決意
「さあ、我々トともに来るのだ、後悔はさせない」
手を差し伸べる“魔装核兵”しかし、ヘリオは手を差し出さなかった。
「人間を信じられる限りは、人間でいたいわ」
「そうか……余計な代償を払わなくともよかったものを……ここで死ぬがいい」
「それはどうかな?」
ニヤリ、と笑うヘリオ、しかしそのヘリオの声は、どこか濁り、トーンが低くなっていて。魔装核兵は違和感を感じる。
背中から、レネが襲ってくる。しかし今度はやけに、剣の攻撃をよける。
「ホオ……“水写術”人間の幻影をつくる術はそれほど器用に動かすことはできないときくが……大したものだな」
「“本物”だったら?」
レネがニヤリと笑った。
「そんな訳がなかろう、いったいどうして“炎”を使うお前をそうやすやすと戦法に使うはずもない、炎スキル使いは、二人しか……」
《ボォオオオッ》
魔装核兵の足元で爆撃が発生したかと思うと、よけた先に炎の玉がとんできた。レネの背後の木々の隙間から現れたネーラが魔法をつかったのだった。
「しまっ……」
「ふっ……油断しちゃだめでしょ」
魔装核兵は、鎧ごと炎につつまれている。そしてもがいて、地面にパタリとおちた。笑いながら、しかし突然顔を引きつらせて、ネーラが叫んだ。
「気を付けて!!!」
魔装核兵は、ネーラの後ろについた、そしてネーラの首に手をまわし、刀をつきたてる。一糸まとわぬ姿、しかしそれはとても奇妙で、痛々しかった。
「それが、あんたの“本性”か」
「さあ、シカシ、いくら醜くトモ、身を隠し、幻影を作るお前たちより美しカロウ」
「フンッ」
失笑するように、ヘリオはわらった。ネーラもまた笑っていった。
「着飾ることを馬鹿にしない方がいいわよ」
そういいながら魔力をこめると、右手をくいっと引くような動作をする、組み付かれたときに落ちた杖を魔力で拾い上げると、叫んだ。
「ヘリオ!!!いいわよ!!」
「!!」
すぐに魔装核兵は身構えた。が、ヘリオは一切微動だにしない。そのすぐ後ろで、レネとは別の、感じた覚えのある“殺気”を感じた。
「まさか……」
《ズドーンッ!!!》
魔装核兵は、頭を抱えた。ふきとばされ、よつんばいになって、やっと立ち上がる。月明りに照らされた彼女をみて。皆は言葉をうしなった。
「まさか……」
「こんな事って……」
ツギハギの体。後頭部にはえる頭大の一本の巨大な赤いツノ。その皮膚や手足の部分部分が、まるで別の人間のものを縫い合わせたようになっている。顔はところどころ筋肉が露出し、人工物の皮膚でぬいあわせてあり、関節部分は歯車や、機械的機構が密集し、むき出しになっている。何よりめをひいたのは、血のように赤い液体―だがよくみると、渦をかくように流動している、マナらしきものが、パイプで全身に供給されているのだった。
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