魔装核兵

「あれは、何?」

 ヘリオが声をだすと、シーっと人差し指をたてながら、エイブスが答えた。

「魔装核兵だ、“魔女”は必ずああなる」

「魔女って、いったい何なの……」

「落ち着いて聞いてくれ……魔女は……」

 物々しいとげとげとした、そしてところどころ赤い色に塗装された奇妙な“兵士”は、一瞬こちらを見上げて、目が光った気がした。

「うわっ!!」

 それは、ヒラヒラと、頭の赤い装飾をたなびかせながら動いたかと思うと、ドューラのもとに近づき耳打ちをした。ドューラは小声で、周囲の神父たちにささやくと、瞬時にその場をあとにした。その瞬間だった。

《シュッ》

 何かがきらめいたあとだった。頭にエィミアの声が響いた。

『避けて!!』

《ジュドォーーーーーン》

 赤く煮えたぎったような閃光が、屋根をつらぬいた。ヘリオは咄嗟によけたが、エイブスは、レネを背負って、かばうようにころがり落ちていった。

「エイブス!!」

 短い時間だったが旅をした仲間だ。心配になって屋根を飛び降りると、レネがエイブスを介抱していた。喉を抑えていて、エイブスは治療を受けているようだった。

「エイブス!!」

「ヘリオ!!!」

 エイブスを治療しながらレネが叫んだ。

「あんたは、命の恩人だ!!最初は“ネーラ”という魔女、そしてあの時お前は……水の魔法で私の足を滑らせ、守った」

「守った?何から?」

「その大神官“ドューラ”からだ」

 ヘリオは意識を集中して、頭でエィミアと会話した。

「何をしたの?」

『今はそんな場合じゃないでしょ、この場所をなんとかきりぬけないと』

「切り抜けるって……」

『あなたが二人を守らなきゃ!!あなたは、あんな巨大なバケモノを倒したのよ!!』


 その時、大聖堂の側面の扉がひらいて、ニコニコとしたドューラが、“魔装核兵”を連れ立ってでてきた。

「ヘリオ……“ケローネ”が心配しておるぞ、お前を家族のように思い“真実”を話すのは彼だけじゃないか?」

「彼は、どこなの?」

「君がおとなしくしたがえば“魔装核兵”は、お前に注意せずとも、つまり、細かな出力調整などせず“悪党”をすべて薙ぎ払う事が可能だ、先ほどの斬撃も“お前を傷つけないよう”注意したのだが、おっと……そちらの旅人に“かすった”ようだな、だが、悪いようにはしない、いま“私たちの味方になれば”」

 

 エイブスが喉を震わせた。

「信じるな!!」

 喉から血がこぼれる。


「信じるな?なんてことを言うんだ、ヘリオ、君はまだギルド登録もしていない、しかしこの村を救った英雄だ、なんといったって“ケルピー”や“守護使者”も倒したのだからな、君を、どこの誰がどうやって不当に扱おうというのだろう」

 ヘリオはまゆをピクリとうごかした。どちらが正しいかはおいておいても、なぜ“教会”は守護使者などという存在の事をしっていたのだろう?あまりに情報が早すぎないか?


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