暗雲

 深夜3時頃。今度は音もさせずに3人の人影が病院に忍び入る。病院の真ん中の静かな物置から侵入し、目線とハンドサインを使いお互いの距離を保ちながら、病院の一番奥の部屋へ、そして、ヘリオのそばによるとふたりが周囲を警戒し、剣をかまえ、一人がヘリオの布団をはいで、その首筋にナイフを近づけた。

「そこまでだ」

 さわやかな中性的な男の声が響いた。ヘリオの部屋の電気がつく、待機していた二人は、その部屋にヘリオの他に誰もいない事を確認し、そしてヘリオの傍の人にハンドサインを送った。

「かまわないわよ」

《コツ、コツ、コツ》

 そういって、暗闇の廊下から杖をつき現れたのは、町長ルヴラだった。

「お前がこの街の責任者か」

 と、リーダーらしき、ヘリオの傍の男が尋ねる。

「そうですとも、私の町ですきにはさせないわ」

「……」

「それで、あなたたちは何者なの?」

「ルヴラともあろう方が、名乗らなくとも、大方検討はついているのでは?」

「……フン」

「我らは“魔女”の気配を感じこの少女を“回収”しにきただけのこと」

「その後の事は?責任を持てるの?“暗部”さん」

「我らは領主の命に従ったのみ」

「その領主が私の昔馴染みという事もしっているわね?」

 ギロリ、ルヴラが睨む様子に、蛇に睨まれた蛙のように委縮した3人の“暗部”。

「“魔女狩り”なんて真似はさせないわ、仮にも“ルビエン派”の神官が管理する場所で、そんな事は出来ないはずよ」

「領主に敵対して、無事でいられると思いか」

「そっくりそのまま“領主”に返すわ、昔なじみの顔に泥をぬるだなんて」

「こんなババア!!殺しちまいましょうよ!!」

「何をびびってるんです」

 と入口側の二人の暗部がいうが、リーダー格の一人は二人をにらめつけた。それだけで二人は、ルヴラがただ者ではないのだと気が付いた。

「ホラ」

 とルヴラは、六角形の台座のようなものをとりだした。そこには先ほどの“暗部”の映像が映っている。

「これをもとに“領主”の悪を暴くことだってできるのよ、最も恐ろしいのは民主、彼は、“旅”でそれを身に染みてしっている」

「くっ……ひくぞ」

 リーダー格の男がいうと、二人は何かをいいかけながらも、後に続こうとする。ふと振り返りざまにベッドにめをやると、そこにはヘルタではなく丸太がころがっていた。

「はあ……」

 リーダー格、二番手の男が部屋をでて、最後の男が部屋をでようとしたそのとき、彼は半回転をして天井に足をつき、ニヤリと笑い、そしてすこし反りのある剣を、ルヴラめがけてつきつけ落下の重力もつかい突進した。

《ガキィン!!》

「おい!!ルラ!!バカな事をするな……そいつは、手練れだ」

 みると、エイブスが小型の盾と剣をつかい、ルラと呼ばれた男の剣劇を防いだのだった。

「チッ、結局守られているだけのババアか」 

 ルラは、ふたくされながら廊下をいき、入ってきたへやのドアにさしかかった。その時、自分の剣の異変に気付いた。刃がボロボロにかけ、さびている。あの一瞬で、エイブスという男がやったとも思えないし、魔力も感じなかった。ルラは、その奥で魔力を煮えたぎらせていたルヴラの目を思い出し、ぞくっと寒気を感じたのだった。




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