龍の鱗の赤い剣。《アスカロン》

「しまった……」

 ヘリオは口に出してしまった。エィミアがすかさずいう。

『何いってるの?どういうつもり?』

 ヘリオは言葉をかえさない。

『ねえ、ヘリオ!!』

「大丈夫だ、さっき言った通りに」

『……』

 ヘリオは魔装核兵の剣を捨てると、ケローネにもらった剣を持ち出した。

「なんノつもりだ?」

「いや、私も……それ、使えるかとおもってね」

「……?」

 魔装核兵は、剣をみた。赤い光に自分でも今気づいたらしかった。ヘリオは愛らしく思え、少しわらった。そのとき、ゴソリと近くで草を踏む音がきこえた。

「!!」

 そちらをむいたヘリオは驚いた。そこには気が動転したのか、戦いのさなか引きはがした、少し遠い距離にいたはずのネーラがたっていた。

「ヘリオ、私……私、どうすれば」

「来るなあア!!!」

 ヘリオが叫んだ。

「だから人間ナど!!」

 魔装核兵は、ネーラに向かってはしりだした。

『エィミア!!』

「今!!?」

 エィミアは戸惑いながら魔装核兵を足止めした。

「なんのつもりだ?」

「今度は消えないわよ……その粘液は、最強“守護使者”のものだから」

 魔装核兵は足をうごかそうとした。たしかに粘り気があり、今までより強力な気がした。だが魔装核兵は、体にまた熱を込め始める。

『エィミア、“水”に変換』

『どういうこと!?』

『早く!!これが最後のチャンスよ』

『……そういうことね』

 エィミアは魔装核兵が“熱せられる”前に粘液を水に変換した。その瞬間、ヘリオは魔装核兵にタックルをした。魔装核兵は、数メートルとばされ、ヘリオはいった。

「ビンゴ」

「何ヲ……」

「上をみてみな、あんたの魔力でしばらく宙にういていたようだけど、ほら、剣が落下してきてる」

「ハッ!!」

 魔装核兵は、上空をみた、確かに上空で赤い諸刃の剣が自分にむけて一直線に落下しようとしている。さらに奇妙な事に、その剣は赤く煌々と燃えていることだ。

「まさか、君に扱えるハズが」

 魔装核兵は左手を伸ばし、剣を制御する、思い切り上空に引き上げた。その瞬間だった。上空に異変を感じた。粘性のある水、それがくもの糸状に張り巡らされている。その糸の中央に剣はひきあげられた。さらにおかしいことに、赤い剣は、今自分が操作したことで“燃えはじめた”が、同時に、何かを蒸発させると同時に、それをさけるように剣から赤い液体が飛び散って落下してきた。降り注いできたものをみて魔装核兵は確信する。

「ゴブリンの……血」

「エィミア……“糸”の圧縮」

 そうヘリオが声をかけた瞬間に、上空に浮かんでいた剣はすさまじい速度で落下し、魔装核兵に突き刺さったのだった。


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