医師ダルウィー 暗部 町長ルヴラ

 ヘリオは、種々の手続きを終えたあと病院に向かった。あとから村に到着した3人のほかの冒険者が後を引き継いでくれた。病院に向かうと、一番奥の部屋ですやすや眠っているケローネの頬をなで、微笑んだ。


 頭を巻いている金髪眼鏡、スラリとした医師のダルウィーが傍に来て、いった。

「ヘリオ、あなたの様子を見るようにと、依頼がきていたわ」

「依頼?私お金は……」

「冒険者教会、それに、町長の意向よ」

 ヘリオは町長ルヴラの顔を思い浮かべた。へのじに曲がった目と、紫色のお婆さんで、いつも心配そうな顔をしているが、かつては優秀な冒険者だったという。

「わかった、ありがとう」


 ヘリオは、食事をおえたら病院に来るようにいわれ、病院の椅子に横たわった。魔力の欠乏が確認されたので、“魔力専門”の“ヒーラー”を呼び、治療をした。治療は夜と朝の二回にわけるといわれ、安静にするようにといわれている。

「もう残量1%ほどしかない、普通の人なら魔力欠乏で倒れているわよ」

 と、ダルヴィーがいっていた。


 夜、眠っていると、杖のつくような声が聞こえた気がして目を覚ます。しかし、病院は静まり返っている。

(気のせいか)

 と思い、再び眠りにつく。


 それからどれだけ寝ていただろう。ふと、人の気配がする気がして体をおこした。するとベッドの足元付近に、何か黒い影がある気がした。目が暗闇に慣れるまでじっとみていると、そこには確かに人影があるのに気がついた。

“魔女”

 の影だった。


「いくわよ」

「何!?あなた誰?」

「私はネーラ、詳しいことは後で説明するわ、ユランには会ったのでしょう?」

「何?ユラン?誰のこと?」

「旅人の……しまった、またあの人、変な“偽名”を使って……作戦に支障をきたすからやめてほしいのに」

「ともかく、あなたはここにいちゃまずい、私と一緒に……」

 ヘリオの手を握りネーラは、彼女の体をたちあがらせようとする。その時だった。

《パチン!!》

 ネーラの背後で明かりが現れた。それは、ランタンの様だった。同時にニヤニヤとしながらも目が笑っていないダルヴィーが、いった。

「ねえ、あなた、何をしているのかしら?私の患者さんに」

「……」

 ネーラは、あとずさりして、背中に背負っていた杖を手に取った。

「私は“魔女”よ、近づかないで、この子をつれていかないといけないの、この子のためなのよ」

「はあ?そう、魔女……魔法が使えるのに、あなた、その子の状態に気付かなかったの?」

「何を……」

 ネーラは、ふと、ヘリオのてに意識を集中する、ネーラの手が光り、そして徐々に静かになると、ネーラはぽつりといった。

「この子を直すだけなのね?」

「ええ、明日の正午までには自由になるはずよ」

「わかったわ、あなたたちも“この子”の事を大事に思っているのね、それは誤算だった、私たちにとってもそれはいい提案だから、待つわ、けれど“人質”を用意しておくから、必ずその子を届けに来てね」



 










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