第164話好感度あげってどうやるの?

「ああ〜〜〜〜〜〜極楽極楽♪」


「……」


「廉太郎、次は腰を頼むわ。この前腰痛めてからというもの、もう痛うて痛うて!」


 ここはアカツキさんの部屋。今俺は、このプレハブ小屋に住む老人の為に朝から食い物を調達しに走り、腹一杯食わせた後はマッサージを施してやっている。

 マジで何の為にこんな事をしなきゃならないんだ。


「アカツキさん、もう充分でしょう? 早く教えてくださいよ、どうやったら乙成の好感度が上がるのか」


「何、そう焦るなって! 心配しなくてもちゃんと教えてやる。あぁ……いてて……こ、腰が……」


 クソジジイめ。そんな事言って、体よくこき使いたいだけだろ。正直色々思う所はあるのだが、今の俺にとってはこの人の協力が不可欠だ。

 乙成を元に戻す方法。それは乙成の、俺に対する好感度をマックスにしないといけない……のだそうだ。


 好感度マックス……一体なんのこっちゃ分からない事ではあるが、乙成がゾンビになっているという事、そして俺の持つ蟹麿ボイスで、ゾンビの兆候を抑えられている事から、この突拍子もない話を信じざるを得ない展開になってしまったのだ。


「もう! 分かりましたよ! でもちゃんと教えてくださいよね?」


「分かってるって〜」


 本当に本当にクソジジイだ。老人には優しくしろと言われて育ってきたタイプの人間だが、なんでもかんでも両手放しで受け入れるべきではないと思う。少なくともこの人はクソなので優しくするべきではなかったと、今更ながらに後悔している。それにしても……老人の割に意外と筋肉がしっかりしている気がするんだよな……服の上からだからよく分からないが……。



「ふぃ〜もういいぞ廉太郎。お陰ですっかり良くなった」


 良かった。やっと解放された……人にマッサージするのって、結構力いるんだよ。簡単に言うなっての!


「あの、それでアカツキさん……」


「ん? あぁ! そうそう。好感度の上げ方ね! まぁ最低限の清潔感とかはあるから、付き合うまでいけたんだとして……」


 そう言って、アカツキさんはジッと俺の方を見る。この目なんか苦手なんだよあ……なんか怒られそうで……。ただの浮浪者風の老人に、こんな事を思うのも変な感じがするが、この人の目は、何かを見透かしている様な気がするのだ。なんでかは分からないけど。


「んーーーーーーーーー」


 明らかに何か悩んでいる様子。え、俺ってそんなに難があるタイプなの??


「分からん」


「は?」


「だから、好感度の上げ方なんてそんなもん、一朝一夕で簡単に教えられるもんでもないし、第一そんな感覚的なもん、教えた所でその通りになるとは限らんだろ? お前あれか? ネットの恋愛もののしょーもない記事とか鵜呑みにするタイプか? この仕草をしたら脈アリのサイン! 確実に彼女を落とす方法! みたいなやつ。やめとけやめとけ! あんなもん読んだって時間の無駄だ!そんなもん鵜呑みにする時点でお前みたいなもんは落とせんよ」


「ひどっ!!!!」


 なんて事を言うジジイなんだ……。てか、そんだけよく知ってるって事は、この人の方がそういった記事をよく見てるんじゃないの?! 毎回読んだ後に後悔するやつね。タイトルで釣っといて、本当に対した事は言ってないやつ。べ、別にそんな記事をよく読んでたりはしないよ?! でもネットニュースとか見てると出てくるんだもん、読んではないけど気にはなるよね。読んではないけどね!!


「でもそんな事言われても……! 俺にはこれ以上どうしたらいいのか分からないし! 付き合っておいて、好感度がマックスじゃないってどういう事って感じなんですよ!」


「だからこの前も言ったじゃん。許容範囲ならとりあえず付き合う事もあるって。人の話聞いてた? まぁそれでも、確かに目に見えない物にどう対処したらいいのか分からんのも無理はないか……待ってろ」


 そう言って、アカツキさんはなにやら部屋の中をあさりだした。それにしてもこのプレハブ小屋、やたらと物が多いな。変な薬草とか薬研的な物とかいっぱいあるし、へんな資料もある。アカツキさんってマキシマリスト?


「あったあった。ほらよ」


 


 

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