#28 太陽を纏った朝顔の花 その③
目的の商店街へと向かう、白華と紫月。
そんな中、不安そうな顔で紫月が口を開いた。
朝顔 紫月
『ヨツバちゃん、大丈夫かな?』
その問いに笑顔で『心配?』と答える白華。
朝顔 紫月
『私は小さい頃から一緒に居るから何とも思わないんだけど、黄泉ちゃんは言葉遣いが荒いから。』
少し落ち込んだ表情で俯いている紫月。
紫月は「黄泉の言葉が緑莉を傷つけているのではないか?」という緑莉を心配する想いと、
「黄泉の言動によって緑莉が黄泉の事を嫌いになっているのではないか?」という想いを抱いていたのであった。
そんな紫月を眺める白華。
白華は、そんな紫月の気持ちを読み取った様で、紫月に向かい微笑みながら『2人共、大丈夫だと思うよ』と語り掛けた。
林藤 白華
『確かにユリちゃんの言葉には棘があるけど、ヨツバちゃんは、中学2年生の頃から【blanc】に加入して、その面倒見の良さや人を見極める能力の高さから、直ぐに今のポジションに就いて、今までも色んな子に会って来たと思うんだけど、少なくとも私の聞いている範囲では、ヨツバちゃんと誰かが不仲になったって話しは、一度も聞いた事が無いからね。』
そう言うと白華は立ち止まり、微笑みながら紫月の肩に手を乗せて『ユリちゃんも大丈夫だと思うよ。ユリちゃんの事を、メンバーの仲で一番理解しているのはアサガオちゃんでしょ。』と優しく話し掛けた。
紫月は『そうだよね。2人共、仲直りしてくれるよね。』と少しだけ笑顔を取り戻した。
林藤 白華
『私もリーダーも色々とヨツバちゃんに迷惑をかけてしまっているけど、ヨツバちゃんは、いつもヨツバちゃんで居てくれるからね。
勿論、その優しさに甘え過ぎるのは、いけない事だと思うけど、彼女は人一倍優しいから。』
朝顔 紫月
『うん。そうだね。
黄泉ちゃん、ちゃんと謝ってくれると良いな。』
林藤 白華
『そうだね。ユリちゃんなら大丈夫だよ。』
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商店街に着く白華と紫月。
商店街には下校中の学生や仕事帰りのサラリーマン、夕飯の買い出しをしている主婦や親子の姿で賑わっていた。
林藤 白華
『この近くで小さい子の泣き声がするみたいなんだけど、もう少し人が少なくなってからじゃないと分からないね。』
朝顔 紫月
『そうだね。』
そんな中、少し離れた所から小さな子の泣き声が聞こえて来た。
朝顔 紫月
『あっ! 泣き声が聞こえる!』
林藤 白華
『行ってみよう!』
2人が泣き声のする方へ走って行くと、2人の目の前に3歳くらいの小さな人間の女の子の姿があった。
林藤 白華
『幽霊じゃ無かったみたいだね。』
朝顔 紫月
『うん。』
2人は少し気が抜けた様な、安堵した様な表情で女の子の元へと向かって行った。
朝顔 紫月
『お母さんと逸れちゃったの?』
林藤 白華
『お名前、言えるかな?』
女の子の前にしゃがみ込み、女の子に問い掛ける2人。
女の子は涙で顔がぐちゃぐちゃになりながら、震える声で『まいこ』と答えた。
林藤 白華
『まいこちゃん、泣かなくて大丈夫だよ!
どこで、お母さんと逸れちゃったのか分かるかな?』
その問いに女の子は、涙を流しながら大きく首を横に振っている。
どうやら何かに気を取られている間に逸れてしまい、そのままお母さんを探して、ここへ来てしまった様だ。
立ち上がり白華と紫月は、辺りを見渡した。
時間帯的にも、まだ沢山のお店が営業しており、この中から女の子のお母さんを直感だけで探すのは極めて難しい状態だった。
林藤 白華
『15分くらい歩かないといけないけど、商店街の中にある交番へ連れて行ってあげたほうが良さそうだね。』
朝顔 紫月
『そうだね。』
白華は再び女の子の前にしゃがみ込み、『お母さんを、一緒に探してあげるからね』と女の子に伝えると、女の子の右手を手に取り立ち上がり、交番へ向かう前に一度、ぐるりと辺りを見渡した。
白華は女の子と同じくらい、例の霊体の事も気になっているようであった。
そんな白華を眺め、紫月は『大丈夫だよ』と言葉を掛けた。
林藤 白華
『えっ?』
朝顔 紫月
『リンドウちゃんが、その子を交番に送っている間に、私が霊体を探しておくから。』
林藤 白華
『えっ! でも1人では・・・。』
紫月は白華の言葉を遮るかの様に販売機に指を差し、
『一人じゃないから』と言ったのであった。
白華は、紫月の話しを不思議そうに聞きながら、紫月が指を差した販売機の方を眺めた。
するとそこには、販売機に隠れている人の姿があった。
紫月の耳元に近寄る白華。
林藤 白華
『ユリちゃん? いつから居たの?』
朝顔 紫月
『分からない。私も、ついさっき知ったんだ。
でも本人は隠れてるつもりみたいだから、暫くは、そっとしておいてあげよ。』
林藤 白華
『その方が良さそうだね。』
黄泉は紫月の事が心配で、今日も緑莉の家を出た後、こっそりと白華と紫月の後を付いて来ていたのであった。
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