、"どこへ向かえば良いのか"分からずに彷徨っているみたいね。』


葵と橙羽は表情を曇らせた。


神原 朱珠

『一つ聞きたいねんけどな、

悪霊に変わった魂が元の魂に戻る事ってあんの?』


日廻 橙羽

『橙羽も気になる。どうなの? リーダー?』


綾女 葵

『それは、私にも分からないわ。

でも0では無いんじゃないかしら?

ただ可能性として物凄く低いとは思うわ。』


日廻 橙羽

『そうだよね・・・。

橙羽も事故や事件に巻き込まれちゃったら、

きっと、その人の事を恨んじゃう・・・。』

 

神原 朱珠

『せやな。私も恨んでしまうんやろなぁ・・・。』


綾女 葵

『そうね・・・。

だから突然未来を奪われて、どこへ向かって行けば良いのか分からない魂を空に放つ事が出来る存在が必要なの。』

 

『中には加害を与えた側に恨み募らせる事は仕方が無い事だとしても、その恨みの対象を身の周りの全ての人間に向ける魂も存在するから・・・。』


神原 朱珠

『成程な。私達、中々大変な仕事してんのやな。』


綾女 葵

『そうね。

でも余り悪霊に逢う事は少ないから安心して。』


神原 朱珠

『まあ、怖いねんけどな。

私、葵ちゃんが側に居ってくれたら大丈夫やで!』


笑顔で葵に飛び付く朱珠。


日廻 橙羽

『あ〜! ズルい! ズルい! 橙羽も〜!』


葵と朱珠に飛び付く橙羽。

抱き付いて来た2人を眺め、安堵の溜息をつく葵。


綾女 葵

『販売機でジュースでも買って少し休憩するわよ。』


神原 朱珠

『おっ! ええなぁ!』


葵と朱珠に抱き付いたまま、薬局に向かって手を伸ばす橙羽。


日廻 橙羽

『ねぇねぇ、リーダー!

そこの薬局の方が飲み物 安いよ。』


神原 朱珠

『おっ! ええやん! あそこならお菓子もあんで♪』


綾女 葵

『遠足じゃ無いのよ。』


神原 朱珠

『ええから、ええから。

葵ちゃんも顔が幸せそうやで!』


日廻 橙羽

『ほんとだ! リーダー行こう! 行こう!』


橙羽は葵の左手を引き、朱珠は葵の右手を引き、

3人は薬局の中へと入って行ったのであった。なか

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