二人のヘリオ

 驚いていたのは魔装核兵も同じだった。

「ヘリオ……なぜ二人?」

 魔装核兵を後ろから奇襲したのは、もう一人のヘリオだったのだ。

「ふっ……」

 魔装核兵は、剣を取り出し、その様子を眺めた。妙な感覚がある。感覚というものが感じられなくなって幾星霜、しかし、すぐに魔力で異変をかんじ、だらりと手をおろした。

「なるほどな……、私ノ負けだ……」

 魔装核兵の剣が、どろりととける。それはただの水となって、地面に滴り落ちた。

「奇襲の間に、私の剣ヲ盗んだか“ヘリオ”」

 その後ろに横たわるヘリオ、先ほどから動かなかったヘリオの水がとける、その中にいたのは、エイブスだった。

「見事だ……だが……ただでは死なヌ」

 そのとき、ヘリオより先に、魔女ネーラが異変に気付いた。

「気を付けて!!」

 まず、ネーラが胸に鋭い痛みを感じた、次にやけるような痛みが襲って、地面をのたうち回る。ヘリオが目を凝らす。暗闇を赤い線香が走っている、その正体を見極めないうちに、その閃光はピタリ、と中にとまり、次の標的を目定めた。ヘリオは察した。

「まずい!!ネーラ!!!君だ!!」

 ネーラは身構えようとした。しかし、防御系のスキルを発動する隙すらなかった。ネーラに直進したのは、魔装核兵のつかっている赤い剣によくにた諸刃の剣だった。それは遠隔操作か、宙にういてこちらへむかって直進してくる、その目にもとまらぬ速さに、ネーラは死を覚悟した。

「ネーラ!!」

 直ぐ傍で、懐かしい男の声がしたきがした。同時に突風のような何かがよこぎり、それに、諸刃の剣は直撃して、何かがドサリ、と地面に横たわった。

「エイブス!!」

 何が起こったのかわからなかった。ただひとつわかるのは、エイブスが自分をかばい、敵の攻撃をうけたらしいこと。

「どうして!!エイブス!!どうして私をかばったの!!どうして、私なんか」

 魔装核兵はわらっていた。

「ふっ……“魔女のエリート”に報いを受けさせる事がデキタ」

 魔装核兵は、ヘリオをむいた。

「その剣は……“情なきもの”にしか扱えない、みてみろ、その剣ヲ」

 ヘリオの持つ剣は、赤々としていた先ほどの炎をどこかにおしのけたように、薄く光っているのみで、徐々にその光もよわくなっていった。

「お前の負けだ……、さあ、我々とこい」

「断る」

「ナゼだ、合理的ではない、お前は、私と同じ目をしている、見込みがあるというのに」

「私は、まだ、私は……謝っていないんだ」

「ハ?」



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