悪女
魔装核兵は、右手首をぎゅっとつかむと、それを思いっきりひきぬいた。その右手は完全に機械化されており、その内臓部から隠し刀が出た。
「この、メギツネガ!!」
魔装核兵は怒りにまかせてその隠し刀を振った。だがいつもと違い、それはリーチが極めて短く、腕一本分の長さしかない。まるで自分がその場に押しとどめられている魔法にかけられているように。魔力は知覚できない。となると……魔装核兵は、物質を感じる感覚を働かせる。きっと自然物に干渉しているのに違いない。足に異変を感じた。妙に水っぽいようだ。見下ろすと、ねばねばした粘液が、足に組み付いていた。
「貴様……なんのツモリだ」
「なんのつもりって?」
「これで、正々堂々と戦ウとでも?」
「だれも、そんなこといってないわ、私はただ……あなたのいうように〝非情〟になろうとしているの」
「血を恐れる女に、何ができル」
「ふん」
その態度に怒り、魔装核兵は憤怒した。そして足に力をこめると、全身から煙がたちがある。まるで焼石のように、その熱は周囲のものに電波していく。ヘリオのつくった粘液は、ケルピーの強力なものだったが、熱にたえかねて、それは消滅した。
「ウガアアアアア!!!」
「う……」
《ガキン!!》
《キュイン!!キュン!!》
上へ、下へ、ヘリオは、魔装核兵の斬撃を受け続ける。今度は、魔装核兵のほうが冷静さを欠いているように思えた。
「どうして、そんなに熱くなれるの?自分のためじゃないのに」
「お前ニ、何がわかル、絶望だ!!絶望していながらも、私はなくしたもののためニ、贖罪をしているのだ!!人のために熱くなったことのないオマエに何が!!」
魔装核兵は、腰を下ろし、余計に攻勢にはいった。息切れを起こすこともなく、疲れを感じることもない。はじめてヘリオは“この人間兵器”の恐ろしさを肌身で感じた。だが同時に、ヘリオは“非情さ”に自信があった。
「死ねッ!!!!」
魔装核兵の強靭な一振りが横なぎに払われた。それが振られる寸前、ヘリオは奇跡を見た。その何の変哲もない隠し刀が、彼女のもっていた赤い特殊な剣のように赤い光をまとっていたのだ。
「まずい!!!」
ヘリオは刀で斬撃を防ごうとすると同時に、姿勢を崩して抑えきれない剣の軌道をかわした。
《ギャキンッ!!!》
剣は中心で真っ二つにおれた、ヘリオは逃げ場を失った。
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