友人

 ニヨネの声に向けて、ヘリオは二人を抱えてあるく。そのバカ力に二人は驚いたようだったが、魔女はヘリオに、こんな事を口走った。

「"あんたのために、どれだけの犠牲を払わせるの"」

 突然、自分がわからないトラブルに巻き込まれ責任を追及され、頭が真っ白になるような衝撃が走ったあと、あっけにとられているヘリオから、その女はエイブスをはぎとるように抱きかかえた。手慣れた手つきで抱きかかえ、かつ魔法をかけた。

”エアロ・ウィンド”

 と唱えると、彼女の手に渡ったエイブスは軽くなり、

”ハイ・ヒール”

 と唱えるとエイブスの喉はみるみるうちに喉が回復した。

「大丈夫……あるける」

 とエイブスがいうと

「無理しないでください!!あなたは……大事な人なんですから」

 ヘリオは、ニヨネを見つめる。

「どうして、あなたが?」

 ニヨネの顔はどこか今までと違う。そして彼女の魔力もまた、スキルを授与されたばかりとは思えないほどに、清廉されていた。しかし、ニヨネのほうはおちつきはらって、炎のチリが散るなかで、風にふかれた髪をかきあげ、恥ずかしそうに笑っていった。

「今まで……ごめんね、ありがとう、私は私であって、私じゃないの、それでもあなたにも、すぐにこのことがわかるから、何もかわらないのは、あなたを裏切らないこと、あなたがずっと私に親身にしてくれたようにね」

 ニヨネがヘリオの手をぎゅっと握ると、安心したように肩の力がぬけたヘリオは、ニヨネを信じるとでもいうようにこくりと頷いた。

「早く!!いくよ!」

 

 三人が城壁の穴から立ち去ったあと。ムクリ、と魔装核兵が起き上がる。それと同時に、ドューラもおきあがって、むくむくと顔の色を赤くそめると、わめきたてるように命令した。

「あいつらを掴まえろ!!ヘリオ以外は殺してもかまわん!!!」

 

 ヘリオとエイブス、レネは、魔女ネーラとニヨネが用意していた場所にのりこんで、ネーラのいう"仲間"と落ち合う場所へと向かっていた。ニヨネが馬車を扱い御者となり、その道中、馬車の中で、奇妙なにらみ合いがおこっていた。

「……」

「…………」

 ヘリオは、ネーラからの熱烈な敵意の視線をうけていた。(なんで?)といいたくなった。街を襲ったのはこいつだし、自分がなぜ、彼らに助けられているかもわからない。

「本当に、ケローネはあなたたちに保護されているのね?」

「……あなたは、本当に空っぽね」

「!?」

 なぞの毒舌に面喰いながら、魔女の表情を窺おうとする。


 





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