第120話もう思考がサイコパスじゃん
「そうか、前田くんが僕を好きになれば良いんですよ。それで全部解決です。なんで今まで気が付かなかったんだろう……僕とした事が」
美作さんは自分で言って納得する様にうんうんと頷く。それはもう、妙案を思いついた! とばかりに。普段あんまり感情が表に出にくい印象があるのに、今日ばかりは表情豊かに見える。
「いや、ちょっと待ってくださいよ! なんでそうなるんですか?!」
「君は物分かりの悪い男ですね……簡単な事ですよ。君が僕の事を好きになれば、あいりへの不純な気持ちもなくなるでしょう?」
美作さんはチッと舌打ちをしながら、丁寧に説明してくれた。いや、説明せんでも言いたい事は分かる。
これって、あれだろ? 葬式で出会った彼にまた会いたいから、身内を殺してまた葬式をやる、みたいな事と同じ思考回路だろ? サイコパスじゃん。彼女の事を諦めて欲しいから自分と付き合うとか。
言葉では理解出来るが、内容がとても理解出来るものではない。それをさっきから俺は言いたいのに、あくまで言葉としての理解が追い付いていないと美作さんは思っている。バカなの?
「てか、あんた麗香さんいるでしょ?! 何言ってるんですか!」
「あ、それは問題ないです。麗香さんは
もう無理だ……理解が追い付かない。完全にイカれてやがる。
「僕は正直、男には1ミリも興味はないのですが、あいりの為なら致し方ありません。はい、どうぞ」
そう言って、両手を広げて俺を迎い入れようとする美作さん。
「怖い怖い怖い! 勝手に話進めないで! てか、なんで俺が美作さんを好きになる前提で話進めてんの?!」
「え」
いや、
「え」
じゃねぇよ!!!!! 何予想外の反応、みたいな顔してんの?! こいつさては顔が良い事を鼻にかけて、みんな自分の事を好きになると思ってるだろ? これだから顔が良い奴は嫌いなんだよ!!!!! 顔意外で勝負しろ!!!!! 心を奪ってみろよ!!!
「なんか楽しそうね♪」
俺達がわちゃわちゃしていると、台所から麗香さんと乙成が戻ってきた。ようやくですよ……なんでこの変人と二人にするかなあ?
「麗香さん。僕、前田くんとデートします。前田くんは、今日から僕の彼氏です」
「は?! 本当に何言って……」
「あら素敵ね♪ 春だからピクニックとか良いんじゃない?」
俺が否定するより先に、麗香さんが朗らかな笑顔で優しく肯定する。この人もまぁまぁイカれてるよな。美作さんと付き合ってるくらいだから当然か。
「デート……彼氏……」
美作さんの「デート」「彼氏」というワードに、乙成が小さく反応した。ヤバい。何かとんでもない勘違いをしている気がする……! このままだと本当に、俺が美作さんの彼氏にさせられてしまう! 誰も幸せにならない!!
「違うって乙成! 誤解! 俺はこの人と付き合ってなんかないって!!」
「前田くん、初デートはいつにします?」
「あんたはちょっと黙っててくれ頼むから!!!」
「初デート……」
乙成の思考が停止しているマズイ!! さっきからデートだの彼氏だのブツブツ呟いて、俺の声なんかまるで届いてない。
なんて事だ……。25歳を前にして、人生初のお付き合いした人が、まさかの男にされてしまう……! しかも普通の男じゃない、ヤバい男だ。サイコパス美作だ。
春だ。やっぱり春はおかしな奴がわいてくる。なんで春なんか来るんだろうな? 俺は、そんな考えても詮無い事を頭の中でぐるぐると考えていた。
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