救援

 エイブスは、レネに左手を伸ばした。レネは、必死で治療したが、もうだめかと思い手を握り返す。しかし、エイブスはポケットにてをいれていた逆の手をのばし、何かを差し出した。

「て……うて」

 レネは、その時思い出した。そう、こうなった場合の手はずだ。治療をしている事で緊張感ではっと頭が混乱していた。ヘリオの噂を聞いていたレネは、ヘリオなら、この状況を何とかできるかと考えていたが、エイブスたちは“敵”の強烈さを知らせてくれていた。


 レネは、エイブスから受け取ったそれを敵に向けた。しかし、さすがに“魔装核兵”である、敵意がないと判断したのだ。たしかに銃の形はしているが、弾頭が攻撃用のそれではない。レネはそれを天に向けて。うち放った。それは空を明るくてらした。

「照明弾か……目くらましのつもりか?」

 と目をおおいながら、ドューラはいった。魔装核兵はびくともしない。


 ヘリオは、エィミアと頭で会話をする。

(どうする?)

『どうもこうも、なんとか逃げるしかないわね、それかあなたがつかまるか』

(本当にそれでうまく行くと思うの?)

『さあね、あの大神官のキレっぷりをみたら、そうも思えないわね』

(結局、逃げるしかない……そうだ“守護使者”の時の手法でいこう)

『あんたねえ……え?あんた……“ソレ”がしたいの?』

 ヘリオとエィミアは脳内で、何か意思疎通ができたようだった。


 その時だった。高い城壁のそとから、太鼓のような音が響く、それはどんどん大きくなり、ついに、夜空を照らした。

「花火?」

 と、つぶやくヘリオ。


 これには、ドューラも焦りを感じたようだった。

「これ以上の騒ぎはまずい!!人に見られてよい事はないのだ!!」

 ヘリオはその言葉を聞き、相手を睨め付けた。


 その時だった。

「せーの!!」

 聞き覚えのある声がした。そして、なぜか突風がふき、その突風に紛れて音楽がながれる。

「ルゥルゥルゥー」

 この歌声、ヘリオは一瞬で気づいた。これは“ある人”と合言葉にしている音楽。“危険”を知らせる音だ。そしてこの突風自体が、きっと“危険”になる場所なのだろう。

「動ける?レネ!!」

「ああ!!」

 ヘリオは両手にヒョイとレネとエイブスを持ち上げる。これにはレネも驚いていたが、それどころではない。エィミアに命じて、水のスキルを足の下に展開した。

「アクア・スケート」

 そういうと、するすると突風圏外に逃避したのだった。


 その時だった。爆炎が壁をつらぬき、壁を形づくっていたレンガが吹き飛んだ。突風の中にいた“魔装核兵”はその打撃をもろに食らってよろめいた。


 穴の開いた壁の外から、人影が姿を現した。魔女ともうひとり、それをみつけて、ヘリオは叫んだ。

「ニヨネ!」

「早く、こっちよ!」

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