事件
その母親の話によると。今朝すでに一人が誘拐されて行方不明だという。かわいらしい少女で、まだ魔力を授けられていない8歳の子だという。町の冒険者や兵士総出で探しているがみつからない。
ヘリオはケローネがまだ目がさめないので、その日はその“捜索”に加勢しようと考えた。昼頃まで難航していたが、正午ごろに町の中央の広場で騒ぎがあったようだった。
野次馬がわをつくっていて、中央で騒ぎがあるらしい、人込みをかき分けて、その輪の中央を見たとき、ヘリオは驚いた。その三つ編みと、下がり目は覚えがある。悪ガキグループのリーダー“レネ”である。
「放せ、放せよ!!」
そのレネの手を後ろでにしばり、捕まえているのは“魔女”だろうか。フードをかぶっていてその顔はみえない。魔女は突如叫んだ。
「この“子供”はヤンチャでしられているらしい、普段から素行が悪い、この子供がどうなろうとこの街には関係ないでしょうが、私には慈悲がある“魔女の子”を渡せば私たちは引き下がろう、だがどちらでもかまわないのだ、私はこの子を融解、いやこの場で殺すこともできる」
ヘリオは背中に寒気がはしった。よく見知った顔のその子を殺すだって?なんて事をするんだ。しかし、その“魔女”はさらに恐ろしい事を口にした。
「ヘリオだ、ヘリオという少女を探しているのだ!!!その子が“鍵”だ!!」
観衆が騒ぎだす。やがて観衆の数人が指をさした。観衆すべてのひとみがヘリオに集った。魔女がフードのきりくちからこちらを見た。猫目と鳴きボクロ、うつくしい顔立ちの女性だった。
「ネーラ……」
「なぜ、私の名前を」
その時、遠くのほうから大きな叫び声がきこえた。それは“風”魔法で振動を増幅させたのか、観衆すべてに響いた。
「“大神官ドューラ”様のお通りだ」
人並みがさけて、5人くらいの神父たちが彼をとりかこみ、彼を囲むように連れ立てあるいている、大神官は、魔女の直ぐ傍にくると、突然叫んだ。
「このたわけものが!!」
「くっ!!」
その叫びとともに、突風が吹き、レネはふきとばされ、群衆の中に倒れこんだ。人々が彼女をかかえこむと、魔女は、周囲を見渡し、バリアをはった。
「ヘリオよ、“教会本部”から通達があったのだ……お前を保護せよと……」
「??」
ヘリオは疑いながらも、ドューラの前にでる。
「でも私は……」
そう言いかけたときに、ドューラは神父たちの方に手を伸ばす。すると、神父たちの中から、ケローネが姿を現した。
「ケローネ!!」
ヘリオは彼にだきついて、無事を喜んだ。しかし、周囲の人間は何がなんだかわからなかった。ヘリオは、宙の何もない空間にハグをしていたから。
そのとき、町長ルヴラが現れて叫ぶ。
「あなたは惑わされている!!それは本物の“ケローネ”ではありません」
しかし、時はすでにおそかった。すでにヘリオは、神官たちに囲まれ、その場をあとにしたのだった。
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