#27 太陽を纏った朝顔の花 その②

黄泉が外へと出て行ってから少し時間が経ち、紫月も落ち着きを取り戻していた。


ソファの設置された部屋で座る5人に、通販で買って最近到着したばかりの新しい紅茶を入れ振る舞う緑莉。

キッチンには用意してあった、黄泉のティーカップが置かれていた。


綾女 葵

『美味しいわ。何だか落ち着く味ね。』


神原 朱珠

『せやな。』


そう言いながらもテーブルの上に置いてある入れ物から砂糖のスティックを2本手に取る朱珠。


四葉 緑莉

『苦かった?』


そう言いながら笑う緑莉。

だがその表情は、黄泉の事を気にしている様で少し曇っていた。


神原 朱珠

『ほんの少しやねんで!

ほんの少し苦かってん。』


綾女 葵

『ほんの少しの割には、砂糖の数が多いわね。』


神原 朱珠

『そ、それはやなぁ・・・。』


日廻 橙羽

『バラちゃんより橙羽の方がお姉さんだったみたいだね。』


神原 朱珠

『ふ〜ん。お姉さんね〜。』

 

ジトっとした目で橙羽を眺める朱珠と、尋常では無い汗を流しながら紅茶の入ったティーカップに口をつける橙羽。

そんな2人を眺めながら微笑む緑莉と紫月、その緑莉と紫月を心配そうな表情で眺める葵と白華。


綾女 葵

『そうだ!

私もお菓子を買って来たんだったわ!』


そう言うと葵は、チョコレートのアソートとバタークッキーの箱を鞄の中から取り出した。


日廻 橙羽

『わぁ〜! お菓子だ!』


綾女 葵

『皆で食べましょ。』


朱珠は緑莉へのお礼に買ったチョコレートを紫月へ渡し、葵は緑莉へのお礼に買っていたお菓子を皆で分け合ったのであった。


朱珠は葵に近寄り小さな声で『ええの?』と問い掛けた。

その問いに葵は小さな声で『ヒマワリちゃんと一緒に、仕事終わりに、また買って帰るわ。』と小声で返した。


そんな中、7当分に分けられたお菓子を怪訝な表情で眺める橙羽。


日廻 橙羽

『ユリちゃんの分もあるの?』


その問いの意味が分からず、葵は少し固まっていた。

そんな中、橙羽は再び口を開いた。


日廻 橙羽

『だって、あんなに偉そうだったんだよ!

リーダーは腹が立たないの?』


綾女 葵

『"友達"だからね。』


その言葉を聞き言葉を失う橙羽。

続けて葵は、話を続けた。


綾女 葵

『友達だからこそ、ぶつかり合う事くらいあるわ。きっとこれからもね。

でも友達だからこそ、こうやって美味しいお菓子と美味しい紅茶を飲みながら、また話し合える時間が戻って来るわ。

今までだって、そうだったでしょ?』


その言葉を聞き、安堵の表情を見せる緑莉と紫月。

そんな中、先程の黄泉の態度の悪さを見ていた橙羽は、葵の言葉に納得は出来たものの複雑な表情を浮かべていた。

そんな中、時計を眺める白華。


林藤 白華

『そろそろ出ないと行けないね。

今日、私は誰と一緒にどこへ向かえば良いのかな?』


四葉 緑莉

『今日はリーダーとバラちゃんとヒマワリちゃんのチームと、リンドウちゃんとアサガオちゃんでチームでお願い。

場所は、ここに行ってほしいの。』


そう言うと緑莉は、葵と白華にそれぞれ異なった場所が記されたメールを送信した。

そのメールには、大まかな調べてほしい内容と目的地にマーカーが打たれた地図が送付されていた。


林藤 白華

『ここって確か商店街の近くだよね?』


四葉 緑莉

『次は、そこで小さな子の泣き声が聞こえるって情報が沢山来てるの。』


朝顔 紫月

『駅から移動したのかな?』


四葉 緑莉

『それがね。昨日も深夜から明け方まで、駅で小さな子の泣き声を聞いたって情報が沢山来ているから、多分違う子だと思うの。』


林藤 白華

『そうなんだ。私達には姿を一度も見せてくれないけど、まだ駅の周辺で迷子になっているんだね。』


悲しそうな表情でスマホの画面を眺める白華。

そんな白華を眺める葵。


綾女 葵

『今度、一緒に行ってみましょう。』


頬を赤くして『えっ!』と驚く白華。


綾女 葵

『もしかすると、人が変われば波長が合って見える人が居るかもしれないわ。』


林藤 白華

『そうだね。じゃあ、リーダーに一緒に行ってもらおうかな?』


そう言いながら微笑む白華と、そんな葵と白華のやり取りを眺めクスクスと笑う緑莉。


そんな中、時刻は16時を回っていた。


神原 朱珠

『あかん! 時間過ぎてんで!』


綾女 葵

『あら本当ね。』


焦る朱珠と、焦る様子が一つも無い葵の会話を聞き微笑む紫月。

そんな中、白華が4人に『じゃあ、行こうか。』と言い、5人は部屋を出て玄関口へと向かった。


綾女 葵

『じゃあ、行って来るわ。』


四葉 緑莉

『気を付けてね!』


林藤 白華

『また新しい情報が入り次第、連絡するね。』


四葉 緑莉

『うん。待機してるね。』


5人に手を振る緑莉と緑莉に手を振り返す5人。

そして扉は閉まり、今日も仕事が始まったのであった。


------------


緑莉の家の前で、5人は葵の率いる巡回チームと白華の率いる密偵チームに、それぞれ分かれた。


綾女 葵

『じゃあ、また後でね。』


林藤 白華

『うん。リーダー達も気を付けてね。』


綾女 葵

『えゝ、リンドウちゃんもアサガオちゃんも気を付けて。』


そう言うと葵、橙羽、朱珠は家から西の方角へと向かい、白華と紫月は南の方角へと歩き始めたのであった。

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